戦国異伝
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第二十五話 堺へその三
「東大寺や興福寺の僧兵達もおる」
「比叡山のそれ程乱暴ではありませんが」
「ここにもですな」
「それに筒井に三好の勢力もあるからのう」
「厄介なのは三好ですな」
「やはり」
家臣達の顔がここで歪んだ。
「三好の松永久秀が来ております」
「信貴山に城を構えそのうえで」
「この大和を治めようとしております」
「それで争いが激しくなっているようです」
「まず寺社の僧兵達が消えるだろうな」
信長はここでこう予想を立てた。
「まずはな」
「筒井と松永久秀の争いの中で」
「そうなると」
「そうじゃ。そして御主等も言ったが」
それでもだというのである。
「やはり松永が最も厄介よのう」
「そうなりますか」
「あの男が」
「そもそも誰か知っておるか」
信長は家臣達全員に問うた。
「あの男は何処から来たのじゃ」
「それは」
「それがしは知りませぬ」
「それがしもです」
「そういえば」
「わしも知らん」
信長自身もだというのだ。松永の出自は知らないのだった。
「一体何者じゃ」
「急に三好家に来てそのうえで瞬く間にのしあがりです」
「ああなっていますが」
「今では主家さえ凌ぐ権勢です」
「力はありますがそれでもです」
「出自はです」
「全くわかりませぬ」
それがまさにその松永久秀という男だというのである。
家臣達のその言葉を聞いてだ。信長はまた言った。
「似ておるな」
「似ているといいますと」
「あの男ですか」
「そうだというのですね」
「そうだ、津々木よ」
話に出すのは彼であった。
「似ておるな。出自がわからぬというのは」
「確かに。言われてみれば」
「松永とあの男」
「何処か」
「妙な話ではあるな」
信長は怪訝な顔でこうも述べた。
「同じものがあるのではないかのう」
「同じものとは」
「それは」
「そこまではわからぬがそれでもじゃ」
これは信長の直感からだった。感じることだったのだ。
だがそれを確かに感じてだ。それで彼はまた言うのだった。
「同じかも知れぬのう」
「ううむ、だとすると松永という男」
「我等が思っているよりも厄介かも知れませぬな」
「それもかなり」
「厄介なのは間違いないであろうな」
信長はこのことは間違いないというのだった。それはだとだ。
「さもなければあそこまでなれぬ」
「天下第一の勢力である三好の執事まで」
「そこまでですな」
「それだけのものはあるということじゃ」
こう話すのだった。
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