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久遠の神話

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第七話 中田の言葉その十


「あんなのでよく天才漫画家とか威張ってられるよ」
「あいつの他の源氏にしとくか」
「漫画はな」
「うん、漫画もいいよ」
 それもいいというのだ。漫画で勉強するのもだ。
 上城はだ。それもいいと言うのだった。
「それも勉強になるから」
「漫画は馬鹿にできないってか」
「そうなんだな」
「漫画から手に入る知識も多いし」
 上城は今度は馬鹿にされている知識について述べた。
「だから読むのもいいんだ」
「そうか、漫画もか」
「あれを読んでも勉強になるんだな」
「それは意外だよな」
「そうだよな」
「結構漫画馬鹿にする爺さんとか多いけれどな」
 年配にはだ。そうした人間も多いのだ。だがこのことについてもだ。
 上城はだ。こう話したのだった。
「それ間違いだから。そんなこと言ったら」
「そんなこと言ったら?」
「どうかって?」
「で、今度は何が出るんだ?」
「小説だって昔は馬鹿にされてたし」
 二葉亭四迷の頃のことではない。第二次大戦直後でもそうだった。小説が市民権を得て芸術とまで言われるまでにもかなりの時間がかかっているのだ。
「同じだと思うよ」
「漫画もか」
「そうなんだな」
 このことをだ。クラスメイト達も認識したのだった。
「認められるか」
「ちゃんとしたものに」
「ちゃんとしたものかっていうのも」
 それもどうかと話す上城だった。そしてだ。
 今度はだ。今の話の軸についてだ。言及したのだった。
「源氏物語なんて源氏の君って凄い女好きだよな」
「女と見れば口説くからな、あの主人公」
「とっかえひっかえでな」
「エロゲの主人公みたいだよな」
「相手もな」
 何しろ父の妻もいれば正妻もいる。愛人もいる。幼女を引き取って育ててから、ということもある。行きずりの相手もある。現代風に言えばそうした手のゲームの主人公と言っても過言ではないのだ。
 そうしたことを見てだ。彼等は話すのだった。
「じゃあ当時はエロ本みたいな感じか?」
「そうした風じゃなかったか?」
「枕草子だってブログみたいなものか」
「更級日記とかも」
「まあ。名作とかそういうのって」
 上城も話す。
「結構主観だしね」
「じゃあ肩張らずに気軽に勉強してもいいか」
「そんな堅苦しいものを気合入れて勉強するものとか思わないで」
「リラックスして勉強して」
「そうしてけばいいか」
「まあそうだね」
 上城もだ。彼等にだ。 
 少し考える顔になって頷いてだった。
「気軽にね。重苦しく勉強してもそれでも」
「成績があがるとは限らない」
「だからか」
「気軽に勉強してもいい」
「そうだよな」
「そういうものだよな」
 彼等もだ。上城の言葉に頷いてだった。
 とりあえずそうした勉強について考えてだ。実行に移そうとも思うのだった。
 上城はそうした平和な日常の中にもいた。しかしだ。
 その日常と同じ世界においてだ。今だ。
 兵庫県警本部のだ。奥の一室でだ。
 警察のダークブルーの制服と海上自衛隊のブラックの服の者達がだ。向かい合って話していた。 
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