戦国異伝
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第二十話 信行謀叛その六
「これは戦にはなりません」
「?どういうことだそれは」
「半兵衛、戦にならぬとは」
「どういうことだ」
義龍自ら兵を率いて出ている。三人衆や不破、竹中は道三に近かったことから彼に警戒されてだ。動かされることはなかったのだ。
今彼等は安藤の居城にいた。そうしてだ。竹中の話を聞くのだった。
「一方的な戦になる」
「そう言うのか?この戦」
「そうだと」
「いえ、そうではありません」
それは違うとだ。竹中は三人衆に対して答える。彼等は今茶室にいる。そこで五人だけになってだ。そのうえで話をしているのである。
竹中は茶が入った湯飲みを手にしながらだ。また述べた。
「戦が起こらないというのです」
「既に殿も兵を出しておられるぞ」
不破が厳しい顔で竹中に問うてきた。
「それでもか」
「はい、織田殿はどうやら」
「あの御仁がか」
「我等美濃との戦を考えてはおりませぬ」
そうだというのである。
「兵は動かしておりますが」
「陽動か」
稲葉が言った。
「それか」
「どうやら」
「ふむ。それではだ」
氏家がだ。袖の中で腕を組みながら述べた。
「そうして動かしておいて」
「何かを釣り出すか」
安藤も続く。
「尾張の中の不貞の輩を」
「そうかと」
その通りだとだ。竹中は答えたのだった。
そしてそのうえでだ。彼はこうも言った。
「殿もある程度は察しておられるようですが」
「用心の為だな」
「兵を動かさずにはいられぬ」
「そういうことだな」
「その通りです」
そうだとだ。竹中は四人に対して述べた。
「そしてそれこそが織田殿にとって好都合です」
「兵が動いたからこそか」
「美濃の兵もまた動いたからこそ」
「それでだな」
「そういうことです。それを見てです」
どうなるかと。竹中の話は続いていく。
「間違いなく尾張において三郎殿に叛意を持つ者は動くでしょう」
「そしてそこで軍を反転させてその者達に向かい」
「そのうえで討つ」
「そうするつもりか」
「その通りかと。ですから戦にはなりません」
だからだというのであった。
「この度は」
「そういうことか」
「ではだ。今はだ」
「我等もまた」
「動くことはない」
四人もだ。言うのであった。
「織田殿、まだ我等に見せてはおられぬ」
「我等が仕えるのに相応しい方かどうか」
「それはな。まだだ」
「それではだな」
「はい。まだ見る方がいいかと」
竹中もだ。今は信長を見ようとしないのであった。
そしてそのうえでだ。四人に対して確かな声で述べてきた。
「まだ。見極められてです」
「そしてそのうえで、だな」
「我等がどう動くか決める」
「確かなものを見てから」
「そのうえで」
「そうされるべきです。では今は」
竹中はまた彼等に告げた。
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