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戦国異伝

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第三十八話 砦の攻防その七


「かなりのものじゃな」
「迂闊に攻められんぞ」
「そして砦に何かあり血路を開くこともじゃ」
「それもできぬな」
「うむ、これではな」
 できないとだ。木下秀長も話す。
「このままではじゃ」
「兵糧攻めにされたらことじゃな」
「ああ、それをされたらどうしようもない」
 そうなればだ。終わりだというのだ。
「数は敵の方が圧倒的じゃしのう」
「砦の中の飯には限りがある」
「それではじゃ」
 兵糧攻めこそがだ。最も恐ろしいということになった。
 しかしだ。木下秀長は同時に蜂須賀にこうも話した。
「だが。それでもじゃ」
「それでもじゃと?」
「そこまで戦は長引くことはないじゃろうな」
「それはないか」
「うむ、この戦短い」
 短期決戦で終わるというのだ。
「おそらくこちらの兵糧が尽きる前に戦は終わる」
「それよりも前にか」
「うむ、終わる」
 そうだというのだ。木下秀長は確かな顔で話すのだった。
「だからそれは安心していいと思う」
「では飯はたっぷり食ってもよいのか」
 蜂須賀は楽しげな顔になってだ。こう木下秀長に話すのだった。
「そうしてもよいな」
「いい。むしろたらふく食わねばじゃ」
「いかんか」
「腹が減っては戦ができん」
 どの戦についても言えることだった。まずは食わねばなのだ。
「そういうことだからのう」
「その通り。しかし」
「しかし。一体何じゃ?」
「小六殿は忍であるな」
 彼がここで言うのはだ。このことだった。
「そうであるな」
「うむ、その通りじゃ」
「忍がたらふく食ってもよいのか」
 首を傾げさせながらだ。こう彼に尋ねるのだ。
「そうしてもよいのか」
「んっ?おかしいか?」
「たらふく食っては素早く動けまい」
 彼が蜂須賀に言うのはこのことだった。
「それは大丈夫なのか」
「わしはいつもそうしておるが」
 蜂須賀は何でもないといった顔で答える。
「だからじゃ。全くじゃ」
「平気なのじゃな」
「うむ、全く気にすることはない」
 豪快な笑顔で言う彼だった。そのうえでだ。
 蜂須賀はだ。その笑顔で木下秀長にこんなことを話した。
「大体わしはじゃ」
「小六殿は?」
「この身体だからのう」
 大柄なだ。その身体を見せながらの言葉である。
「どうしてもじゃ。食わねばじゃ」
「ならないというのじゃな」
「そうじゃ。わしはたらふく食ってこそ素早く動けるのじゃ」
「そうか。ではよいのか」
「ではまた食おう」
 豪快そのものの笑顔でまた話す彼であった。
「握り飯をな」
「小六殿はそれが好きじゃな」
「うむ、白米の握り飯は大好物じゃ」
 実際にそうだというのである。
「さて、ではたらふく食ってじゃ」
「また動くのじゃな」
「そうするとしよう」
 そんな話をしてだ。そのうえでだった。 
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