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久遠の神話

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第八話 二人の剣士その八


 そしてその剣でだ。彼は戦っていた。そして。 
 上城はもう一人の警官の剣を見た。そちらは。
 ぎざぎざになっていた。その刀身が。
 そしてこの剣は緑色だった。その色を見てだ。また上城が言う。
「何かあの剣は」
「何に見えるんだ?」
「木ですね」
 緑からだ。木の葉を連想して中田に答えたのである。
「そんな感じですよね」
「そうだな。あの剣はな」
「やっぱり木ですよね」
「俺もそう思うな」
 実際にそうだとだ。中田も答える。
「あれはな」
「じゃああのお巡さんの剣の力は」
「木か?それに」
 中田はもう一人のだ。自衛官も見てだった。
「あの自衛隊の人は」
「茶色い剣の力は?」
「土か?」
 彼は色からイメージして言った。
「丁度俺達がそれぞれなあれだからな」
「赤は炎で青は水で」
「だからな。そうなるか?」
「そうかも知れないですね」
 こう考えながら話をしているとだ。ここでだ。
 キマイラは炎をだ。自分の前にいる二人に対して放った。そうしてだ。
 二人を焼こうとする。しかしここで。
 警官がだ。その右手に持っている刀身が左右に鮫の背鰭が無数に林立しているかの如き緑の剣をだ。右から左に一閃させた。
 するとだ。二人の前に。
 木が立った。それがだ。
 キマイラの炎を防いだ。木はその炎によって燃える。しかしだ。
 炎は確かに止められた。そのうえでだ。
 今度はだ。警官は。
 その剣を上から下にだ。真一文字に振り下ろした。するとだ。
 その振りに合わせたかの様にだ。地面からだ。
 木の根が高く沸き起こり。それが。
 アスファルトを砕きながら一直線に魔物に向かう。それで魔物を捕らえた。
 そのまま魔物の前身を捕らえメキメキと締め付けていく。魔物の絶叫が響く。
 だがここでだ。今度は自衛官がだ。
 自分が右手に持つその十字の茶色の剣を左から右、続いて上から下に振った。十字にだ。
 するとだ。大地が避けだ。
 湧き上がり魔物を上から覆い尽くしてだ。それで飲み込んでしまった。
 閉じられていくその大地から魔物の断末魔の声が聞こえてくる様だった。アスファルトはそのまま何もなかったかの様に元に戻りそうして。
 後には金の棒が数本残った。それはだ。
 二人共何気なく手に取った。そこまで見てからだ。
 中田がだ。彼等に声をかけた。
「いいコンビネーションだね」
「最初から気付いていたよ」
「君達が見ていたのはね」
 警官と自衛官は中田だけでなく上城も見てだ。そのうえでだ。
 二人にだ。こう言うのだった。
「君達も剣士だね」
「我々と同じく」
「ああ、そうさ」
「その通りです」
 二人はどちらも隠しても無駄なのはわかっていたし隠すつもりもなかった。それでだ。
 あらためてだ。こう彼等に答えた。
「炎を使う。中田直行っていうんだよ」
「上城大樹といいます。水です」
 こう名乗る彼等だった。そしてだ。
 二人の名乗りを受けてだ。警官も自衛官もだった。
 まずはだ。警官が名乗った。
「高橋唯之。警部」
「警部さんですか」
「そうだよ」
 穏やかで何処か茫洋な感じのする顔だ。やや細長く見える。全体的に穏やかな気配を感じさせる、そうした青年であった。頬はこけたようになっていてそれがさらにその顔を細長く見せている。
 背は一八〇をかなり超え引き締まった身体をしている。黒く左右の側頭部を刈っているのが帽子を被っていてもわかる。その彼が言うのだ。 
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