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戦国異伝

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第四十三話 清洲に帰りその八


「敵より多くの兵と武器で圧倒して勝つことじゃ」
「それが大事なのですか」
「では。その為にも」
「政を整えているのは何故じゃ」
 そうした話にもなる。政のだ。
「国を富まし民を安らかにすることが第一じゃが」
「それだけではなく兵も」
「それを集める為にも」
「国が乱れておれば兵を呼んでも集らん」
 そもそもだ。乱れている国には人が来ない。逃げていくものだ。
「百姓を兵に駆り出しても大して強くはない」
「だから政を整えるのですか」
「政にはそうした意味もあったのですか」
「そういうことじゃ。政あっての兵であり戦じゃ」
 信長は話す。
「政を整え多くの兵を集め武具で身を固めてじゃ」
「そのうえで敵より多くの数と立派な武具で戦をし勝つ」
「それが正道なのですか」
「武田にしても北条にしてもじゃ」
 挙げるのは両家であった。
「確かに奇襲はするな」
「はい、河越ですな」
 今言ったのは蜂屋だった。
「あれは見事でした」
「しかしそれ以外の北条はどうじゃ」
 北条のだ。河越以外での戦のことを問うのだ。
「どういう戦をしておる」
「常に敵より多くの兵で戦をしております」
「そうしております」
「武田もまた」
 ひいてはだ。武田もだった。
「では。戦の常道は敵より多くの兵を集めてからですか」
「そのうえで戦をすることですか」
「こちらは奇襲に気をつける」
 信長はこのことも忘れなかった。こちらの方が多くなれば今度はこちらが奇襲を受ける危険がある。そのことも頭に入れているのだ。
「しかしやはり第一にはじゃ」
「敵より多くの兵ですか」
「まずはそれが第一ですか」
「そういうことじゃ。だからあれは二度はせぬ」
 話が戻った。そこにだ。
「桶狭間は二度とせぬ」
「では我等はこれからはですか」
「勢力を大きくしその兵で戦をする」
「多くの兵で」
「その為にも伊勢、そして美濃じゃ」
 豊かなその二国をだというのだ。
「そうするのじゃ」
「畏まりました。それではです」
「まずは伊勢を」
「あの国を」
「それで二郎」
 九鬼に声をかけた。彼もここにいるのだ。
「わかっておるな」
「はい、それがしは」
「海からじゃ」
 そこからだというのだ。
「仕掛けておるな」
「既に」
 それはだ。もうしているというのだった。
「とりわけ志摩に」
「わかっておるようじゃな」
「海のことならば」
 不敵な笑みを浮かべてだ。九鬼は信長に述べた。 
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