| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十八話 都にてその十二


「それを考えていくと」
「どうやら我等の間には深い縁があるようですな」
「若しやこれは」
 木下がだ。おどけた笑みでこんなことを言った。
「我等は何時か共に轡を並べて戦うやも知れませぬな」
「ははは、そうかも知れませぬな」
 明智も笑って木下に返した。
「貴殿は確か」
「はい、木下秀吉でござる」
 笑ったまま名乗った木下だった。
「以後お見知りおきを」
「こちらこそ。しかし貴殿は」
 明智は木下のその顔を見てだ。こんなことを言うのであった。
「何かが違いますな」
「違うとは?」
「はい、その目の光から察しますに」
 木下の目を見てだ。そうして話すのだった。
「頭で戦われる方ですな」
「いえいえ、それがしなぞはとても」
「いえ、どうやら貴殿は」
 木下の謙遜を退ける形でだ。彼はさらに言った。
「かなりのものですな」
「そう思われますか」
「どなたも見事な方々ですな」
 明智は他の家臣達も見て述べた。
「尾張一国に留まっておられる様な方々ではありませんな」
「ははは、わしなぞはそれこそ槍しかできぬがな」
 ここで可児が明智に応える。
「しかしそれでもじゃ。槍ならばじゃ」
「槍ならばでございますか」
「うむ、慶次とは互角だが他の者には負けはせぬ」
 こう言うのであった。
「この笹の才蔵はな」
「槍でございますか」
「生憎わしは頭が悪い」
 このことは笑って言う可児であった。
「それで槍を選んだのよ」
「そうでございますか」
「まあそれでしか殿のお役には立てんがな」
「まあこういう者もおる」
 信長はその可児を見ながら述べた。
「何かと賑やかじゃ」
「それがしの如き海賊もおりますしな」
 九鬼もいた。彼もなのだった。
「いやはや、丘にあがるとどうも落ち着きませぬ」
「ぬかせ、堺では目を輝かせておったではないか」
「全くじゃ。川という川を見よる」
「御主は海だけではあるまい」
「川も好きではないか」
「ははは、そうかのう」
 同僚達の突っ込みにだ。九鬼は豪快に笑って返すのだった。
「まあ水は全体的に好きだがのう」
「そうじゃろう。御主は河童よ」
「いや、水虎かもな」
「どちらにしろ水じゃな」
「そうじゃ、水があれば何処にでもじゃな」
「そうかも知れんな」
 自分でもそれを認める九鬼であった。やはり顔を崩して笑っている。
 そしてそんな彼等を見て明智も細川もだった。何処か魅かれるものを感じていた。
 かくして茶が入りそれを飲み終わったその時にであった。時が来た。
「ではじゃ」
「はい、それでは」
「行くとしましょう」
 信長は立ち上がりだ。そのうえで家臣達を連れ明智と細川の案内を受けてだ。将軍の間に向かうのであった。いよいよ武家の棟梁と会うのであった。


第二十八話   完


                 2011・2・18 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧