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戦国異伝

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第百三話 鬼若子その二


 そのこともありだ。彼等は話すのだった。
「ようやくですから」
「その土佐を奪われるとなると」
「たまったものではありませぬな」
「うむ、わしもそれは同じじゃ」
 そしてそれは元親もだった。彼は腕を組み難しい顔になり家臣達に述べる。
「この折角手に入れた土佐を手放すことはじゃ」
「何としてもですか」
「防ぎたいですか」
「一戦も交えずして去れば国を失うならば」
 それならばだった。
「一戦を交える」
「そしてですか」
「土佐を守りますか」
「そうされますか」
「わしは天下には興味はない」
 元親はそうだった。精々四国を己のものにする位までしか考えていない。あわよくば上洛とも考えていたが信長の上洛でそれも捨てている。
「土佐を守れればよい」
「ではその土佐の為にも」
「ここはですか」
「一戦交えますか」
「そうされますか」
「うむ、攻めるぞ」
 まさにだ。そうするというのだ。
「織田に我等の意地を見せてやるのじゃ」
「なめてもらっては困ると」
「このことを見せますか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「織田家を攻めますか」
「攻めるからには容赦はせぬ」
 鬼若子の顔だった。まさに。
「一切な」
「十倍以上の相手であっても」
「決して」
「その通りじゃ。臆してはならぬ」
 元親は家臣達に述べる。
「よいな」
「では腹をくくり」
「そのうえで」
「しかも夜討ちはせぬ」
 それもしないというのだ。
「昼に堂々と攻めるぞ」
「何と、昼にですか」
「昼に攻められるのですか」
「十倍以上の間に」
「そうされますか」
「そうでもしなくては意地は見せられぬ」
 だからだというのだ。
「よいな。攻めるぞ」
「ううむ、十倍以上の相手であっても」
「昼に攻めますか」
「己の姿を晒し」
「攻め。そして」 
 そのうえだというのだ。
「意地を見せるのじゃ」
「では生きるのですか」
「うむ」
 その通りだと答える元親だった。
「死ぬな。しかしじゃ」
「命を捨てて戦え」
「左様ですか」
「命はただ貰うものではない」
 元親は腕を組み真剣な顔で述べる。 
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