戦国異伝
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第九話 浮野の戦いその十一
「優れた者達が必要ということだ。御主等の力天下に役立ててみよ」
「我等の力を」
「天下に」
「御主等の力はそれに足る。足るからこそ声をかけておるのじゃ」
世辞ではなかった。その証拠にだ。信長の目は今は笑ってはいない。二人をにこりともせずに見てだ。そのうえで声をかけているのであった。
「そういうことじゃ」
「では」
「我等の力を」
「そうじゃ。どうじゃ」
「ううむ」
「では我等はこれより」
信長に対してだ。こう問うのであった。
「信長様の家臣ですか」
「首を討たれるのではなく」
「首?ははは、馬鹿を申せ」
信長は今の堀尾の言葉にだ。破顔して笑ってみせたのだった。
そのうえでだ。こう言ってみせた。
「それ位なら最初からここには呼ばぬ」
「左様ですか」
「ではやはり」
「それでどうじゃ」
信長はまた彼等に問うた。
「わしの配下になるか」
「はい、それではです」
「ただ。一つ御願いがあります」
二人は畏まった態度になって信長に言ってきたのであった。
その言葉にだ。信長も目の光を強くさせたのだった。
そのうえでだ。少し考えてから二人に対して言葉を返した。
「伊勢守の家族と。そして岩倉にいる他の者達もか」
「左様です」
「是非御助命を」
二人が信長に頼むのはこのことであった。
「それをお聞き取り下されば」
「我等。信長様の下に参ります」
「安心せい」
まずはこう返した信長だった。
「既に伊勢守は尾張を出て剃髪することになった」
「では」
「御家族も岩倉の他の者達も」
「そうじゃ。最初から何の興味もない」
まさにそうだというのであった。
「そういうことじゃ」
「左様ですか、それなら」
「我等喜んで信長様にお仕えします」
「天下は広い」
その二人の言葉を受けてだ。信長はまずは笑ってみせた。
「御主等の力、頼りにさせてもらうぞ」
「はっ、それでは」
「是非共」
こうして山内と堀尾があらたに家臣に加わった。そして他の伊勢守の家臣達も足軽達もだ。ことごとく信長の下に入ったのであった。
信長はそれを受けてだ。家臣達に対して告げた。
「では、じゃ」
「はい」
「さすれば」
「次は犬山よ」40
鋭い声で周りに居並ぶ家臣達に話した。もうそこには山内と堀尾もいる。
「よいな」
「はい、では今すぐに」
「向かうとしましょう」
家臣達は一斉に言う。しかしだった。
その中にいる山内と堀尾はだ。驚きを隠せずに信長に対して問う。
「今からですか」
「もうですか」
「そうじゃ。明日出陣じゃ」
こう何でもないように返す信長だった。
「休憩の後でな」
「一日休んでもうとは」
「これまた早い」
「兵はまだ疲れてはおらぬ」
まずはこのことを指摘する信長だった。
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