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戦国異伝

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第九十九話 都での戦いその七


 信長は他の家臣達に対してあらためて告げた。
「では今すぐじゃ」
「今すぐですか」
「出陣ですか」
「皆具足を着てすぐに行くぞ」
 実際に迅速にだというのだ。
「よいな。それではじゃ」
「わかりました。それでは」
「今より」 
 家臣達も頷いてだ。そうしてだった。
 信長は具足の上に陣羽織を羽織るとそのまま馬に乗って出陣した。家臣達も慌しく続く。そうしてだった。 
 兵達もそれに続く。だが。
 その彼等の上から雪が降った。その雪を見てだ。
 原田が難しい顔になりだ。こう信長に問うた。
「殿、どうされますか」
「雪か」
「はい、これは積もるかと」
 雪は大きい。しかも数が多かった。
 その雪達を見てだ。原田は言うのである。
「どうされますか」
「九郎、御主はこれで止まるか」
「それがしはですか」
「そうじゃ。今ここで止まるか」
 信長は前を向きながら原田に問う。
「雪が降ったからといって今都に進むのを止めるか」
「それは」
「止めぬな」
「ここで止めては何にもなりませぬ」
 これが原田の返事だった。彼は主にはっきりと述べた。
「都は今危ういです。勘十郎様だけではやはり」
「頼りないな」
「はい、勘十郎様はこう言っては何ですが」
 どうかとだ。原田は言うのだった。
「戦は得意ではありませぬ故」
「数があってもな」
「やはり。都を確かに守るなら」
 それならばだというのだ。原田もまた。
「ここで止めては何にもなりませぬ」
「そういうことじゃ。わかっていればよい」
 信長は前を見ながら楽しげに笑った。そうしてそのうえでだった。
 彼は馬の手綱を強く握ってだ。そのうえで言うのだった。
「では行くぞ」
「それでは」
「帝と民、それに公方様が心配じゃ」
 信長が挙げたのは義昭だけではなかった。そして第一に挙げたのは帝だった。そうしてだったのである。
「すぐに進むぞ」
「都までは三日かかりますな」
「二日じゃ」
 また原田に言った。
「二日で都に着くぞ」
「三日の道程を二日で、ですか」
「行こうと思えば行ける」
 それができるとだ。やはり前を見て言う。
「この雪でもな」
「では肝心なのは」
 今度言ってきたのは羽柴だった。馬の操りも中々上手になっている。
「飯ですな」
「ほう、l飯だというか」
「腹が減っては戦ができませぬ」
 羽柴は笑って俗に言われている言葉を述べた。
「そして身体もあったまります」
「だからじゃな」
「はい、飯は気合を入れて食いましょう」
 こう言うのだった。
「都までの道は」
「そうじゃな。飯は食わねばな」
「幸い都までの道は店も多いので飯を買うには苦労しませぬ」
 これは織田家にとって都合がいいことだった。やはり飯がないとどうにもならない。腹が減っては、というのは真実なのだ。 
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