魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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後日談6 ナカジマ姉妹、再会する
それは何の前触れもなく唐突にはやての口から言われた。
「なあ桐谷君って魔導師なんか?」
放課後の生徒会室。多い書類に悪戦苦闘しながらも処理していた時だった。
因みにウェンディは今日はいない。アイツは企画会議の時にしか現れないのだ。
「何の話だ?」
全く見覚えがありませんと言っているように書類を集中して消化する桐谷。
話を聞きながらでも手を休めない、流石だ。
「かといってお前の分の書類はやらないからな」
バレないように混ぜたつもりなのに………
「本当なん?」
「ああ、コイツらは魔導師だが、俺は違う」
桐谷は最後まで自分が魔導師だということを隠していくつもりらしい。
「そうなんか?どないしよう………ギンガちゃん達ガッカリするやろうな………わざわざ地球にもやって来るって言っとったし………」
ん?ギンガ………?
それを聞いた桐谷の顔が一瞬固まった。
「それでな、一応会わせるって約束しちゃったんや、悪いんやけど明日放課後付き合ってくれへん?」
「あ、明日!?」
「急だなはやて」
「ギンガちゃんの訓練校が明日まで休みなんや、一応今日の夜地球に来る予定なんやけど、流石に夜は迷惑と思って………だから明日放課後にちょっと私の家に連れていけばええかなって。あっ、でも忙しいんやったら写真だけでもええねん。桐谷君はどっちがええ?」
………こりゃあ詰んだな。
どちらにしても顔がバレ、魔導師だってバレてしまう。
「………分かった、明日はやての家に行こう」
どうするつもりか分からないけど、取り敢えずはやての家に行くつもりのようだ。
「ありがとう桐谷君!!………まあこれで桐谷君がギンガちゃん達を助けてくれた魔導師だったらいいんやけど………」
もうはやては十中八九桐谷が魔導師だと思ってるなこりゃ………
「終わった」
「私も」
とそんな中、集中して書類をやっていたすずかと夜美は終わったみたいだ。
「じゃあ、すずかと夜美、次は俺の方にある書類の整理を………」
「「結構です」」
「夜美、敬語で拒否されると何故かショックが大きいんだけど………」
「マゾだね」
「マゾだな」
「違あう!!俺はドのつくドSだ!!」
「それを大きな声で言う零治君も流石やなぁ」
『零治、どうすれば良い?』
「知るか」
あの後、いつものように仕事を終え、帰宅した俺達。
その帰り道、翠屋でシュークリームを買って、帰宅していた時だった。
「零治、誰からだ?」
「ん?桐谷。じゃあ帰り途中だから切るな」
『おい、ちょっと!!』
何か言いたげだったが問答無用で切った。
「いいのか?」
「ん〜まあ帰ったら相談に乗ってやるよ。今はそれより………」
そう言って夜美と手を繋ぐ。
「あっ………」
「ゆっくりのんびり帰ろうぜ夜美」
「うん………」
少し照れながらも嬉しそうに手を握り返してくれた。
「それにしてもギンガか………」
「レイ?」
「ああ、何でもない」
その後は2人でのんびりゆったり帰った………
「あのアホ、全く頼りにならないな………」
「どうしたんだ桐谷?」
そういいながらそっと帰ってきたばかりの桐谷にコーヒーを差し出すノーヴェ。
「ああ、ありがとう。いやな、前のミッドの事件でさ、移動中に姉妹の女の子を助けてな、つい名前を名乗ってしまったんだ」
「まあ良いんじゃないの?だって名前だけでしょ?」
「俺もそう思ってたんだけど、まさかのはやての知り合いだったんだ」
「えっ!?それ本当?」
「ああ、そんでもって明日はやての家に来ていて、明日はやての家に行くことになった………」
「えっ、用事があるって断れば良いんじゃ………」
「その場合は写真をって約束らしい………」
そう桐谷が言うと、2人の空気が重くなった。
「逃げ場無いじゃん………」
「もう諦めるか………」
「それで良いんじゃない?」
とゲームをやりながら答えるセイン。
相変わらず画面から目を離さないが、それでも言葉を続けた。
「だってレイもバレたけど大丈夫だったんでしょ?私達は流石に不味いかも知れないけど、桐谷なら大丈夫だと思うよ」
「そうか………そうだな」
セインの言葉を聞いて桐谷も覚悟を決めた。
「この際、ちゃんと話してくる事にするよ」
「そうか………うん、それがいい。桐谷、コーヒーおかわりは?」
「ああ、ありがとうノーヴェ」
自分のコップをノーヴェに渡す。
その時、桐谷の携帯が震える。
「メールか?」
ポケットから携帯を取りだし、メールの内容を見た。
『まだ悩んでるか?』
相手は零治からだった。
「一足遅かったな………」
そう呟きながらメールを返信した。
「皆さん御飯ですよ。済みませんがノーヴェ様、マスターとウェンディ様を呼びに行って頂けませんか?」
「ああ、分かった」
そう返事をしてそれぞれの部屋に向かうノーヴェ。
「セイン、飯だから準備手伝え」
「はぁい」
素直にゲームを中断し、エタナドの手伝いをするセイン。
「さて、俺も手伝うか………」
明日の事の不安は消えない桐谷だが取り敢えずその後はいつも通り過ごしたのだった………
「問題無い………か」
飯を食い終わった後、携帯をチェックすると桐谷の返事が来ていた。
そして桐谷の返信を見て一人呟く。
「大丈夫なのか?」
今回の事を知っている夜美も気になっていたのか、少し心配そうな表情で聞いてきた。
「桐谷の事だ、ちゃんと秘密の所は言わないさ」
「そうだな、桐谷だし心配ないか」
「何の話だ?」
そんな話をしているとフェリアが話に入ってきた。
ちなみに他のメンバーは皆、テレビに釘付けだ。
「ちょっと厄介な事になってな。あの事件の時、桐谷が助けた女の子の姉妹がはやての知り合いで、お礼を言いたいってわざわざはやての家に来てるらしい」
「何故桐谷だと気がついたんだ?」
「桐谷のアホ、つい名前を言ってしまったんだ。それと彼女達の父親が管理局員ってのも見つかる原因だったのかもな」
「なるほど、調べてもらったってわけですね」
そう言いながら俺の隣に座る星。
どうやら洗い物は終わったみたいだ。
「お疲れ星、はい、お茶」
「あっ、ありがとうございます」
受け取ってお茶を飲む星。
「で、はやては今、その人の部隊でお世話になってるみたいで、偶然が偶然を呼んでこうなったってわけ」
「「なるほど………」」
声を揃えて納得する星とフェリア。
「でも大丈夫でしょうか?」
「なんとかなるって」
「………前から思ったが、桐谷に対して冷たすぎではないか?」
フェリアが俺を睨んでくる。
いや、何もそんなに睨まなくても良いじゃん………
「別に嫌いだとかそんな理由じゃ無いぞ。桐谷を信頼してるからこそ助けないんだ」
「………本当か?」
「桐谷は俺の一番の親友だぞ?本当に助けが必要なら助けるさ」
「………分かった」
納得するとフェリアの睨みが収まったが、今日は本当に恐かった………
(なあ星これは………)
(ええ、確定ですね)
いつの間にか俺の前に座っている夜美の隣にいる星。
一体何をこそこそと………
「面白かった〜!!」
とそんなときライの大きな声が聞こえてきた。
どうやらテレビが終わったみたいだ。
「ほら、チビッ子とライは寝る時間だぞ〜」
「えっ、僕も!?」
「桐谷君着いたで〜」
さて、はやての家にやって来た俺達。
でも桐谷だけの筈が何故に俺達まで?
「まあ良いではないか」
「そうだぞ零治」
俺以外には夜美とノーヴェが。
ノーヴェは桐谷が心配だったのか生徒会室の前で俺達が出てくるのを待っていた。
本当はすずかも来る予定だったが、生徒会に参加している分の習い事が今日入っていたらしい。
何だか迷惑をかけて申し訳ないな………
「はやてちゃんお帰りです〜!あっ、零治さん、桐谷さん、ノーヴェちゃん、王様いらっしゃいです」
ドアを開けてくれたのはリィン。
相変わらず元気いっぱいだな。
「王様は勘弁してくれ………普通に夜美でいい」
「はい!なら夜美ちゃんですね」
「ほな、みんな上がってや」
はやてにそう言われ、俺達は家の中に入っていった。
「あっ………」
リビングに来るとソファで静かに座っている2人の少女が。
そして姉と思われる子が桐谷を見て固まった。
「あの時のお兄ちゃん!!」
逆に妹の方の女の子は桐谷を見た瞬間、真っ直ぐ桐谷に抱きついた。
「………元気だったか?」
「うん!あの時は助けてくれてありがとう!」
そんな女の子の頭を撫でる桐谷。
気持ち良さそうにしている女の子は猫みたいだ。
それに対して姉の方はその場から動かず、口をパクパクさせている。
「何や、やっぱり桐谷君も魔導師やったんか」
「悪いなはやて、桐谷も管理局にあんまり良いイメージを持ってなくてな………」
「ええよ。零治君よりは問題無いと思うし」
俺を一体何だと思ってるんだ?
「ほぅ、間違いではなかったのだな」
「あっ、シグナムさんこんにちは」
「「こんにちは」」
「ああ、いらっしゃい。………で恐らくだが君は初めてで間違いないな?」
「はい、初めまして、ノーヴェ・イーグレイです」
「私はシグナムと言う。そして窓側にいるのがザフィーラだ」
そうシグナムさんが言うとザフィーがお辞儀した。
何で家の中も犬でいるんだろう………
「おおっ!?おっきい犬だ!!」
ノーヴェはザフィー程の犬を見たことが無かったのか、テンションが高い………
「良い子良い子………」
「おいノーヴェ、その犬は………」
「………くすぐったいから止めてくれ」
俺が言う前にザフィーが話してしまった。
その瞬間ノーヴェが固まる。
「犬が喋ったー!!!」
「あはははははは!!!」
「あ、主………」
はやて、バカ笑いし過ぎ………
「零治、桐谷達はいいのか?」
このやり取りからも分かる通り、桐谷とナカジマ姉妹の3人は少し離れた所で話している。
「あれで良いんだよ、まだぎこちないけど3人で話したい事もあるだろうし………」
「………特に姉の方はまだ固いな」
スバルは桐谷にべったりしてるがギンガは姿勢正しく座ったまま話している。
「なあシグナム、シャマルとヴィータはどうしたん?」
「2人で買い物に行きました。もう少しで帰ってくると思うのですが………」
「ただいま〜!」
とそんなとき元気な声が玄関の方から聞こえてきた。
「リィン、スバル、アイス買ってきたぞ………ってあれ?零治!?」
「おお、お久さ」
「それに夜美!」
「我はついでか」
「そしてノーヴェ………って何で固まってるんだ?」
「だってヴィータ、犬が喋ったんだぞ!?これをテレビに投稿したら………」
「おお、それは思い付かんかった」
「主!?」
「冗談や、冗談………」
おいはやて、その死角から構えている携帯は何だ………?
「あら、何か賑やかだと思ったら零治君達来てたのね」
「シャマルさん、お久しぶりです!!」
相変わらずの包み込むような大人の魅力があるなぁ、シャマルさん………
シグナムさんがクールビューティーだとしたらシャマルさんは聖母って所かな?
「また鼻の下を伸ばしおって………」
「零治君達、ちょっと待ってね、今お菓子出すから………」
「ちょ!?待て!!アタシがやる!!」
そう言って慌ててヴィータが台所へ向かう。
「なあリィン、お菓子出すくらいなら問題無いと思うんだけど………」
「駄目です、シャマルは絶対に何か付け足すので100%劇物になるです!!」
シャマルさん………料理が完璧だったら完璧なのに………
「なるほどね………」
「それでね、桐谷兄ちゃんがバァーっと敵を攻撃して、ダァーっと斬り裂いて………」
お菓子が出され、皆でお菓子を楽しみながら話していたが、終始スバルのお話会になっていた。
「もう、落ち着きなさい………」
「でねでね………」
ギンガの注意もなんのそのだ。
「ふむ、そう言えば零治と桐谷とは手合わせしたことが無かったな………」
ん?何でそう言う話になるんだシグナムさん?
「ちょうど良い、少し手合わせしないか?どっちでも構わないのだが………」
「「じゃあ桐谷(零治)で」」
「息ピッタリだな………」
「っていうかそこまで戦いたく無いのか?」
ノーヴェよ、無駄な労力で出来たら使いたく無いんだよ………
「桐谷兄ちゃん、戦うの!?見たい見たい!!」
スバルは桐谷を兄ちゃんと呼ぶようになった。
しかしスバルの目が尋常じゃないくらいキラキラと光ってる。
こうなればもう桐谷に逃げ場は無い。
「桐谷、子供の夢を壊す気か?」
「零治、覚えてろよ………」
残念、俺は忘れっぽいから忘れてるよ直ぐに。
「全く………すまんなぁ、シグナムはいくつになってもこないなままなんよ………」
「人の事は言えないと思うが………?」
「夜美ちゃん、私は子供シグナムは大人や」
「まあ的を射てるわね」
そんなシャマルさんの小言も既に聞こえておらず、シグナムさんはノリノリだ。
「では外でやろう」
そう言って俺達は外へ出た………
さて、シャマルさんに結界を張ってもらい、デバイスを展開するご両人。
シグナムさんはレヴァンテイン、桐谷はミズチブレードだ。
「へえ、桐谷君もベルカ式なん?」
「まあな。結構強いぜ」
「それはシグナムも同じだ」
「がんばれー桐谷兄ちゃん!!」
「見て勉強しなきゃ………」
それぞれが話していると………
「さて、さっさと始めようか」
「お手柔らかに」
そう言って構える2人。
「主!」
「ほな………始め!!」
はやての掛け声と共に、2人の戦いが始まった………
「くっ!?」
『ご主人様!?』
「どうした?こんなものか?」
この人は生粋の剣士だな。
バルトマンとは違い、ちゃんと俺の動きを見切って斬り返して来たり、巧みなフェイントを織り交ぜたりと、とにかく戦い方が豊富だ。
「玄武剛弾!!」
魔力をまき散らし、ひとまずシグナムを間合いから離す桐谷。
しかし………
「シュランゲバイゼン!」
鞭の様にしなる剣が桐谷を襲う。
「水流爪牙!」
流れるように移動しながらシュランゲバイゼンをさばき、近づく桐谷。
「くっ!?」
「舞朱雀!」
クロスレンジに近づいた瞬間、一気に突進し、左右往復しながらシグナムに斬りかかる。
「中々………速い!!」
シュランゲフォルムを戻すのに、ワンテンポ遅れてしまったシグナム。
桐谷の攻撃を見切る余裕も無く、受け止めるのに精一杯になってしまった。
「一気に畳み掛ける!!」
「やらせん!!」
2人のクロスレンジでの戦闘は続く………
「流石シグナムさん、闇の欠片とは大違いだな………」
「そうか、レイはあっちの世界で戦っていたんだな」
「まあな」
「その時は勝ったんか?」
「負けてたらここにいないっての」
「2人共凄い………」
「頑張れ桐谷兄ちゃんー!!」
2人の戦いを見て、ギンガは呆気にとられ、スバルは大声で応援していた。
「さて、どうなる事やら………」
「くそっ………」
吹き飛ばされ、何とか衝撃を押さえた桐谷。
しかし、シグナムの追撃が向かってくる。
「空牙!」
「くぅ!?セレン!!」
『バリアフィールド!』
展開したバリアフィールドで飛んできた斬撃を防ぐ桐谷。
しかしフィールドの出力は誰がどう見ても最初の時よりも弱くなっていた。
「まだだ、紫電一閃!!」
炎シグナムさんはを纏ったレヴァンテインで斬りかかる。
「地斬疾空刀!」
桐谷はブレードを展開して真っ向から受け止めた。
「おおおおお!!」
「はああああ!!」
剣と剣がぶつかり合う。
しかしシグナムの攻撃に徐々に押される桐谷。
「セレン、こうなったら賭けだ!フルドライブ!!」
『はい、ご主人様!!』
そう言い桐谷から魔力が高まる。
「ぐあっ!?」
魔力により威力が上がった攻撃にシグナムは耐えきれず、吹き飛ばされた。
「行くぞ、コード麒麟!!」
足と両腕に魔力が集中される。
「はあああああ!!」
吹っ飛んだシグナムが体勢を立て直した瞬間、桐谷は既にシグナムの目の前まで来ていた。
「何!?」
「でやっ!!」
右腕左腕と強化された両腕と足による攻撃。
荒々しい打撃の嵐にシグナムはその威力に防戦一方となっていた。
「ぐっ!?」
そして右腕の打撃でレヴァンテインが上に弾かれた。
シグナムも何とか手を離さずに済んだが、体全体ががら空きになってしまった。
「これで………」
両腕のブレードを展開。
「終わりだ!!」
そのままブレードでアッパー気味に斬り裂いた。
甲冑は斬り裂かれ、真っ直ぐ落ちていくシグナム。
「シグナム!!」
「そ、そこまで!!」
ヴィータが落ちていくシグナムを受け止め、その瞬間はやてが模擬戦終了の合図を出した。
「まさかシグナムが負けるなんてね………」
地面に降り、シグナムを治療するシャマル。
「しかもバリアジャケットの甲冑が斬り裂かれてるぜ」
ヴィータはその攻撃の凄まじさに驚きながら呟いた。
「………それほど物凄い威力だった」
「おっ、おいシグナム!!」
ヴィータの声も届かず、ふらふらながら桐谷の所へ向かった………
「模擬戦を受けてくれてありがとう。おかげで良い経験だった………って何故皆固まってるんだ?」
シグナムは桐谷にお礼を言ったが、皆反応が無い。
「お姉ちゃん、おっぱい大きい〜!!まるでメロンみたい」
「おっぱい………!?」
スバルに言われ、シグナムは自分の体を見てやっと気がついた。
甲冑を斬り裂かれたシグナムだったが、その中の服も斬り裂いており、シグナムの大きな山が表に出ていた。
「なっ!?」
慌てて胸を隠してしゃがむシグナム。
直ぐにヴィータが上着を掛けた。
「………桐谷」
「………何だ?」
「グッジョブ」
「………ああ」
「「ああじゃない!!!」」
夜美とノーヴェの息の合ったドロップキックにより、俺と桐谷は顔面から盛大に転んだ………
「後で星達に報告だな………」
「マジで止めて………」
至福な瞬間もあったが、光と闇の関係のように、地獄も待っている訳で………
「駄目だ、帰ったら覚悟しろ………」
地獄はすぐそこに………
「はやて………今日泊めてくれ。部屋はヴィータの部屋でいいから」
「なっ!?何で私の部屋なんだよ!?」
「だって、一番問題無いじゃん」
「また子供扱いして………アイゼンの錆にしてやる!!」
「………と言いつつ嬉しいヴィータやった」
「はやて!!」
「レイ………?」
あのさ、何でほんの冗談のつもりで言ったのに、好きな子に首を締められなきゃいけないんだ………?
「零治君、本当に人気ね………」
そんな様子を和かに見ているシャマル。
その近くには頬に平手の後がある桐谷と桐谷を睨むノーヴェ、シグナム。
そしてそんな様子を見ながらスバルの面倒を見るギンガ。
八神家は微妙なカオス状態になっていた。
「あんな人気は俺は嫌ですけどね………それといい加減睨むの止めてくださいシグナムさん」
「………」
まだ真っ赤な顔で桐谷を睨むシグナム。
「あらあら、あれじゃあうぶな少女みたいね、可愛いと思わない?」
「………シャマルさんって意外と人をからかうの好きですよね?」
「あら?そんな事無いわよ?」
大人の笑みで笑うシャマル。
(ダメだな、俺もこの人には口じゃ適いそうにない)
そう思いながら桐谷は立ち上がり、シグナム同様に桐谷を睨めつけるノーヴェの所に向かった。
「何でそんなに怒ってるんだノーヴェ?」
「別に………」
そう言うが、ノーヴェの態度は変わらない。
「はぁ………じゃあ何をすれば機嫌を直す?」
「だから別に何もないって言ってるだろ!!」
………これは触らぬ神に祟り無しって所かな。
「あの………」
「ん?何だギンガ?」
おずおずと話しかけてきたギンガ。
「ちょっと良いですか?」
そう言って庭の方に手招きされたので俺はギンガと共に庭に出た………
「あの………私に戦い方を教えてください!!」
「………俺に?」
「はい!シグナムさんとの戦いで思いました。私はシューティングアーツと言う戦い方を極めようと日々精進してきましたが、2人の戦い方を見てて、型だけを極めても駄目だって事が分かりました」
「まあ間違ってはいないと思うけど、別にそれは俺じゃなくても………」
「いいえ、教わるなら私と近い戦い方の桐谷さんに教わるのが一番ですし、何より桐谷さんだったらもっと強くなれると思うんです!」
「そんなに言われる程じゃ無いけどな………」
「私、どうしても強くなりたいんです。お母さんの使っていたシューティングアーツで………そして今度は私がちゃんとスバルを守ってあげたい………」
守るための強さか………
それなら零治に教わるのが一番だと思うんだが………
それに俺に教えられるのか?
零治とは違い、まだ何も得ていない俺に………
「だけど俺は………」
「お願いします!!」
………流石に年下の女の子がこんなに頭を下げているのに、無下になんて出来ないか。
「分かった、やれるだけやってみるさ。だけど教えるなんてうまく出来るか分からない。得るのも自分次第だぞ」
「はい!!ありがとうございます!!」
「それに俺は学生だし、ミッドにも中々来れないと思う。出来て週1って所だな?」
「構いません!!よろしくお願いします!!」
さて、俺にどこまで出来るのやら………
それにもしかしたら俺も零治みたいに何か掴めるかもしれない。
「………」
「ノーヴェ、何をそんなに睨んでいる」
「何か気に入らない………」
「あのギンガって子がか?」
「違う………と思う。ううん、そうなのかも………何故か見覚えがある気がして………」
(嫉妬では無いのか………?)
ノーヴェの意味深な言葉の意味は夜美には全く分からなかった………
ちなみにその頃の零治は………
「頼む、あれは事故だったんだ!!」
夜美が星に連絡したと聞き、慌てて電話する零治。
『はい、でもお姉さん好きのレイも一度修正しなくちゃいけないと思っていましたし、ちょうど良いですね。今日はたっぷりオハナシしましょうか?』
怒っていないが言葉の中にある地獄のワードが含まれていた事により、零治の焦りはMAXになっていた。
「待て、それだけは!!」
『それと私から逃げようとしたこともしっかり含めてオハナシするつもりなので覚悟を決めておいて下さいね』
そう言って強制的に電話を切られる零治。
「………先輩、俺もそっちに行くかも」
その後はいつも通りの光景が有栖家で起こったのだった………
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