戦国異伝
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第百三話 鬼若子その八
既に長槍を掲げている。織田家のその長槍をだ。
その彼等を前に見ながらだ。信長は毛利にこう言ったのである。
「あの槍の長さはどうじゃ」
「長曾我部の槍よりも遥かに長いです」
「うむ、長い」
そうだと答える信長だった。
「あの長さで前に出せばどうなる」
「そうは近寄れませぬ」
槍衾だ。織田軍も今それを構えようとしていた。
その彼等を見てだ。信長は毛利にさらに問う。
「では長曾我部は諦めるか」
「そうはしませぬ」
「そうじゃな。それではじゃな」
「槍が前にあればどうするか」
毛利はここから話した。
「切りそしてです」
「槍を槍でなくせばよいな」
信長は笑いながら述べた。
「それだけじゃな」
「はい、ですから」
「今まさに来る」
そして丹羽も兵達に槍を下ろさせようとしていた。だが長曾我部軍はここで切り札を出した。
「投げよ!」
「はい!」
「わかり申した!」
この言葉と共にだ。長曾我部の足軽達は思いきり前に何かを投げた。それは一体何かというと。
石だった。それを投げてだった。
織田の者達を撃つ。彼等のうちに何人かは揉んだり打って倒れてしまった。だがそれでも元親はこう言った。
「まだじゃ!投げよ!」
「石をですか!」
「さらに!」
「そうじゃ。投げよ」
前に突き進みながらの言葉だった。
「それでまずは織田の者達を怯ませよ!」
「畏まりました!」
「では!」
「それからじゃ!」
この先のことも考えている元親だった。
「よいな。一気に進みじゃ」
「そのうえで、ですな」
「ここでは」
「我等の槍でまず突く」
そしてそれからだった。
「次に刀を抜いてじゃ」
「切り合いますか」
「そのうえで」
「我等の強さを見せてやるのじゃ」
即ち長曾我部の力をだというのだ。
「よいな」
「では切り合いましょう」
「織田の者達と」
「そうじゃ。思う存分切れ」
また言う元親だった。
「生きよ。その為にじゃ」
「今は戦いましょうぞ」
「それでは」
「進むのじゃ」
また言う元親だった。
「よいな」
「では!」
「今より!
「武勲を挙げよ!思う存分な!」
そして見えてきた。彼等の軍勢は織田の軍勢にそのまま進む。それから遂にだった。
長槍を下ろす前に突入しまずは突き崩した。
それから元親自ら刀を抜いてだった。
左右にいる織田の足軽達を切っていく。彼のその武勇に他の兵達も心から奮い立った。そうしてだった。
織田軍の中に入り暴れ回る。その彼等を見て。
明智に率いられて苦いが強い顔になりだ。明智に言ったのである。
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