戦国異伝
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第八十六話 竹中の献策その一
第八十六話 竹中の献策
野洲川での勝利、そして伊賀が手に入ったことはすぐに信長の下にも届いた。信長は摂津においてその話を受けてだ。満足した笑みでこう言うのだった。
「よし、よいぞ」
「そうですな。遂に伊賀も手に入りましたな」
「そして六角も降りました」
竹中と生駒の二人の軍師がだ。信長に応えて言う。
「これで播磨、大和、丹波に続いてです」
「その伊賀も無事収まりました」
「そうじゃな。忍の者達が気になるがのう」
ここでこうも言う信長だった。
「じゃが六角は降った」
「はい、それで六角の当主ですが」
「どう為されますか」
「既に出家したそうじゃな」
その文を見ながらだ。信長は二人の軍師に答えた。
「それならばじゃ」
「それで宜しいですか」
「出家してしまえばですか」
「それでよい」
また言う信長だった。
「わしはそれで済めば命まで取らぬわ」
「畏まりました。では六角の家臣達も召抱え」
「そうされますか」
「これまでと同じじゃ」
信長の返答は変わらない。
「天下の為に働いてもらう」
「ではその様に」
「六角の家臣団にも伝えるのですね」
「そうする。六角氏にしてもじゃ」
そのだ。彼等もだというのだ。
「わしに仕えるのなら喜んで迎え入れるぞ」
「前から思っていましたが」
竹中は信長を見てだ。こう言ってきた。
「殿は誰であろうと迎え入れられるのですか」
「来る者は拒まぬ」
実際にそうだとだ。笑顔で竹中に答えた信長だった。
「わしはな。例え相手が誰であろうもじゃ」
「左様ですか」
「敵味方に分かれていても今が違えばそれでよい」
こう言ってだ。信長はその竹中を見てまた述べた。
「御主にしろそうではないか」
「確かに。それは」
「誰であろうとよいのじゃ。わしは来る者は拒まぬし優れた者ならばじゃ」
「重く用いられますか」
「そうするぞ。では六角氏、そして他の者達もじゃ」
具体的に言えば丹波の波多野氏や新たに所領となった国々の者達である。
「迎え入れて用いるぞ」
「その中で、ですが」
ここでだ。生駒が信長に強い口調で言ってきた。
「播磨からですが」
「小寺官兵衛じゃな」
「はい、あの者についてですが」
「相当な切れ者の様じゃな」
「そう聞いております。天下でも指折りの智恵者だとか」
「面白いのう。ではその官兵衛にも会おうぞ」
信長は今から期待する顔になっていた。そうしてだ。
彼はあらためてだ。己の前に広げられている地図を見て言うのだった。見ればその地図は摂津、河内、和泉の三国が書かれていた。今信長が攻めている国々だ。
その地図を見ながらだ。また言う信長だった。
「さて、播磨と大和からも軍が来ておる」
「勘十郎様と久助殿の軍ですな」
今言ったのは池田だった。
「お二人の軍もまた」
「そうじゃ。既に勘十郎の軍は摂津に入っておる」
信長はこのことも把握していた。
「その軍勢と合流することも考えておく」
「それがよいかと」
竹中がすぐに答える。
「そしてそのうえで」
「うむ、三好の軍勢とあたる」
「してです」
今度は生駒が言ってきた。
「三好と共にですが」
「本願寺じゃな」
「まだ動きがわかりませぬ」
そうだというのだった。
「果たしてどう動くのか」
「本音を言ってよいか」
信長はここで周りにこう問うた。
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