インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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更識の鬼―――というより悪魔
―――キンッ
偽の雪片と《斬魂》がぶつかり合って火花を散らす。
(ギン。どうする?)
『ようやく俺の出番かよ』
シヴァと同類の人間(かは判別しにくい)が中から声をかける。
(ああ。さっきから俺を襲おうとしている雑魚の掃討を頼む。こっちはなんとか手段を用いて使うから)
『へいへい。んで、本気を出していいのか?』
(この基地が原型を留めているならある程度は)
『よし、暴れるか!』
銀色の光を身に纏い、一匹の銀の人狼が舞い降りた。
『さて、どれくらいできるか―――お手並み拝見といこうか』
背中で暴れている気配を感じながら、こっちも偽暮桜との鍔迫り合いを止めて間合いを取る。
「祐人、下がってくれ! どうして楯無のISにこれがあるか知らないが、ここは俺が―――」
―――ドスッ
俺は一夏の声を中断させて蹴飛ばしてどこかに飛ばす。
「《ヴァンピーア》、稼働」
降り下ろされる雪片を再び《斬魂》で受け止め、左手首に装着されているバックルが光り輝いているのを確認してバックルを体に当てる。
「え?」「嘘……だろ……」
途端に装甲が徐々に吸い取られていき、気が付けば制服姿に戻っていた。
それを受け止めて簪に渡した。
「どういう……こと……」
「あのシステムは基本的にエネルギーの塊だからな。それさえ吸い込めば自然と元に戻る」
俺が無人機を武装を用いて薙ぎ払っているギンの救援を行こうとしていると、
「どうして、どうしてあの時、俺の邪魔を―――」
「あのシステムから人を助けるのは時間との戦いと言っても過言ではないからな。今のお前程度だと時間が掛かりすぎる」
そのほかにも色々とあるが、今の俺の精神ではどうでも良かった。
「だからって―――」
「自惚れてんじゃねぇぞ、三下。はっきり言ってテメェは雑魚でしかねぇんだよ」
「―――!?(ゴクッ)」
簪が息を呑むのを感じた。大方、今の俺の状態でも察したのだろう。
「おいギン、今すぐそこから退け!」
『何言ってんだよ、今いいところ―――って、すみませんでした!!』
敬礼すると同時にその場からギンは消えた。
そして同時にディアンルグが光りだした。
■■■
今や世に有名な『白騎士事件』が経過してから数日後、内気なお嬢様が執事とメイドを従えて小学校に入学しました。
その中でも特に執事は優秀で気配りができ、お嬢様の好きな物を奪うメイドの変わりにその執事が犠牲になることも多々ありました。
ある日、お嬢様がクラスの女子が虐める事件が起こりました。動機はお嬢様への嫉妬ですが、それを知った執事がお嬢様が休んだ日に窓ガラスを割るという暴挙に出て、さらには教師の失敗を大袈裟に取るなどして普段では見せない行動を起こしました。それもお嬢様が休んだ日限定です。
そしてある日、お嬢様を虐める男子数人が出てきました。
それを知った執事は―――お嬢様の姉と共闘してその男子グループを潰しましたが、絶体絶命に追い込まれた一人がお嬢様を盾にしてしまいました。
―――そしてそれが、そもそもの間違いだった。
本人からすればテレビで得た知識で周りが躊躇っていたから使った行動で、確かに姉も含めて全員が狼狽えた。―――ただし、一人を除いて。
その一人は何の溜めらいもなく、その男を蹴り飛ばしつつお嬢様を救出して、男子児童は倒れた。
そして近くの椅子をその児童の顔の数ミリ隣に叩きつけ、
「―――いい度胸してんじゃねぇか、雑魚が。今度そんなことしてみろ、次は屋上から突き落としてやる」
その時の瞳に光はなく、並大抵の小学生ではできない芸当だった。
それ以降、その少年は『更識の鬼』または『更識に住まう悪魔』などと呼ばれることになり、ある日を境に消えるまでお嬢様の騎士として学校中にその名を轟かせることになりましたとさ。
■■■
輝きが消えると共に、一夏と簪はディアンルグの形状が変化していることに気付いた。その形状はどこか悪魔を思い出させるような形をしていて、簪は思わず噴きそうになった。
「まさか……二次移行……?」
「そんな安いもんじゃないんだよなァ」
機兵が銃弾やレーザーを一斉に放つ―――が、祐人は食らうことはなかった。
「おっせぇんだよ、ノロマ。俺はこっちだ」
気がつくと、祐人は別の場所にいた。機兵たちはそっちに向かって撃つが―――それはどういうことか機兵たちが食らっていた。
「おせぇ、おせぇぞゴミクズ。俺はこっちだっての」
その時、胸部装甲が開いてエネルギー充填していた。
「祐人………?」
「お、おい! どういうことだよ! お前は一体何を―――」
「ちょっとはその無い頭を回転させて考えろよ」
今度は荷電粒子砲とビームライフル、さらにはビット八基が宙を舞う。
「焦土と化しな―――ゴミ」
合計13門からなる熱線が発射され、機兵たちが一瞬にして屑となった。
「さぁ、どうするんだ? まさかこれで打ち止めなんて下らないことを言うんじゃないだろうなァ?」
そして少女はそれに応えるかのように次々と展開されていく。
「………何だ、意外に少ないなァ。何だったらテメェ自身が出てきたいいだけど?」
「……………」
だがその少女は答えれなかった。何故なら彼女のISは持っていることは持っているが、今の現状だとまず勝てない。
「……チッ、ダンマリかよ。まぁいいや。これだけで我慢してやるよ」
まるでこれだけだと足りないと言わんばかりの答えに、その少女は眉をひそめる。
(まさか、この程度なんて屁でもないと言いたげですね。ですが、今から相手するのは束様の最高傑作。第三世代型ISが勝てるわけが―――)
―――ピピッ
少女がいつの間にか起動していたISのハイパーセンサーにある文字が浮かんでいた。
『ディアンルグから単一仕様能力《終焉》を確認』
「……は?」
さすがの少女も驚いていた。
(確かに、今まで不可解なことはありました。ですが、ワンオフ・アビリティーが二つもあるなんて………)
ありえなくもない―――のだが、束が嫌う祐人に限ってはありえないというのが少女の見解だった。
「………危ないから、絶対に出すなとは言われましたが……仕方ないですね」
少女はそう呟いて隠し球を展開した。
それが一斉に祐人の方に行くが―――
「―――待たせたな」
―――ズパッ
一閃し、その機兵―――巨人型の棍棒が斬り裂かれた。
「これ以上、私の生徒には手出しさせん」
織斑千冬、そして身に纏う白いIS『暮桜』を確認した少女はその場から消えた。
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