戦国異伝
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第三十三話 桶狭間の前にその八
「敵の攻撃を矢面に受けるのだからな」
「しかしわし等はです」
「殿に生きよと言われています」
「わからん話ですな」
木下兄弟と蜂須賀が言葉を返す。
「殿は死ねと仰る方ではありませんが」
「それでも。これは一体」
「どういうことか」
「普通に死ぬぞ」
また話す佐久間盛重だった。
「それでも生きよか」
「それでわし等もここに来るようにお話されました」
「生きる為にです」
「暴れて敵を引き付けよというのか」
佐久間盛重は腕を組みだ。難しい顔で話した。
「では引き付けている間に何をするか」
「それですな」
「一体」
「とにかくじゃ。わし等はここで戦い生きよというのじゃな」
それはわかった。はっきりとだ。
そうした話はだ。どうしても一つにまとまらなかった。
だが、だ。この話は別だった。
「だが戦ならばな」
「はい、生きましょう」
「絶対に」
このことは一つにまとまった。そうした話をしてだった。
彼等は戦の用意をしていく。木下兄弟の言う通りにであった。
戦の用意をしていく。そうしてであった。
堀を深くし簡単だが櫓も造っていく。その造り方も木下だった。
「先に完成させた者は生きた時には報酬は倍じゃ」
「よし、造るか」
「それならな」
こうしてだった。櫓も造られていく。確かに簡単だがすぐに造られていく。
無論堀もである。とにかく砦の守りはかなり堅固になっていた。それは彼等が砦に入ったその時と比べて遥かによくなっていた。
そして蜂須賀はだ。砦の周りを調べていた。そのうえで己の部下達に話すのだった。
「山の中だけあって隠れることのできる場所が多いな」
「そうですな」
「非常に多いですな」
部下達もだ。彼のその子オt場に頷く。木々がありだ。確かに隠れる場所は多い。忍が仕掛けるには絶交の場所ばかりである。
それを見て回る。そうしてなのだった。
蜂須賀はだ。あらためて話した。
「ではじゃ」
「はい、それではです」
「今川の兵が来たならば」
「思う存分暴れてやろう。向こうには忍がおらんしな」
そのことが大きかった。実にだ。
そんな話をしながらだ。彼等も戦の用意をしていた。そうしたことが続いてである。
信長もだ。こんなことを言うのであった。
「東の百姓達に酒を用意させよ」
「酒をですか」
「それをですか」
「それを義元の軍に差し出させよ」
そうさせよと。家臣達に話すのである。
「よいな、わかったな」
「あの、敵に酒をですか」
「酒を贈れというのですか」
「そうされよと」
「そうじゃ、そうせよ」
こう話すのだった。そして実際にだった。
彼は尾張の東の百姓達にだ。酒を用意させた。そうしてそのうえでだ。今川の軍に酒を出させる用意もさせた。それもだというのだ。
だがそれはだ。家臣達にとってはだった。
「またわからないことです」
「どう考えなのですか」
「これは」
「またわかる」
またしてもだ。こう言うのであった。
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