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戦国異伝

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第二十七話 刺客への悪戯その四


「そうしたことがわかっているからこそです」
「逆に言えばわかっていなければなれなかった」
「そういうことですね」
「そうです。やはり彼は稀代の傑物」
 それは認める。何度も刃を交えた相手だからこそ。
「そして他の傑物達も」
「北条ですか」
「相模の獅子ですか」
「彼もまたそうです」
 北条氏康もだ。その彼もだというのである。
「他にも安芸の毛利もそうですし土佐の長宗我部もまた」
「西国にも傑物はいますか」
「あの者達が」
「島津もそうだと聞いています」
 謙信の目はだ。そこにまで及んでいたのだった。
 それを述べながらだ。ここで一人の男の名前も出した。
「そして織田も」
「尾張のですか」
「あの青を好むというあの男もまたですか」
「彼は今上方にいると聞いています」
 そのことは既に謙信の耳に入っていた。謙信はただ戦が強いだけではない。情報を手に入れることにもだ。非常に長けているのである。
 その謙信の耳にだ。信長が既に上方にいることが伝わっているのだった。
 そのことについてだ。謙信はさらに述べた。
「あの終わりの蛟龍もまた傑物です」
「世間の評判とは違いですか」
「英傑なのですか」
「私はそう見ています。何時か言ったと思いますが」
「はい、覚えています」
「そのことは」
 家臣達はそれぞれ答える。実際に知っていたのだ。
 その中の一人柿崎がだ。こう主に言った。
「尾張を瞬く間に統一し乱も抑えました」
「それもかなり迅速にだったな」
「左様、迅速でござった」
 宇佐美にもこう答える柿崎だった。
「少なくとも戦は上手かと」
「いや、戦だけではないようだぞ」
「それもだ」
 ここで他の家臣達が言ってきた。
「政も見事だという」
「尾張は非常にまとまっているようだ」
「政もかなりというと」
「やはり」
「蛟龍はやがて龍になるもの」
 謙信は遠くを見る目で述べた。
「彼のこれからは注意しておくべきです」
「その織田殿はかなり馬と水が得意だとか」
「相当なものだとか」
「わかっている何よりの証です」
 謙信はまた信長について話した。
「動く時は常に。一人なのです」
「その織田と我々は何時か戦うでしょうか」
「それはあるでしょうか」
「果たして」
「あるかも知れません」
 謙信はその可能性を否定しなかった。そうしてだった。
 その遠くを見る目でだ。こう話したのだった。
「その時は甲斐の虎や相模の獅子に匹敵する相手でしょう」
「そこまで強いですか」
「織田殿は」
「武田や北条と同じだけ」
「後はそれに相応しい力を備えるだけです」
 力という言葉も出したのだった。
「そして力は」
「力は」
「どうだというのでしょうか」
「力は後からついてくるものです」
 そうだというのだった。 
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