戦国異伝

　　　　　　　　　　　　　　　　　　第二十三話　　上洛
　信長上洛の報は。すぐに美濃にも伝わった。
　稲葉山城にいる義龍はだ。すぐにその目を厳しくさせて家臣達に言うのであった。
「連れている兵は」
「僅かです」
「百もおりません」
　すぐにこう述べられるのだった。
「ただ。家臣達が多くいます」
「主だった家臣達の殆どがです」
「全て連れて行っています」
「ふむ。そのうえで上洛か」
　そうしたことを聞いてだ。義龍が考える顔になった。そうしてであった。　
　彼はだ。すぐにこう言うのであった。
「それではだ」
「はい、それでは」
「どうされますか」
「刺客を送るとしよう」
　これが義龍の決断であった。
「ここはな」
「刺客ですか」
「送りますか」
「それでことが果たせればそれでよい」
　素っ気無い口調だった。だがあまり期待はしていない感じであった。
「それでな」
「それでなのですか」
「刺客を送りますか」
「ここは」
「若し成功すればだ」
　その時のことも考慮に入れていた。既にだ。
「その時は尾張を一気に攻め取るぞ」
「主がいなくなればですね」
「すぐにでも」
「そうだ、そうなれば何に越したことはない」
　そうは言ってもだった。彼の今の口調はあまり期待していない感じである。それを隠そうともしていない。何故かというとであった。
「あのうつけはともかくとしてだ」
「他の家臣達がですか」
「そうはいかないと」
「あの笹の才蔵もおる」
　可児のことである。
「尾張には腕の立つ者も揃っていたな」
「あの鬼柴田もおりますし」
「近頃入った滝川一益もかなりのものとか」
「前田利家もおりますし」
「兵は弱いのですが」
　それでもなのだった。信長の家臣達はそれとは別だというのである。
「家臣達はそれぞれかなりの強さです」
「やはり。刺客は」
「しかし送らぬより送る方がよい」
　結局のところ義龍は今は刺客についてはこの程度の考えであった。
「よいな、それでだ」
「それで、ですか」
「刺客は」
「二だ」
　数で述べるのだった。
「二度送る」
「二度ですか」
「そうしてですか」
「あのうつけ、できることなら消してしまいたい」
　本音も見せる義龍であった。
「ここでな」
「だからこそですね。二度ですか」
「刺客を送るのは」
「そうよ。わかったな」
「はい、それでは」
「二度出しましょう」
　家臣達も彼のその言葉に頷きだ。その方針が決定したのであった。しかしそれを聞いた竹中はだ。稲葉達に対してこう話すのだった。
　彼等は竹中の屋敷に集まっている。そこで話をするのだった。
「この刺客はです」
「うむ、義龍様が決められたあれだな」
「あれはどうなると見るのだ、御主は」
「一体」
　それをだ。まずは三人衆が問うた。