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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第92話 ウォーレンの贈り物

「イクス………」
「お母………様」

苦しそうにしながらイクスヴェリアはシャイデを見て呼ぶ。

「ごめんね、ずっと辛い思いをさせてきて………今解放してあげるから」

そう言ってシャイデはイクスヴェリアの首輪を見る。
クレインが直接改造している所は見たことが無いが、新たに取り付けた首輪が原因だって事は分かっていた。

「ハンニバル、解析をお願い」

魔力の糸を伸ばし、解析を始めるシャイデ。
暫くして、シャイデの指が止まった。

「そ……んな………」
「どうした!?」

相手を吹き飛ばし、大声で聞くゼスト。

「洗脳を解く手立てが無いの!!この首輪はクレインの指示を直接送るための物なのよ!!」

驚愕の事実に驚く一同。

「一体どうすれば良いのよ!!」

その場で座り込むシャイデ。
そんな様子を見ていたイクスヴェリアが口を開いた。

「お……母様」

「イクス!?」

「私を………殺してください」

「な、何を!?」

「このままでは………私は………大量の人を……殺してしまう………そうなる前にいっそ………」

「バカな事言わないで!!あなたには何の罪も無いのに………」

「いいえ………この力が……行けないんです……この力はみんなを……不幸にします……」

「イクス………」

「あの時、長い眠りに………つくのではなく……私は死ぬべきだったんです………」

「そんなこと無い、そんなこと!!」

「お母様は優しい人です………本当の娘でも無い……私…にも……優しく……してくれた………」

「イクス………」

涙を流しながら何も出来ない自分に情けなく思い拳を握りしめる。

「私は……目覚めてよかった………お母様に……会えて………だから………」

苦しそうに、辛そうに、イクスは言葉を続け、

「お母様、私を………殺してください………」

イクスは最後にそう言った。

「ウォーレン、私はどうすれば良いの………?」

そんなシャイデの言葉が虚しく溢れた………









「桐谷」
「零治!!いつまで休む気だよ全く………」
「大丈夫か桐谷?」

現在神崎がバルトマンと戦闘中。
その内に俺、アギト、加奈が桐谷の所へ向かった。

「聖なる光よここに………ハートレスサークル」

加奈の魔法で桐谷の体のダメージが抜けていく。
ただし装甲は直ることがなくそのままである。

「サンキュ、加奈」
「今の私に出来るのはこれくらいだから………悔しいけど相手が速すぎて簡単にバインドで捕らえられそうに無いし………」

申し訳なさそうに言う加奈に零治が近づき声をかけた。

「いや、助かってるよ。加奈が居てくれるだけで俺達も長く戦える」
「そ、そう………」

恥ずかしそうにそっぽを向きながら答える加奈。

(こっちの行方も気になる所だな………)

零治にそう言われ、一生懸命照れ隠ししてる加奈を見て桐谷はそう思った。

「ぐあっ!!」

そんな事を思ってるとこっちに神崎が吹き飛ばされてきた。

「くそっ、何て強さだよ全く………原作にいたら最強の強さだよ確実に………」

大剣を杖代わりにして立ち上がる神崎。

「加奈、回復を!!」
「分かってるわ!!」

今度は神崎に回復魔法をかける加奈。
その時バルトマンが加奈を見た。

「今度は加奈を標的にする気か………桐谷!」

「ああ、ぶっつけ本番だがやってみるか。抜かるなよ零治?」

「お前こそ」

そう言って互いに並ぶ零治と神崎

「フルドライブ!!」
「リーゼ、行くぞ!!」

今ここに赤い巨人と蒼い騎士が揃った………









「お母様、早く!!」

いきなりイクスヴェリアの口調が変わった。
耐えきるのにも限界を感じたからだった。

「うぅ………」

魔力の糸を伸ばし、イクスヴェリアの首に巻き付けるシャイデ。

「ごめんね………ごめんね………」

何も出来ない自分に情けさなを感じながらせめてイクスの思いを叶えてようとしたシャイデ。
魔力の糸が何重にも巻き付く。

「いいえ、ありがとうございます………お母様………」

シャイデは力を入れ、イクスヴェリアの首を締めた………












「ぬっ、敵!?」

「ってなんでや!?」

いきなりエニシアルダガーを飛ばされ、慌てて相殺するはやて。

「なんだ大きい子鴉か。一体何の用だ?まさか我らの邪魔を………」

「いや私等は管理局員やから。爆発があったらかこっちに様子を見に来ただけや」

「えっと………ディアちゃん、レヴィちゃん、シュテルちゃん、ユーリちゃんとキリエさん、アミタさんで良いんだよね?」

とりあえず今いるメンバーを確認するためになのはがみんなの名前を聞くが反応が無い。

「あれ?私間違えた?」

「ううん、なのはの言った通りの筈だけど………」

なのはとフェイトが困り始めた時、アミタが口を開いた。

「あの………なのはちゃんにフェイトちゃん………?」

「あっ、はい、そうですけど………」

「うっそ!?ライと同じくらいおっぱい大きい!!」

「「えっ!?」」

レヴィの言葉に驚きながらも胸を隠す2人。

「それにとても綺麗です」
「星にも負けていません」

「「あ、ありがとう………」」

シュテルとユーリには絶賛されて戸惑う2人。

「待てや、何で私には何も無いんや!?」

「黙れ鴉、貴様が喋ると食われる」

「鴉!?せめて可愛いげのある子鴉にしてくれへん!?………って何で私が王様達を食うんや?」

「だってレイがおっぱい星人だって」

レヴィの言葉を聞いたなのはとフェイトが『あ〜』と納得した表情で頷いた。

「いや、せやからって………」

「ひぃ!?」

ユーリに近づいたはやては叫び声まで上げられた。

「………私これからは自重しよ………」

そんな光景を見たはやてはそう誓ったのだった………

「………無駄話はこれくらいかな?」

「そうですね………」

フェイトの問いにユーリが答え、再び現れたマリアージュ達を全員見た。

「行こうかみんな」

なのはの問いにここにいる全員が頷いた………







「零治、先に行くぞ!!」

頭の角にエネルギーが溜まり、電気を帯びて光り始める。
桐谷はそのまま突撃を始めた。

「そのまま突っ込めよ桐谷!!」

対して零治はパルチザンブラスターをB、Eを高速移動しながら連射し、圧倒的な火力でバルトマンを攻撃する。

「!!?」

ダメージは無いものの、身動きが取れないバルトマン。
それなのに、桐谷には全く砲撃は当たらない。

「取った!!」

真っ直ぐ突撃した桐谷はぶつかる直前に上空に飛び上がり、そのまま角で斬り落し、前に払った。

「今度は俺が!!」

反対側に移動していた零治が斜め下から上に上がるようにインパクトステークで突き刺し、そのまま零距離からパルチザンブラスターのEモードを発射した。

「ぐっ!?」

その勢いで今度は桐谷の方に飛ばされる。

「アルトより巨大なベアリング弾だ!!」

アルトアイゼンより大きいスラスターから大量のクレイモアが放出される。

「ぐおおおおお!!」

ベアリング弾の嵐に唸るバルトマン。

『B、Eモード集束率100%………』

「パルチザンブラスターFモード、行けええええ!!!」

ベアリング弾の攻撃が終わった瞬間、零治の集束魔法が、バルトマンに直撃する。
零治はそのままバルトマンとの距離を詰めていく。

「そしてこっちもだ!!」

右手のバンカーをバルトマンの左胸に突き刺し弾を発射しながら前へ押していく。
零治の集束魔法と桐谷のバンカーが互いに押していき………

「これが!!」
「俺達のランページゴーストだ!!」

ぶつかる寸前にそのまますれ違った。










「何でここにいるのよスカリエッティ………」
「悪いけど、私もただ見ている訳には行かないと思ってね………」

シャイデがイクスヴェリアの首を締めようとした瞬間、スカリエッティの魔力刃で魔力の糸を切られた。
驚いて魔力刃の方向を見るとそこにはスカリエッティとクワットロがいた。

『やあジェイル・スカリエッティ、引きこもるのは止めたのかね?』

そんなスカリエッティにディスプレイ越しから話しかけるクレイン。

「ああ、ただ待っているだけじゃ行けないと思ってね。私に出来ることをやらせてもらうだけさ。………クアットロ」

「ISシルバーカーテン」

『一体何を………』

クアットロのISの影響でクレインが表示したディスプレイにノイズが走る。

「ウーノ、準備は良いかい?」

『ええ、任せてください』

端末からそう聞いたスカリエッティはそのまま首輪に端末から伸ばしたコードを使い、解析を始めた。

「ドクターあんまり時間をかけてる余裕は無さそうですわ………」

「頑張ってくれクアットロ………」

そう言いながらすごいスピードで端末を操作するスカリエッティ。
そして………

『ドクター、原因が分かりました!!原因はバルトマンと同様に埋め込まれてるコアによる影響です!!』

「こっちでも確認した………後はそのコアを破壊すれば………」

「イクスは解放されるの!?」

「ああ。………しかし………」

そう言って口籠るスカリエッティ。

「まだ何かあるの………?」

「コアがある場所がイクスヴェリアの心臓と殆ど同化していて、それを破壊するには相当な魔力コントロールが必要になるんだ………少しでもズレてしまうと心臓にもダメージを与えてしまう………」

「そんな………」

スカリエッティの言葉に再び力が抜けそうになるシャイデだったが、そこは踏ん張り、覚悟を決めた。

「ジェイル、私やるわ………」

シャイデは力強くスカリエッティにそう告げた………









「どうだ………」

爆煙で見えなくなったバルトマンの方を見て零治が呟く。
零治はフルドライブが切れ、桐谷はリーゼから普通のアルトに戻ってしまった。

「くっ、やはり中学生程の成長期の体には負担が大きいか………」

痛みを感じたのかバンカーのあった右腕を抑える桐谷。

「だけど上出来だろ、流石の奴も………」

爆煙が晴れ視界が戻ると、そこには傷だらけのバルトマンが。
体から何かが崩れ去るように落ちていってる。

「あの崩れ去ってるのはもしや聖王の鎧………?」

「だとしたらダメージを受けているのにも頷ける。やはりランページゴーストは通っていたんだ。ダメージさえ通れば………」

そう言ってステークを構え、突撃しようとする桐谷。

「待てって!リーゼの影響でお前の体にもガタが来てるはずだ!一旦加奈に回復を………」

「そんな暇はない、今がチャンスなんだ!!」

桐谷がそう言った瞬間、いきなり周囲の空気が震え出す。

「何だ………!?」

その原因はバルトマンにあり、バルトマンから膨大な魔力があふれでている。

「フルドライブ………」

「コアが!!」

見るとコアから膨大な魔力が放出されている。

「コアを破損させたせいで暴走した………?」

「ラグナル、ブラックサレナ!!」

『イエス、マスター!!』

零治がブラックサレナに代わり、桐谷を含め、神崎、加奈、アギトを庇うように、射線上に立ち、フィールドを張る。
その内にバルトマンの膨大な魔力が斧にどんどん集束されていく。
前に放ったジェノサイドブレイカーとは比べ物にならない程の魔力が斧に集められた。

そして、大きな球体を作り出し、斧を高々と上げた。

「ワールド・オブ・デストロイヤー………」

世界を破滅させる程の集束魔法が零治達に向けられ、放たれた………









シャイデは魔力の糸をイクスの左胸に伸ばし、針を刺すように突き刺した。

「イクスヴェリア君に使われているコア自体はそれほど耐久性は無い。心臓に負担にならないように最小限の魔力を流さなくてはならない………それ故に魔力操作が上手く、魔力ランクが低い人が最適だったんだが………」

「大丈夫よ必ず成功させてみせる………」

そう言いながら指を細かく、慎重に操作し、操作するシャイデ。

「………到達したわ」

「ここからが本番だ。慎重に、ほんの少しづつ………」

スカリエッティが説明してる途中で彼等の近くに砲撃魔法が放たれた。

「くっ!?彼女達も疲労してきている………それに03と言うマリアージュの準備も完了しているだろう。後はクアットロのシルバーカーテンの効力とシャイデ君の腕次第か………」

『ドクター!!更に零治君のブラックサレナの反応が!!』

「ここにたどり着かせる訳にはいかない。私が足止めをしよう」

『ドクター!?』

「大丈夫だよウーノ、勝てなくても足止め位してみせるさ」

そう言ってスカリエッティはグローブを自分の手にはめた。











『マ、マスター………』

「頑張れラグナル………」

前方に集中してフィールドを張る零治。

「零治、耐えろ………」

その後ろからアルトの桐谷が零治を支える。
しかし勢いはとどまる事を知らず、砲撃魔法に押される零治と桐谷。

「加奈、フォースフィールドは!?」
「私達ならともかく、兄さんと桐谷にはフィールドを張れないわ………」
「くそっ、アタシ達は見ているだけかよ!?」

神崎の質問に加奈とアギトが苦々しく答えた。
不意だったため、もし零治が反応していなかったらフィールドすら張れなかった加奈。
そんな油断していた自分に後悔していた。

『マスター!!』
「フルドライブ!!全ての魔力をフィールドに!!」
『はい!!』

フルドライブにより、更に増した魔力をフィールドに全て注ぎ込む。

「ぐうう………」
「あああああ!!」

零治の唸り声とバルトマンの叫び声が重なる。
そして視界が光に包まれた………











「どうなったんだ………?」

視界が戻り、目を開けて呟くアギト。
自分の体に何とも無い事が分かると直ぐに前を確認した。

前にはボロボロながらもその場で立ち塞がってる零治が、それを支える桐谷が。

「零治、桐………!!」

しかしその後の言葉が出なかった。
何故なら零治の目の前にはさっき砲撃魔法を放っていた筈のバルトマンがその場に立っており、バルトマンはそのまま斧上に構えて………

「止めろおおおおお!!!」

アギトの叫び声も虚しく、斧は零治を思いっきり斬り裂いた………











「星、夜美、大丈夫!?」

「ライ、私は何とか………」

「我もだ………だが流石にキツイ………」

3人で背中を合せ、目の前に居るブラックサレナを見る。

「シャイデは………」

「まだみたいですね………」

「くそっ、早く終わらせてレイの援護に行かなければならないのに………」

そう言って夜美は横目で零治の方を見る。

「あっ………」

しかし、その時は零治は真っ直ぐ地面に落ちていた。
………血を大量に流しながら。

「レイーーー!!!!」

夜美がダッシュで零治の所に向かう。

「夜美!?………レイ!!」
「ライ、夜美、何処に………レイ!?」

星とライも気がつき、夜美に続いて零治の所へ向かう。

「邪魔させない、ディザスターヒート!!」

前を進みながら放った砲撃魔法だが、それは見事に追いかけてきたブラックサレナ達に当たり、全て堕とした。

「レイ、レイ、レイ!!」
「嫌だよ、嫌だよ!!」
「駄目、嫌………!!」

何とか地面に落ちる前に一番速いライが零治を何とか受け止める。

「「「レイ、レイ!!」」」

3人が一生懸命声をかけるが、零治の反応が無い。

「3人共、兄さんは!?」

視界が戻るのに遅れた加奈が慌てて、零治の元にやって来た。

「零治、零治!!」

アギトが泣きながら呼びかけるが反応が無い。

「そんな………」
「加奈、どうしたの?」
「心臓が止まってる………兄さん嘘よね………?冗談だよね………?」

加奈が震えた手で零治を揺さぶる。しかし零治の反応はやはり無い。

「うわあああああああああ!!」

スプライトフォームになったライがバルトマンに飛んでいく。

「アギト!!」
「ああ!!」

「「ユニゾン・イン!!」」

星とアギトはユニゾンし、ライと同様にバルトマンに向かう。

「許さん、絶対に………」

夜美はその場で集中し、魔力を高める。
その顔は怒りで我を忘れているようであった。

「兄さん………私は何の為に………」

加奈はただ一人、その場に座り込んでいた………












「キャロ、あれ!!」

ルーテシアにそう言われ、指差した方を見る。
その先には零治達が戦ってる方向へ、星達が向かっており、その先を見ると………

「お兄………ちゃん………?」

真っ直ぐ落ちていくレイが見え、顔が真っ青になるキャロ。

「あれってレイ兄!?ねえキャロ!!………キャロ?」

ルーテシアが何度も話かけても反応が無いキャロ。

「キャロ………キャロ!!」

「お兄ちゃん………お兄ちゃん!!」

「キャ!?」

急転回して、零治の所に向かおうとするキャロ。

「キャロ!!駄目だよ!!目の前の敵に集中しないと!!」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」

しかしルーテシアの声もキャロには届かない。

「キャロ!!………ごめん!!」

そう言ってルーテシアはキャロを頬を思いっきりビンタした。
甲高い音と共に、キャロの目に光が戻っていく。

「………ルーちゃん?」

我に返るキャロ。フリードもそれに伴い止まった。

「落ち着いて、今ここを離れちゃったらあの子を助けられなくなる。レイ兄は星姉達が向かったからきっと大丈夫。私達は私達が出来る事をしましょう」

「……………うん」

頷いて、再びマリアージュ達がいる場所へ戻るフリード。

「ありがと、ルーちゃん………」
「ううん、私達友達だもん。頑張ろうキャロ………」

2人は再び、戦いへと戻っていった………












「お前が!!!!」

神崎が大剣でバルトマンに斬りかかる。攻撃が単調になっても、相手の攻撃を食らっても止まらない。

「よくも、よくも!!」

あちこちから血が出始める神崎。一緒に戦っていた桐谷も流石に不味いと感じた。

「神崎、抑えろ!!」
「加奈の思いも零治の家族達の思いも………全てお前が!!」

どんなに食らおうと勢いが止まらない神崎。
そして………

「ぐふっ!!」

相手のボルティックランサーが腹に突き刺さる。
しかし、

「肉を斬らせて………骨を断つ!!」

突き刺さるのと同時に魔力で伸ばした大剣で斬りつけた。

「ぐっ!?」

コアは暴走しているが、聖王の鎧は零治達のランページゴーストにより破壊された為、ダメージを受けるバルトマン。
しかし………

「修…復……?」

痛みにより、意識を失っていく神崎はそう呟きながら完全に意識を失い、地上へ落ちていく。

「神崎!!」

ボロボロのアルトの姿で、クレイモアをバルトマンに射出した後、ダッシュで神崎を捕まえた桐谷。
それと入れ違いで、星達がバルトマンに向かっていった。

「アイツら………ということは零治は………」

そんな事を思いながらも冷静に対処する桐谷。
地上に降りて、零治の近くに神崎を降ろし、座り込んでいる加奈に話しかけた。

「加奈、神崎が重傷だ、回復を頼む」

「………」

「加奈!!」

体をこっちに向かせると廃人の様に脱力状態の加奈。

「お前………!!」

そんな加奈に桐谷は思いっきり殴った。

「一体お前は何をやっている!!星達は零治の為に戦っているのに、お前は絶望に浸ってるだけか!?アイツがそんなお前を見てどう思う!!」

「桐谷………」

「今は自分の成すべきを事を成せ。零治の為にも………」

そう言ってボロボロのアルトを解く桐谷。

「セレン、セットアップ」

ミズチブレードを展開した。

「零治………せめてお前の代わりにお前の家族を俺が守ってやる………だから………」

しかしその後の言葉は出ず、桐谷はそのままバルトマンの所へ向かった………














「ここは………」

気がつくとそこは光に包まれた場所。
たしかここは………

「転生する時にいた所か………と言う事は………」

「そうだ、お主は死んだのじゃ」

そこには懐かしき、神様が………

「ってつい最近話したか」
「そうじゃが、全く反応が薄いのぉ………それよりも死んだ事に何の感想も無いのか?」
「そりゃ………未練があるにはあるが、こうなった以上どうしようも無いしな………」

そう、俺にはどうしようも無い………
後は桐谷達に………

「全く………俺はそんなふざけた奴を相棒に選んだ覚えはねえぞ?」
「!?」

そんな俺に声をかけてきた人物が………
でも何で………

「先輩………」
「こうしてちゃんとした場所で会うのは久しぶりか零治?」

俺の先輩で初めての相棒、ウォーレン・アレストが前と変わらぬ姿でいた………









「あああああ!!」

ライは絶叫と共にハーケンでバルトマンを斬りつける。

「………」

しかし斧で全て受け止めるバルトマン。
ダメージは一切無い。

「ブラストファイヤー!!」

その内にアギトとの影響で威力が上がった砲撃魔法を放つ。
ライと正面から戦っているバルトマンには避ける事もできず、まともに食らった。

しかし………

『修復してる!?』

マリアージュ程のスピードでは無いが、バルトマンの傷が修復していた。

「だったら修復出来ないほどのダメージを与えればいいんです!!」

『行くぜ、星!!』

フルドライブし、ルシフェリオンの先を向ける。

「疾れ明星!目の前の敵を焼き尽くす連獄の轟炎!!」

『デュアル・ルシフェリオンブレイカー!!』

ルシフェリオンの先に膨大な魔力が集束する。その後直ぐにもう一度集束して2倍になった魔力はまるで巨大な爆弾のように膨らんだ。
そしてその魔力をバルトマン目掛けて発射した。

「!?」

ライは星から発射されたと同時にその場から離れている。
しかしバルトマンは逃げられず巨大な魔力の球体に取り込まれる。

まるで太陽の輝きのように光輝く魔力の球体。

そして終わりが近づき、球体は大きく爆発した。

「があああああああ!!」

大声で絶叫をあげるバルトマン。

「これですむとは思うなよ。残りの魔力を全てこの一撃に!!」
「僕と夜美の合体魔法!!」

ライは雷の刃を、夜美は4つの魔方陣を。
それぞれ並んで自身の一番威力の高い技を放とうとしていた。

「まずは僕から!!」

雷の刃をバルトマンに向けて放つ。

「そのまま捕らえてろライ、出でよ巨獣、ジャガーノート!!」

魔方陣から発射された砲撃魔法は上へ向かっていき、屈折して、降り注ぐようにバルトマンに直撃する。

「次は僕!そのまま夜美の攻撃と巻き込まれちゃえ!!雷刃封殺爆滅剣!!」

突き刺した刃が雷をともし、そしてどんどん膨れていく………

「ライ、決めるぞ」
「うん!!」

「極光ざーん………」
「エクスカリバー………」

「「ブレイカー!!!」」

最後に2人の攻撃が混ざり合い、前の技と共に合わさって大きな爆発を起こした。

「これで………」
「レイ、やったよ………」

ライと夜美が肩で息をしながら呟く。
その少し後ろでは星とアギトが心配そうに見ている。

「2人共大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫………」
「ああ、我も何とか………」

星はアギトとユニゾンしている影響か、まだ何とか大丈夫だが、ライと夜美は限界に近かった。
そもそも今に至るまで多くの敵と戦ってきた3人。元々限界が近かったのに対し、今までで一番威力のある魔法を使った事が大きかった。

『3人共、バルトマンが現れるぞ』

アギトの声に3人がバルトマンのいた方を見る。
現れたバルトマンは体中に傷があり、もうボロボロだった。

さっきまで光っていたコアも光が弱くなっていて、修復力も弱くなっている。

「後もう少しだね………」
「ああ、もう少しで………」

夜美がそう言った瞬間、バルトマンの魔力が急激に上がる。

「2人共逃げ………!!」

星がそう言うが、既に満身創痍の2人に逃げる余力は残っていなかった。

「アギト!!」
『分かった!!』

2人の前に立ち、

「『ファイヤーウォール!!』」

アギトが使えるプロテクションを張った。

「うがあああああ!!」

星とアギトがプロテクションを張ったと同時に急激に上がった魔力を放出。
周りの物全てを吹き飛ばした。

「「「「きゃあああああああ!!?」」」」

アギトのプロテクションではとても耐えられない一撃は3人を吹き飛ばす。
3人共地面に突き刺さる様に落ち、立ち上がって来ない。

「星………ライ………夜美………」

アギトだけは何とか立ちあがり、3人を見る。
3人共血だらけで、バリアジャケットも解除されていた。

「くそ………くそ!!」

アギトが飛び、右手に火の玉を作り出し、バルトマンにぶつけようとするが………

「きゃ!?」

その前を誰かが通過した。

「………優理?」

「お前が!!!!!!」

エターナルソードを両手に展開して斬りかかる優理。

「レイを………よくもレイを!!」

しかし優理も圧倒的な力を持ちながらも今までの戦いでダメージを受けており、今までの動きが出来ていない。
対してバルトマンはコアの力が弱くなってきているが、未だに修復力が残っており、次第に力が戻っていく。

「くそ、くそ!!」

「優理!!」

ミズチブレードで斬りかかり、優理を助けようとするが、バルトマンの展開したスフィアの攻撃に援護出来ずにいる。
2人は次第に押されていった………









「そんな………」

「なあお前が居なくなっただけでみんなあんな風になるんだ」

先輩に言われ、皆の戦いの様子をディスプレイで見ていたけど、戦況は最悪だ。
このままじゃ全員殺される………

「くそ………」

「零治………」

「じいさん、俺にもう一度………」

「一度転生した者を生き返らせるのは儂の力じゃ出来んのじゃ………悪いの………」

そう言って申し訳なさそうにする神様。
くそっ、何でこんな時に俺は………

握り拳から血がにじみ出るがそんなの気にならない。

「なあじいさん、やっぱり俺決めたよ」
「やはり気持ちは変わらんか?」
「ああ、アイツらは俺の家族だから………」

「そうか………」

そう言って寂しそうに神様は呟く。

「零治」

先輩に声をかけられ俺は先輩を見る。

「………何ですか?」
「お前に奇跡を起こしてやる。ただし今回限りの一回だ、次は無いぞ」

そう言って俺の肩に触れる先輩。
そして目を瞑り、集中し始めた。

「先輩何を………?」

「スキル発動、『ギフト』俺の命を零治に………」

そう言うと先輩の体から青い固まりみたいなのが俺に移る。
その途端、意識が薄くなってきた。

「先………輩?」

「俺のレアスキル。自身の魂を相手に移し、相手を蘇生させる。例え自分の肉体が無くなっていても対象の肉体さえ残ってれば蘇生させられる。ただし、俺の存在が完全に消え去るけどな………後は自身の自己修復能力になるだろう」

「そんな………だけどそれって………」

「俺はここで生まれ変わらず完全に消え去る」

「何で………何で………!!」

どんどん薄れていく意識から何とか怒るが当の本人はケラケラと笑っている。

「何でって当たり前だろ?お前は俺の最高の相棒にして最初で最後の息子なんだぜ?」

「俺は………先輩に何も………」

「親孝行なら絶対にハッピーエンドで終われ。誰一人失うな。そして………」

もう目が見えない。先輩の声だけしか聞こえない。
先輩………先輩………嫌だ………

「幸せになれ、みんなでそれが最高の………」

そこまで聞いて零治の意識は完全に失った。










「くっ………」

シャイデはもうコアの部分まで到達していた。しかしチャンスは一度だと言うことと、失敗すればイクスを殺してしまうと言うことで最後の一歩が踏み出せずにいた。

「きゃ!?」

そしてマリアージュとブラックサレナの攻撃がシャイデの方に来始めていた。

「もう行くしか………」

そう思い覚悟を決めた時だった。

『力を抜けよシャイデ、お前なら出来るよ』

「えっ!?ウォーレン………?」

しかし振り返っても近くに居るのイクスだけ、近くではスカリエッティがマリアージュ達を足止めしていた。

「………ありがとうウォーレン。あなたはいつでも見守ってくれたのね………私やるわ、見ててウォーレン」

そう言ってシャイデは魔力を流した。












「兄さん………?」

いきなり光に包まれたかと思えば傷がみるみるうちに修復されていく。
そして完全に治ると零治が目を覚ました。

「………ここは?」

「兄さん!!」

目を覚ました零治に加奈が抱きつく。

「加奈?」
「うん、うん!!」

「そうか………俺は生き返ったんだな………先輩………」

そう呟いて空を見る。
今、空ではバルトマンと優理、桐谷が戦っている。

「加奈、星達の回復を頼む」

「兄さん!!」

立ち上がろうとする零治に抱きつき、動けなくする加奈。

「何すんだよ加奈………?」
「もう戦うのは止めて!もう兄さんを失いたくないの!!」
「加奈………」

そう言う加奈の腕を零治は優しく解き、立ち上がる。

「俺はさ、約束しちまったんだ。俺の命を繋いでくれた先輩に」

そう言って一枚のカードを懐から取り出す。

「ハーディアス、セットアップ」

そう言って零治が光に包まれる。
現れた零治はいつものアスベルの格好だが、持っている武器だけが違った。

「銃筒の長い双銃………?」

「ハッピーエンドで終わらせて、みんなで幸せになるってな!!」

加奈にそう言い残して零治は空に向かった。 
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