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戦国異伝

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第百話 浅井の活躍その二


「三好の兵達はあくまで公方様のみを狙っておるとも書かれておる」
「では我等は本来は相手にしたくない」
「そうなのですか」
「そうも書かれておる」
 明智にだというのだ。見れば文の字はかなり達筆なものだった。
「だからだというのじゃ」
「ではここはどうされますか」
「明智殿の仰る通りにされますか」
「ここは」
「そうじゃな」
 信行は一先考える顔になった。それから周りの者達にこう述べたのである。
「ここは明智殿の献策通りにしよう」
「そうされますか」
「ではここには僅かな兵を置いてですな」
「そのうえで」
「そうじゃ。回り込んでじゃ」
 そうしてだというのだ。
「本国寺の公方様をお救いに行くぞ」
「畏まりました。それでは」
「我等もまた」
 周りの者達も頷きだ。そうしてだった。
 信行は己が率いる兵の半分をこの場に置きそのうえで自身は残り半分を率いてそこから迂回して都の東から入ろうとする。そうして都の門のところまで来た。
 そのうえで都に入ろうとするがだった。その前に。
 僧兵達がいた。信行はその彼等を見て周りの者達にいぶかしむ顔で問うた。
「延暦寺の者か?」
「延暦寺は今都には来ておらぬ筈ですが」
「他の寺でしょうか」
「だとすれば」
 周りの者もいぶかしむ顔で首を捻る。その僧兵達を見れば。
 その頭巾は普通の僧兵達と違い黒い。それもその黒は。
「あの黒は」
「何かありますか」
「津々木の着ていた衣と同じじゃ」
 こう言ったのである。いぶかしむ顔で。
「同じ闇の色じゃ」
「闇の頭巾ですか」
「そういえば僧衣もそういう色ですな」
「妙な僧兵共ですな」
「あれは」
「妙な奴等じゃな」
 首を捻りながらだ。また言う信行だった。
「いや、妙どころではないぞ」
「といいますと」
「何かありますか」
「怪しい。異様なものを感じるな」
 それは津々木の記憶もあった。そのうえでのことだった。
「わしの先入観であればよいがな」
「とにかく。どうされますか」
「あの僧兵達、我等を睨んでおります」
「しかもです」
 それに加えてだった。その僧兵達は。
 それぞれ薙刀を持っているがその薙刀を構えて襲い掛かって来た。それを見てだった。周りの者達が信行に言った。
「勘十郎様、敵が来ております」
「こうなってはです」
「相手が何者かわかりませぬが」
「それでも」
「そうじゃな。敵じゃな」
 それは間違いなかった。そのうえでだった。
 彼は己が率いる軍勢をその謎の僧兵達に向けた。彼等にとっては思わぬ戦だった。
 その戦の指揮の中でだ。彼は言うのだった。
「この僧兵達の正体もわからぬが」
「それでもですな」
「ここでこの者達の相手をせずにはいられませんな」
「数も多いですし」
「参ったのう」
 采配を執りながらだ。信行は難しい顔にもなった。 
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