戦国異伝
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第四十四話 元康の決断その十二
「そして上野にも進出するでしょうし」
「かなりじゃな」
「しかも遠江も半分程手に入れるでしょう」
その国もだというのだ。
「五万になるかと」
「何と、五万」
「では二百万石か」
「そこまで至りますか、武田は」
「あの武田が二百万石で五万とは」
「洒落にならぬぞ」
勇猛な三河者達もだ。これには驚きを隠せなかった。
しかしだ。本多はここでこう主に話すのだった。
「我等では到底相手にはなりませぬが」
「それでもか」
「手はあります」
こう話すのだった。
「東に武田があればです。西には」
「織田か」
「あの家か」
「あの家がだというのか」
三河者達は次々に言った。
「まさかあの家と手を組む」
「そうせよと仰るのですか」
「左様」
本多はまず同僚達に述べた。しっかりとした声でだ。
「これならば武田にも対することができます。何故なら」
「何故なら?」
「何故かというと」
「織田殿は尾張だけでは終わることはありませぬ」
だからだというのだ。
「伊勢に志摩、それに美濃を瞬く間に手に入れられるでしょう」
「その三国に尾張もとなると」
「優に二百万石を超えますな」
「かなりの力になる」
「ではそれだけあれば武田にも」
「対することができます。ただ」
本多はまた言い加えた。
「それはあくまで我等が我等だけでも武田と戦うという気概があってこそです」
「そうだな」
元康は本多の今の言葉にすぐに頷いた。
そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「我等が戦わなければだ。その気概がなければ」
「織田殿には織田殿の事情があります」
本多はそこも見ていたのだ。それで話すのだった。
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