戦国異伝
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第三十八話 砦の攻防その八
彼等は朝飯を食らうのだった。だがその間にだ。
蜂須賀の手の者の忍の一人が今川の囲みの目をかいくぐってだ。そうしてなのだった。
清洲の信長のところにだ。今川の敵襲が伝えられた。それを聞いてだ。
すぐにだ。柴田が言うのであった。
「よし、平手殿の兵と合流しすぐに救援に向かうぞ!」
「あの、ですが」
「御気持ちはわかりますが」
「むう、殿じゃな」
柴田は周りにいる同僚達の言葉を聞いてだ。すぐに落ち着いた。
そしてそのうえでだ。袖の中で腕を組みこう言うのだった。
「しかしのう」
「その殿がですか」
「今は」
「まあうだうだ言うのは好まぬ」
豪放な柴田らしい言葉だった。
「ここは落ち着くべきか」
「はい、そこで救援に向かわれるというのは権六殿ならではですが」
生駒がここで柴田に言う。
「やはり今は」
「そういうことじゃな。まあ大学殿に小六がおる」
柴田が最初に挙げたのはこの二人だった。そしてそれからだった。
「あの猿とその弟もおるしな」
「そうそう陥ちません」
「当分はもちこたえるな」
柴田もだ。そう見るのだった。
「鉄砲もあるしのう」
「そういえばですな」
山内が言った。
「清洲には鉄砲はあまり置いてませぬな、今は」
「平手殿の軍と鷲津に持って行ったぞ」
金森がその山内に話した。
「かなりの数はだ」
「ううむ、それでは篭城には辛いですな」
山内は金森のその話を聞いてだ。首を捻って言った。
「弓や長柄の槍はあるにしても」
「そうじゃな。鉄砲があれば全く違うからな」
金森もだ。それはわかったいた。城から鉄砲を撃ちだ。攻めて来る敵を寄せ付けないのだ。これも戦い方の一つなのである。
だが今清洲城には鉄砲がない。これが問題だった。
「篭城するにしては心もとないか」
「鉄砲が少ないとのう」
「どうにも」
「何、鉄砲がなくとも戦うことはできるわ」
柴田はそれは大丈夫だというのだ。
「その弓や槍で充分じゃ」
「それでいけますか」
「やろうと思えばな。だが少しな」
柴田の口調が変わった。それでだ。
周りにいるだ。同僚達の名前を呼ぶのだった。
「浅井新八郎政貞」
「はい」
背が高く色の黒い男だ。
「真木与十郎」
「ここに」
すがめでだ。険しい顔の男だ。
「梶川門尉高秀」
「何でしょうか」
やや小柄で四角い顔の男だ。
「幸田彦右衛門」
「はい」
ひょろ長く胡瓜ににた顔の男だ。
「岡本平吉郎良勝」
「はっ」
こちらはだ。赤い顔である。
「生駒平左衛門」
「おります」
太い眉のいかつい男だ。柴田は彼等の名前を呼んだのだ。
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