八条学園怪異譚
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第四話 ターニングポイントその十三
「そういうのは御免だから」
「そうよね。やっぱり」
「完全装備でいきましょう。流石に十字架はいらないと思うけれど」
「いえ、やっぱり」
ここで愛実は持ち前のしっかりとしたところを発揮した。そのうえでこう聖花に返した。
「そっちも必要ね」
「じゃあ教会も寄る?」
「ほら、何か普通科で凄く勉強ができて奇麗な顔の人がいるらしいじゃない」
「確か佐藤君って言ったわね」
「あの人のお家教会よね」
「学校の近くの画廊も一緒にある」
「そこの教会で十字架も買わない?」
こう聖花に提案するのだった。
「ついでだから」
「十字架も買うの?」
「いらないっていう話だったけれど」
だがそれでもだというのだ。
「何か気になってね」
「キリスト教もなの」
「神様も仏様も多い方がよくない?」
愛実は極めて日本的な思想から聖花に言う。こうした考えは多神教であり複数の宗教が共存しているからこそだ。
「そう思うけれど」
「そうね。それはね」
そして聖花も日本人だ。それならばだった。
「その通りね」
「そうでしょ。だからね」
「ええ、それじゃあ教会にも行くのね」
「そうしましょう。そういえば」
ここでこんなことも言う愛実だった。
「あの佐藤君ってね」
「あの子がどうしたの?」
「凄い奇麗な顔してるわね」
その教会にいる彼のことも話すのだった。
「まるでお人形さんみたいに」
「日本人とイタリア人のハーフらしいわね」
聖花も彼のことは知っていた。それでこう答えるのだった。
「だからああした顔なんだって」
「金髪で目は黒くてね」
「そう。顔立ちも凄く整ってて」
「本当にお人形さんみたいじゃない」
またこう言う愛実だった。
「表情が全然ないのが気になるけれど」
「確かに。奇麗だけれど」
「喋ってるの聞いたけれど全然感情がないの」
「喋り方も?」
「何かね。抑揚がなくて」
「ええと。アニメのキャラのあの」
「あれでしょ。エヴァンゲリオンの綾波レイ」
愛実がこのあまりにも有名なアニメのキャラクターの名前を出した。今でも誰でも知っていると言えるキャラクターだ。
「あのキャラクターみたいな感じなの」
「ううん、表情もそうだし」
「何かそういう感じもいいって人気があるみたいよ」
「表情がないのに?」
「ミステリアスって思われてね」
それで人気があるというのだ。その彼は。
「そうみたいなの」
「世の中って思わないところから人気が出るのね」
「そうみたいね。私はね」
「愛実ちゃんは?」
「確かに奇麗だとは思うけれど」
首を少し捻って彼のことを話す。
「けれどそれでもね」
「それでもなの」
「うん。もっと明るくて表情が豊かでね」
愛実は聖花に自分の好みの男の子のタイプを言っていく。
「背が高くて。特撮俳優みたいな感じの子がいいのよ
「特撮なの」
「そう、特撮ね」
そうしたドラマに出ている感じがいいというのだ。
「私小さいからね。背が高い子が好みなの」
「小柄だから?」
「小柄だと何か気になるのよ」
背がだ。コンプレックスを感じてどうしてもそうなるというのだ。
「だからなの」
「佐藤君も結構背が高いけれどね」
「お人形さんみたいだから」
先程とは別の意味での人形だった。
「ちょっとね。交際とかの相手には」
「考えられないのね」
「うん、あまりね」
こうした話もしてだった。愛実は聖花と一緒に教会にも向かった。そこで十字架も買いいよいよ幽霊の存在やその性格を確かめに行くのだった。
第四話 完
2012・8・3
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