戦国異伝
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第百九話 尾張者達その一
第百九話 尾張者達
帝のおられる朝廷の壁も宮も信長により修繕されていく。公家の者達もそれを見て驚きかつ満足した顔で話していた。
「いや、これが織田殿の忠義でおじゃるか」
「帝のおられるこの宮を修繕されるとは」
「しかも庭まで整えておられる」
「服も色々と届けて下さる」
信長の気遣いは服にまで及んでいた。
「見事な絹の服をどんどん贈られる」
「帝もお喜びでおじゃる」
「ここまで朝廷に尽くされた方はおられぬ」
「いや、織田殿は全く以て忠義者でおじゃるな」
「麿達にも気遣いをしてくれるでおじゃる」
帝に対してだけではなかった。信長は彼等に対してもその気遣いを見せて贈りものを贈っているのである。
その中でさらにこうも言うのだった。
「やはり織田殿でおじゃるな」
「うむ、天下人は織田殿でおじゃる」
「あの御仁こそがじゃな」
「天下を一つにされ治められる方」
「何よりも民達が織田殿を慕っているでおじゃる」
都の中を見てだ。公暁達は都からは余り外に出ないがそれでも都の彼等を見てそのうえで判断しているのだ。
「既に多くの国に八百万国近くを領有しておられる」
「ではやはり織田殿でおじゃる」
「天下を任せるべき御仁でおじゃる」
信長は公暁達の心も掴んでいた。彼の人気はあらゆる者達に及ぼうとしていた。
だが彼はそのことに満足せず都から岐阜に戻り城の中でこう話していた。
「まずは天下をしかと治める為にじゃ」
「これまで以上にですか」
「人を求める」
「都を出る時に言っておられましたが」
「そうされますか」
「これより」
「そうじゃ。そうする」
信長もまさにそうすると家臣達に答える。
「それで当家に秀でた者はおるか」
「そうですな。そう言われますと」
「これまでの戦でも槍働きを見せた者が結構おります」
「そして政でも見事なものを見せた者も」
「わりかしおります」
「色々な者達が」
「ふむ。それではじゃ」
信長は今いる家臣達の話を聞いて述べた。
「その者達を全てわしの前に連れてくるのじゃ」
「そしてご自身で見られてですか」
「そのうえで決められますか」
「うむ、そうする」98
まさにそうすると答える信長だった。
「まずは家の中からじゃ」
「人を探されますか」
「さらに」
「人は外にばかりいるものではないからのう」
利休との話からの言葉である。
「だからこそじゃ」
「では早速」
「見所のある者達を連れてきますので」
「ではそのうえで」
「お会い下さい」
「そうするとしよう」
こう家臣達に応えそうした見所のある者達を集めさせた。中には噂を聞いた信長が自ら呼び寄せた者達もいた。その中には。
「小六のせがれか」
「うむ」
蜂須賀の子もいた。その他にもだった。
「細川殿のご子息に宮兵衛の子」
「そして坊主だった者もおる」
「多いのう」
「他にも大勢おるぞ」
織田家の主な家臣達は集められた者達を見た。見れば確かに雑多で尾張からだけでなく他の国の者も呼ばれていた。その中には。
「藤堂高虎とな」
「そんな者もおるのか」
「坊主あがりの前田玄以」
「そして大和の島左近は・・・・・・来ておらぬか」
「他にも大勢おるではないか」
「また多いな」
こう話す彼等だった。そしてその他にもだった。
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