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戦国異伝

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第四十五話 幸村先陣その六


 そしてだ。次はだった。
「遠江の北と東も占領するぞ」
「あの国もですか」
「これより」
「そうじゃ。今川の軍が戻るまでにじゃ」
 そうするというのだ。信玄は慎重だが確実だった。
 その話をしてだった。信玄は幸村達先陣を駿府に向かわせてだ。二十四将達をそれぞれ向かわせてだ。今川の領土だった場所を占領していくのだった。国人達は雪崩を打って武田についていく。やはり主がいなくなったことが大きかった。
 速かった。次から次に土地を己のものとしていく。まさに無人の野を行くが如しだった。
 幸村もだ。駿府に突き進む。今川にあくまでも忠誠を誓う国人達が彼等に向かう。だがそれでもだった。
 幸村はその彼等に突き進んでだ。両手の槍で馬から叩き落し倒していく。その強さはまさに鬼神であった。
「今のわしを止めることは誰にもできん!」
 こうだ。軍の先頭を突き進みながら言うのである。
「止めたくば止めてみよ!わしは逃げも隠れもせん!」
「では我等もです!」
「共に!」
「いざ駿府へ!」 
 十勇士達も突き進みだ。そうしてだった。
 彼等は瞬く間に駿府城を占領した。まさに瞬く間であった。
 そしてだ。それからだった。
 一気に西に向かい遠江との境まで到達した。そしてそこからだ。
 遠江に入り込む。そこまでも一気にであった。
 武田は僅かの間に駿河と遠江の半分まで占拠した。しかしここでだった。
 雪斎率いる今川の軍がだ。彼等と鉢合わせしたのだ。それを受けてだ。
 幸村はいぶかしむ顔になった。彼等を前にしてだ。
「雪斎殿は闘うつもりはないか」
「はい、そうです」
「そう仰っています」
 十勇士達がそうだと話すのだった。
「ただ。兵達をです」
「国に帰して欲しいとのことです」
「左様か。ではこの話をだ」
 どうするかというのだった。
「御館様にお伝えしよう」
「そうですね。それではすぐにです」
「御館様にお伝えしましょう」
 雪斎のことはすぐに信玄にも伝えられた。それを受けてだ。
 信玄もだ。こう言うのであった。
「ではじゃ。会おう」
「雪斎殿とですか」
「会われますか」
「兵達のことで」
「戦をせぬというのだな」
 二十四将達にこのことを問う。
「そうだな」
「はい、先陣からの報告によりますと」
「そう言っています」
「戦はもうせぬと」
「ただ。兵を国に帰したいと」
「そう言っております」
「ならばよい」
 それを聞いてだ。また言う信玄だった。
「その話受けよう」
「では。駿府においてですね」
「あの城で話されますか」
「そうされますか」
「うむ、そうする」
 まさにそうすると話してだ。こうして話は決まった。
 信玄は雪斎と駿府において会うことになった。そうして兵達の話をするのであった。  
 雪斎はだ。信玄にすぐにこう言うのであった。
「最早今川はありませぬ」
「滅んだということだな」
「左様でございます」
 毅然としているがだ。敗北を認めている言葉に他ならない。
「義元様と氏真様が」
「残念なことじゃな」
 信玄は雪斎が述べる前に話した。
「ああなってしまってはな」
「はい」
 まただ。こくりと頷く雪斎だった。そのうえでの言葉だった。
「最早どうしようもありませぬ」
「では何故じゃ」
 信玄は雪斎に問うた。 
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