戦国異伝
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第二十四話 国友その七
「その時にじゃ」
「はい、それでは」
こう話してであった。信長は鉄砲の話をまとめたのであった。そして茶室を出てから長のその屋敷の庭を歩いている時にだ。村井に言われたのだった。
「上手くいきましたな」
「いや、こうなると思っておった」
「話は簡単にまとまるとですか」
「そうじゃ、そう思っておった」
信長はそうだというのである。
「最初からのう」
「いや、それは」
「どうでしょうか」
村井だけでなく武井も言ってきた。
「あの額でああもあっさりと頷くとは」
「流石にそれがしも」
「それがしもでござる」
「思いませぬでした」
「何、あれであちらに利が出るからよ」
しかし信長は二人に素っ気無く述べる。その緑の庭を歩きながらだ。質素だが広く見事な庭である。そこを三人で歩いて話をしているのだ。
「だから向こうもあれでじゃ」
「その通りですが」
「しかしあの額は最初見た時は」
「だから言うぞ」
信長は彼等にも話すのだった。
「多く作ればそれで手間や時間がかなり省けるのじゃ」
「だからですか」
「鉄砲もまた」
「同じよ。そうした意味では槍や弓を作るのと変わらぬ」
「そうしたものとですか」
「結果としてですか」
「何でも多く作ればそれだけ安くなる」
信長はまた言った。
「作る方も一度に多く作ればそれだけ手間も時間もかからぬのじゃ」
「それであの額になったのですな」
「御聞きしましたがその通りだとは」
「そういうことじゃ。さて」
ここで庭を出た。屋敷の外に出たのである。
信長は屋敷の門をくぐってからだ。こう二人に話した。
「では権六達のところに行こうぞ」
「はい、それでは」
「今より」
あらためて柴田達と合流する。するとであった。
彼等はだ。元気な顔でそこにいてだ。笑顔で信長を迎えるのであった。
「おお殿、帰られましたか」
「思ったより早かったですな」
「如何でござったか、首尾は」
「上手くいきもうしたか」
「上手くいったから早いのじゃ」
信長は明るい笑顔で彼等にこう話した。
「そういうことじゃ」
「確かに。左様でござるな」
「上手くいかねば話はどうしても長くなる」
「そういうことでござるな」
「鉄砲を五百」
信長は彼等にもこの数を話した。
「それだけのものが手に入ったぞ」
「何と、鉄砲を五百ですか」
「ここでさらに五百」
「それだけのものがまたですか」
「我等の手に」
「そうじゃ。これは大きいであろう」
満面の笑みで彼等に話す。
「それが手に入ったのじゃ」
「金はかかるにしてもそれが手に入ればですな」
「今川も斉藤も怖くはありませぬぞ」
「ましてや伊勢の国人なぞは」
当面の織田の敵達だ。どの勢力もそこまで鉄砲を持ってはいない。織田だけが図抜けて多くの鉄砲を持っているのである。
「では。我等は都に上る前にそれだけのものを手に入れた」
「これは幸先がいい」
「いいことが続きますな」
「いや、それは違うぞ」
今言ったのは蜂須賀である。信長は彼に言うのであった。
「小六、よいことはじゃ」
「はい、どういうものでござろうか」
「続くのではなく続けるものじゃ」
こう言うのであった。
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