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戦国異伝

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第四十四話 元康の決断その八


「それを築かれるのでしょうか」
「考えておるのじゃ」
 まさにだ。その堤だというのだ。川といえば堤だ。治水についてはだ。その国を治める者として何としても万全にしなければならない、信長はこのこともよくわかっていた。
 それでだ。彼はこう話すのだった。
「長良等をどうするかじゃ」
「川といえばです」
 生駒がだ。今度は言ってきた。
「美濃を攻める時にですか」
「川を使えというのじゃな」
「はい」
「そうか。川か」
「前にもこうした話があったと思いますが」
「うむ、そうじゃったな」
 ここで信長は九鬼を見ながら答えた。
「二郎の水軍を使ってな」
「水軍は海だけではありませぬ」6
「川もじゃな」
「水のある場所ならばです」
 何処でもだ。水軍は使えるというのだ。
「さすれば。美濃でもまた」
「使えるな。ではじゃ」
 九鬼をまた見てだ。そうして言うのだった。
「二郎よ」
「はい、では美濃を攻める時は」
「そなたの力。思う存分使わせてもらうぞ」
「川でも暴れられますな。確かに」
 九鬼もだ。話を聞いてそのことがわかった。
 そうしてなのだった。美濃を攻める時にはだ。川を使うことにもしたのだった。
 そんな話をしながらだった。信長はこれからのことを考えるのだった。その中でだ。万見がだ。主にこのことを話すのだった。
「今川の軍勢の動きですが」
「竹千代を後詰にしてじゃな」
「はい、太源雪斎が軍全体を率いて駿河に戻っています」
「左様か。やはりじゃな」
 それを聞いてだ。信長も納得して話す。
「竹千代が後詰で雪斎が軍を率いてじゃな」
「そうなっております」
「わかった。しかしじゃ」
「しかしですか」
「それが二人の今川での最後の仕事になるであろうな」
 主のいない家のことを考えての言葉だった。
「あの和上にとっては残念なことであろうがな」
「そうですな。今川の家は終わりですし」
「さすればですな」
「そうじゃ。して今川の家臣達の今後じゃが」
 それがどうなるかもだ。信長は話した。
「まず三河の者達は竹千代につく」
「では殿」
 明院が主に問う。
「松平は独立しますか」
「元に戻る」
「そうですな。松平は元々三河で独自の勢力を持っていました」
 明院は主の言葉を受けてそのうえで述べた。
「さすればそれが元に戻ると」
「そうじゃ。そして三河の者はじゃ」
 そのだ。元康につくというのだ。元々三河は彼の家が治めていた。そしてその家臣団の忠誠と結束はだ。天下随一のものだったのだ。
 その家が元に戻ると聞いてだ。織田の家臣達も話す。
「では三河に一つの家ができますか」
「前と同じく松平が三河を治める」
「そうなりますか」
「そうじゃ。三河の者達は三河に戻る」
 また話す信長だった。
「そして今川の者達で国人達はじゃ」
「その者達はですか」
「武田につく」
「左様ですな」
「そうじゃ。その者達はその住んでいる地こそが全てだからじゃ」
 だからこそ国人なのだ。彼等はその土地に代々生きそこが全てだ。その彼等が武田が駿河に入るなら武田に従うのも当然のことだった。 
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