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戦国異伝

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第二十四話 国友その十一


「できれば上杉と永遠に争っていてもらいたいがのう」
「しかし上杉は上杉で」
「あれも恐ろしい家です」
「あの上杉謙信という男」
 謙信自身がだ。恐ろしいというのであった。
「数多くの戦において負けなしであります」
「引き分けた者はその武田だけです」
「他は誰も勝ててはいません」
「北条ですら」
「その上杉だからこそ武田は動けぬ」
 義龍はまた言った。
「そして政もしておるからのう」
「そういえば武田は政が好きですな」
「それもかなり」
「異様にこだわります」
 そのことも知られていた。非常にだ。
「戦よりも政なのですな、武田は」
「まずはそれなのですね」
「どうやら」
「それは正しいかと」
 家臣の一人が言った。
「政ありきですから」
「それが最初だというのだな」
「はい、国を富ませてこそ戦ができます」
 こう義龍に話すのだった。
「金や米がなければ戦なぞできませぬし」
「それは確かにその通りよ」
 義龍も頷くことだった。
「武田はそれがわかっておるのだな」
「はい、そう思います」
「そうよの」
「ただ。武田はその政になるとそれに専念しますな」
 ここでこのことが指摘された。
「戦で攻め取った国を徹底的に治めております」
「それが楽しみであるかの様に」
「そこまでして」
「そういえば織田も」 
 信長もだと。一人が言った。
「動きませんな、尾張を一つにした後は」
「政に専念しておるのでしょうか」
「町も田畑も見事になっていますが」
「そうなると」
「ふん、あのうつけはそうではない」
 こう言ってまた信長を否定する義龍だった。
「どうせ遊んでおるのよ」
「そうですな、やはり」
「あの者、茶にも入れ込んでおるようですし」
「舞もしておるとか」
「遊びばかりの様で」
「遊んでばかりで何ができるか」
 何処までも信長を否定する義龍であった。
「そうした者には何があろうともよ」
「敗れはしませんな」
「決して」
「やがて破る」
 義龍は言い切った。
「あのうつけに目にもの見せてくれるわ」
「はっ、それでは」
「今は刺客からの朗報を待ちましょう」
 こうしてであった。彼等は今はそれを待つのであった。
 しかしそれがどうなるかはだ。誰にもわからない。しかし彼等は知らなかった。その刺客のことを信長が既に知っていることにだ。
 それを言うのはだ。駿河の雪斎であった。
「斉藤も小手先ではじゃ」
「駄目でございますか」
「うむ、それで織田は倒せぬ」
 こうだ。彼は元康に話すのである。
「とてもな」
「信長殿は勘が非常に鋭い方です」
「それだけではないな」
 雪斎は元康の言葉に己の言葉を続けた。 
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