戦国異伝
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第二十八話 都にてその十一
「そうするやもな」
「左様ですか」
「ではその時は」
「任せよ。さて、それではじゃ」
話が一段落したところでだ。また言う信長だった。
「茶はあるか」
「茶ですか」
「それでございますか」
「そうじゃ。茶じゃ」
まさにそれだというのだ。信長は笑みを浮かべていた。
そうしてその笑みでだ。彼はさらに話した。
「御主等も茶は好きじゃな」
「嗜んではおります」
「それがしも」
明智も細川もだ。すぐに述べてみせた。
「茶道ですか」
「その茶でございますな」
「そうじゃ。しかし今はそうした堅苦しいものではなくじゃ」
見ればだ。信長の顔が砕けたものである。そうしてその砕けた笑みでだ。明智と細川に対してあらためてこう言うのであった。
「ただ茶を飲みたいのじゃがな」
「あの茶をですか」
「それをでございますか」
「そうじゃ。それを頼めるか」
信長は二人にまた言った。
「皆で飲もうぞ」
「いやいや、これは参りましたな」
「全くです」
信長にそう言われてだ。明智も細川も顔を崩してだ。そのうえでこんなことを言うのであった。
「これだけの大人数となると」
「淹れるのも一苦労でござるな」
「ははは、そうじゃな」
信長も顔を崩している。彼もであった。
「しかし皆で飲んでこそじゃ」
「茶も美味である」
「そうだというのですな」
「そうじゃ。それでじゃ」
また言う信長であった。
「皆の分もじゃ。頼めるか」
「はい、わかりました」
「それでは」
二人はだ。はっきりとした笑顔で答えた。
「全員で楽しみましょう」
「茶を」
「うむ、しかしじゃ」
ここで柴田がだ。明智の顔を見てこんなことを言うのであった。
「明智殿とは正徳寺でも御会いしたが」
「あの時のことですね」
「こうしてここでも会うとは縁であるのう」
「そうじゃな。これも何かの縁」
「全くでござるな」
前田や佐々も言うのであった。
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