魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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第86話 零治の過去 シャイデとの出会い
新暦65年9月………
(相棒、今だ!!)
先輩の念話と共に転移を開始。
「くそっ、しつこい………って!?」
逃げていた男の前に黒い装甲を纏った子供が現れた。
「邪魔だ、どけガキ!!」
魔力弾を飛ばし、攻撃するが、バリアによって妨げられ、
「ビームソード展開」
黒い装甲が作った魔力刃によって持っていたデバイスを弾かれた。
「降参するか?」
「………ああ」
男は諦め、その場に座り込んだ………
「いやあ、稼げた稼げた!」
「………でも良いんですか?また管理局のおじさんに睨まれてましたよ?」
「ああ、ゼスト・グランガイツだろ?地上で珍しいS級魔導師の。確かに睨まれてたが俺達は別に悪いことしてねえし問題ねえよ」
まあそうなんだろうけど、ゼスト・グランガイツがこっちを見て睨んでくる辺りからこっちに向かって怒りが溜まってるだろうから俺としては気が気じゃ無いんだけど………
「………まあ何か有ったら先輩のせいにして逃げればいいんですけど」
「残念、今や黒の亡霊は管理局で有名になってるからな〜。俺よりお前の方が目に入るさ」
「そうなったら先輩に脅された事にします」
「出た、子供特権!!」
まあそんな事で許してもらえるわけ無いだろうけど。子供だって魔導師として働かせてるんだ、同罪だろうな………
「で、これからどうします?」
「意外と早く終わったし、どこかで飯食って剣の修行でもするか?」
先輩には俺のブラックサレナ、アーベント、ラグナルモードは教えてある。
ブラックサレナもラグナルの剣での戦いも先輩に教えてもらいながら訓練していた為、前よりもうまく扱えるようになったし、何より転移が任意の座標に飛べるようになったのが一番嬉しい。
ただアーベントを使ったときは体がついていかず、怪我を負ってしまったが………
そして先輩の戦闘技術が凄い………
先輩の魔力ランクはAA。高い方ではあるが、それでも俺以下だ。
だが先輩はそれでもランク以上の戦い方をする。
先輩の戦い方は魔力弾を色々工夫し使いこなして戦う。
例えばあの大きな斧を使うアイツの時みたいに、わざと魔力弾を弾かせ、敵周辺に停滞させ爆発させたりとトリッキーな技を好んで使う。
しかもバリアブレイク出来る魔力弾なんかもあり、最初はブラックサレナのフィールドがあっても相手にならなかったりした。
まあ最近は慣れてきたのかいい勝負をするようになったと思う。
「しかしコンビを組み始めてから早4ヶ月位か………」
「そうですね………」
ミッドの街並みを歩きながらそんな事を思い出す。
「今でも良く無事に生き残れたよな………俺達以外の人間は結局生存者無しらしいし………」
「まあ記録上生存者無しですけど………」
「まあ傭兵の扱いなんてそんなもんだよ」
腕を頭の後ろに組んで感慨深そうに言う先輩。
先輩も昔、管理局絡みで何かあったのだろうか?
「………そういえばあの事件の事を何と言うんでしたっけ?」
「っと確か………」
「ベヒモス事件。あらゆる物を飲み込んだ爆発を見てそう名付けられたわ。ベヒモスってある管理外世界で神話になっている化け物だったり、他の世界では実際に居たとか………まあそれはどうでもいいわね」
会話に入ってきた女性は金髪の綺麗な女性。管理局の制服を着ている。
「………あんた誰ですか?」
「シャイデ・ミナート、管理局の執務官をしてるの、よろしくね生き残りの傭兵さん」
これがシャイデ・ミナートとの始めて出会った瞬間だった………
「相棒………」
「何ですか?」
「運命って………あるんだな………」
「は?」
そして先輩が更に壊れた瞬間でもあった………
「遠慮しなくて良いのよ。これでも執務官のエリートだからじゃんじゃん稼いでるの」
エリートって自分で言う人初めて見たな………
しかも稼いでいるのなら何処か高級な店にでも誘って欲しかった。
「じゃあこのビールとつまみを少々」
「亡霊君はどうする?」
「お茶と適当につまみを」
「分かったわ、済みませんー!」
シャイデが近くの店員を呼び、注文を言う。
ここは傭兵の集まる酒場。
大体の傭兵がここで仕事を探して受注する。
他は管理局からの依頼や個人的な依頼があるのだが、この酒場の存在を知ったのは先輩とコンビを組み始めてからである。
なのでその前までは管理局の依頼をしていたので過酷だったが、酒場に集まる依頼はちょっとしたものから大変なものまで幅広くあった。
傭兵の登録をする際教えてもらえる筈らしいのだが、聞いた覚えがない。
先輩曰く子供だからって嘗められたんじゃないかと言われた。
本当に子供って面倒だ………
「しかし地球の食べ物やお酒が増えてきたわね。私としても地球には知り合いもいるし、好きだから嬉しいんだけど」
「そうなのか?いやぁ、うちの相棒も地球出身の魔導師なんだよ!いやぁ奇遇だね〜!」
そう言ってシャイデさんの手を掴む先輩。
「いや、何で先輩が手を掴むんですか………」
「ふふ、そうね。私達は結構相性が良いのかもしれないわね」
「でしょ〜!」
嬉しそうに言う先輩。
完全に舞い上がってるなこの人………
「相性が良いついでにお願いがあるのだけれど………」
「何ですか?何でも協力しますよ!」
「ベヒモス事件について調べているんだけど、唯一の生き残りの2人は何か知らない?」
「ええ、良いネタありますよ!!」
「ちょ!?先輩!?」
「詳しく教えてちょうだい」
この後先輩は自分の事を盛って、話し始めた………
「成る程、そんな事があったのね………」
完全に仕事モードの顔でシャイデさんが呟いた。
「そうなんですよ〜、転移して助かったと思ったら凄い爆風が向かってきて!」
そんな先輩の言葉も仕事モードのシャイデさんの耳には入ってないみたいだ。
「またバルトマン・ゲーハルト………」
また………?
「………協力ありがとう、それで2人にお願いしたいことがあるの」
「なんですか!?」
「………先輩うるさい」
「仕事で掴んだんだけどね、ミッド周辺に謎の研究所を確認したのよ。私が調査したい所なんだけど今聞いた話をまとめて調査したいからね」
「分っかりました!その依頼、俺達がパパっと解決しちゃいますよ!!」
「ちょ!?」
「本当!?ありがと!!えっと………」
「ウォーレン・アレストって言います。こっちは………」
「………黒の亡霊で頼みます」
「何で名前を隠すのよ?何か訳あり?それに敢えて突っ込まなかったけど、全身真っ黒で顔もバイザーでハッキリ見えなくするってあなたの趣味なの?」
「放っておいてください」
「………まあいいわ、ウォーレンに亡霊君ね。2人共よろしくね!!」
そう言ってシャイデさんは行ってしまった。
「先輩、そんな軽はずみに返事して良かったんですか?」
「いいじゃん、美人の頼みを断ったら男がすたる!!」
この人絶対に女に苦労するだろうなぁ………
「まあ頑張ろうぜ相棒!」
「………分かりましたよ」
俺は諦め、先輩について行った………
次の日………
「へえ、やっぱりレベルが高いわね………」
次の日、早速研究所に向かった2人にサーチャーを飛ばして彼等の様子を見ていた。
ある研究所とは武装している違法研究所だった。研究内容は恐らく新型の質量武器の開発をしてたんだと思う。今はまだそこまで脅威になるような研究成果が無いから後回しにしてたけど、彼らの実力を見るにはちょうどいいでしょう。敵の魔力ランクも平均Aランク以上はあるし。私も1人じゃキツイと思ってたし、彼らも応援を呼ぶと思ってたけど………
「まさか2人だけで本当に行くとはね………」
魔導師を倒し、2人は更に進んでいく。
「これは本当に拾いものかもね………」
彼らに飛ばしたサーチャーの映像を見ながら私は呟いた………
「つ!?この!!」
ビームソードを展開して不意に現れた魔導師を斬り裂く。
「レベル高いな………」
そう言いながらも先輩の周りには気絶した魔導師が複数。
相変わらずのトリッキーな戦闘で相手は混乱されっぱなしだった。
ちなみに今回は幻影を巧みに使い、無駄な魔力を使わずに1人ずつ気絶させていった。
「確かスタンショックでしたっけ?」
「ああ、相手を気絶させる魔力弾を相手に打ち込む技だよ。俺以上の高ランク魔導師には効かないけど………」
それでもAランク以上が結構稀なミッドにとってかなり有効な技になる。
デメリットとしては魔力弾なのに、直接相手に打ち込まなくちゃいけない位か。
本当にこの人は何者なんだろうか?
「さて、とっとと証拠らしいものを押さえて帰るぞ」
「そうですね」
俺と先輩は更に奥へと進んだ………
「何か見たことある光景だな………」
さて、進んで行き着いた先は色々なディスプレイが多く展開している場所だった。
物陰からここの研究者なのか、デバイスを持って身構えている。
「零治、データを抜き取るからそれまで壁をよろしく〜」
「せめて盾になってくれって言ってください………」
俺はそう呟きながらフィールドを展開。
チャンスを伺っていたのに、フィールドを張った俺を見て、慌てて研究者達が攻撃してきた。
だがそんな魔力弾は全てフィールドの前に消え去った。
「くっ!?一点を集中攻撃しろ!!」
相手の怒声が聞こえ、フィールドの一点に魔力弾が集中する。
「ラグナル」
『問題無いです、これくらいなら問題無く耐えられます』
「先輩、後どのくらいですか?」
「もうちょい、もう………よしOKだ!」
「それじゃあ反撃します」
「そうだな、さっさと帰るぞ!」
その後、データを持って帰った俺達はそのままシャイデに連絡し、この研究所は検挙されたのだった………
「2人共ありがとう、これは報酬よ」
嬉しそうに言いながら俺達に報酬を渡すシャイデさん。
「ありがとう。………それで俺達は合格かな?」
合格?
「あら?バレてた?私が貴方たちを試すために依頼したのが」
マジでか!?
「確かに新型の質量兵器を開発してたけど、データを見る限り今直ぐに検挙するほどでも無かったからな。それで結果は?」
「ええ、決めたわ。改めて貴方達に依頼したいことがあるの………」
そう言って一回深呼吸するシャイデさん。
そしてこっちをしっかり見て、
「ベヒモス事件の真相を解明するのに協力して欲しいの………」
ハッキリとそう告げた。
「なあ零治、お前は良いのか?俺が軽はずみに返事してOK出したけど………」
あの後、返事を聞いたシャイデは嬉しそうに酒場を後にした。
俺と先輩はシャイデがいなくなった後もその場に残り食事をしていた。
「………自覚はあったんですね」
「いや、そりゃあな。………だからそんな目で睨むなって………」
「俺はハッキリ言ってまだ信用してません。シャイデはまだ俺達に何か隠してます」
「だろうな………ただそれが必ずしも俺達に不利になるとは限らねえぜ」
「そりゃあそうですけど………」
「それにな、俺にとってもベヒモス事件については思うことがあるんだ」
そう言って先輩はあの時の事を思い出しながら呟いた。
「あの爆発の後のクレーター………あんな威力のある爆弾をもしミッドの市街地や管理局で使われでもしたら………」
確かにそんなことがあればミッドは崩壊するだろう。
実際にあの爆弾を管理局の方でも優先的に調査するとニュースでやっていた。
「別に正義を気取る気は無いけどさ、何かさ、無関係の人が巻き込まれて死ぬなんて目覚めが悪いじゃん。あの時の事件だってどれだけの人が悲しんだ事か………」
この人は本当に………
「そうですね、確かに目覚めが悪いです」
「だよな!だからさ、俺達が頑張って守ってやろうぜ。例えそれが報われなくても………」
そう言った先輩の顔を何故か悲しげであった。
この人にも俺も知らない秘密があるんだだろうな………
「分かりました、もう何も言いません。俺も協力しますよ」
「流石相棒!」
どんな事が起きるか分からないけど、先輩と共に頑張っていこう。
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