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戦国異伝

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第百話 浅井の活躍その一


                       第百話  浅井の活躍
 都では激しい戦が行われていた。信行は具足を着たうえで己が率いる軍勢に対して必死の形相で命を下していた。
 彼は都の外で戦っていた。目の前の三好の兵達にこう命じていたのだ。
「弓じゃ!弓を放て!」
「わかりました!」
「それでは!」
 兵達も信行のその言葉に応える。そうしてだった。
 実際に弓を一斉に放つ。だが、だった。
 三好の勢いは止まらない。信行の兵達に正面から向かい合って彼等も弓を放っていた。しかも彼等とは別にだ。
 三人衆が率いる兵達は都に入っていた。信行はそれを見て言うのだった。
「ううむ。都に入られたのう」
「既に民達は安全な場所に逃がしております」
「帝に公卿の方々も」
「それはよいことじゃ」
 このことにはこう返す信行だった。
「戦に関わりのない者まで巻き込んではならん」
「はい、そうですな」
「ではこれでいいですな」
「そうじゃ。それでじゃが」
 信行は都の中からも聞こえてくる喧騒を聞きながら言った。
「公方様はどうされておる」
「はい、本国寺に立て篭もっておられます」
「そうされています」
「そうか、あの寺にそのまま篭っておられるか」
 信行はその報告を聞いてまずは安心した。
「ならよいがのう」
「御自ら弓を手に取り戦っておられるそうです」
「そうされているとのことです」
「具足も着けられ」
「何と。御自身もか」
 このことにはだ。信行も驚きを隠せない顔で述べた。
「そうされているのか」
「はい、そうです」
「そうされているとか」
「案外勇敢ですな」
「敵に背を向けられてはおりませぬ」
「ふむ。そうか」
 そのことを聞いてだ。信行は言うのだった。
「では一刻も早くじゃ」
「公方様の御前に向かいましょう」
「そうしてお助けしましょう」
 家臣達も言いだ。そうしてだった。
 彼等は必死に戦っていた。だがそれでもだった。
 織田軍は三好の決死の応酬の前に都に入ることはできないでいた。それで信行は苦い顔で言うのだった。
「どうしたものか」
「この状況をどうするか」
「そのことですか」
「そうじゃ。都に入られておる」
 それでだった。
「この状況をどうにかせねばならんな」
「そのことですが」
 ここで将兵の一人が述べた。
「今こちらに明智殿が来られています」
「あの御仁がか?」
「いえ、文だけです」
 それを持っている足軽が来ているのだ。
「御覧になられますか」
「そうしよう。ではじゃ」
「はい、ここに」
 早速だった。信行の前に幕府、即ち足利家の足軽が来た。そこにはこうしたことが書かれいたのである。
「ふむ。ここは僅か兵を置くだけでよいとある」
「僅かですか」
「それだけですか」
「うむ。ここは守りじゃ」
 そしてだというのだ。
「都の門。ここからは東の門からや」
「都に入る」
「そうすべきだというのですな」
「そう書かれておる」
 信行はこう己の家臣達に述べた。 
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