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久遠の神話

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第七話 中田の言葉その十二


「警察と自衛隊はお世辞にも仲がいいとは言えないがな」
「それでもですね」
「今回は事情が違う」
「御互いに剣士がいて」
「一人は君で」
「もう一人は彼で」
「御互いに争う訳にはいかない」
 二佐は言った。強い声でだ。
「警官と自衛官が実際に剣を交えるなぞな」
「国を守る者同士が争っては何にもなりませんね」
「それが何を生み出す」
 二佐は今度は忌々しげに述べた。
「警察と自衛隊は確かに感情的な対立はあるがだ」
「国の治安、国民の安全を守る組織だというのは同じですね」
「その我々が。そんな無益な戦いを行ってはならない」
「むしろその戦いを止めなければなりませんね」
「君も彼もよく告白してくれた」
 二佐は彼を見てだ。謹厳な声で述べた。
「そんなことをしても何にもならない」
「はい、戦うのではなくですね」
「止めるのだ」
 そうしろというのだ。
「戦いをだ」
「警官と自衛官は戦うのが目的ではないですね」
「戦いを止めることが目的だ」
「ならばこそ」
「そうだ。頼んだぞ」
「こう言っては本末転倒かも知れませんが」
 こう前置きしてだ。二尉はだ。
 考える顔でだ。二佐に言った。
「ですがそれでもです」
「戦いを止める為に戦う」
「そうなりますね」
「そうだな。しかしだな」
「はい、やります」
 そうすると言ってだった。実際にだ。
 彼はだ。意を決した顔でまた敬礼したのだった。
 そうしてだった。二佐が言ってきた。
「では今日は終わりだな」
「はい、これで」
「帰るか。しかし帰ってもだ」
「何かありますか?」
「一人だからな」
 二佐は寂しい笑顔になり自嘲気味に言った。
「それが寂しいな」
「寂しいですか」
「君も結婚すればわかる。自衛官の宿命だがな」
「単身赴任はですか」
「私は元々北海道にいた」
 陸自の主な基地が多くがそこにあるのだ。ソ連、今はロシアに備えてだ。
「だが。今はだ」
「地方連絡部にいるからですね」
「それで単身赴任だ。辛いものだ」
「結婚して子供ができてもですか」
「そうだ。わかってはいたが」
 それでもだった。このことはだというのだ。
「だが。自分一人で食べる夕食はまずいぞ」
「あの、夕食はここで食べられるのでは」
「間違えた。酒だ」
 言うのはそれだった。
「一人の部屋で一人で飲む酒は存外な」
「美味しくはありませんか」
「どうしてもな。美味くはない」
 こう二尉に話すのである。
「やはり食事も酒もだ」
「家族のいるところで、ですか」
「結婚すればわかる」
 まさにだ。その時にだというのである。 
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