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八条学園怪異譚

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第三話 聖花の人気その四


「五回終わってこれって」
「ヒット二十本ねえ」
「あんまりなんだけれど」
「ヤクルトにとってはいいことだけれどね」
 今日の横浜の相手はヤクルトだった。そのヤクルトにこれ以上はないまでに叩きのめされていたのだ。しかも現在進行形だった。
 そして店員の小柄で黒いショートヘアの可愛い娘がだ。憮然とした顔でだった。  
 スコアボードの点数を替えていた。その点数は。
「四点って」
「満塁ホームラン打たれたのね」
「ちょっとなあ。無残っていうか」
「これで十九点」
「どれだけ打たれるのよ」
 他の球団のファンである二人から見てもだった。この展開は。
「見ていられないわね」
「これは今年も最下位ね」
「これだけ打たれてばね」
「しかも打たないし」
 しかも守備も悪い。それが今の横浜だった。
 店員の顔は憮然としている。だが、だった。
 その応対は丁寧でだ。二人に頭を下げてこう言ってきたのだった。
「いらっしゃいませ」
「はい、予約の者ですけれど」
「十八番のお部屋ですけれど」
「ああ、番長ですね」
 ここでこう返す店員だった。
「今日は全然駄目ですね、あの人」
「ああ、先発三浦だったのね」
「そうみたいね」
 二人は店員の言葉を聞いてまた囁き合った。その小柄だが誰が見てもそう言うしかない奇麗な顔を見つつ。
「調子悪い時は打たれるからね」
「そうそう」
「打たせて取っても守備が悪いとね」
「ヒットになるから」
 そうしたことを囁いてからだ。そのうえでだった。
 二人はその店員にあらためてこう言ったのだった。
「あの、それで」
「十八番は」
「はい、お名前は」
 二人は店員に応えて自分達の名前を名乗った。そうしてだった。
 その店員に笑顔で案内されてその部屋に入った。するとそこには。
 もう一年生達が集まっていた。かるた部、彼女達の部活のメンバーに。
 美術部の面々もいた。しかしだった。
「男の子少ないわね」
「そうね。四人しかいないじゃない」
 両方合わせて十五人程だがそれでもだった。男子生徒はというと。
 一目で数えられる程しかなかった。四人だ。それを見てだった。
 愛実は少し苦笑いになってこう聖花に言った、
「かるたも美術もどうしても女の子が多くなるけれど」
「しかも商業科だとね」
「やっぱりこんな割合になるのね」
「十五人の中で四人」
「男の子圧倒的有利ね」
「というかここ花園になってない?男の子達にとっては」
 今の時点で十七人でそのうちの四人だとだ。やはりそうなる。
 そのことを確かめてからだ。愛実はかるた部の面々に言った。
「あの、先輩達は」
「うん、まだなの」
「まだ来られてないの」
 かるた部の女の子達が答えてくれた。
「メールでもうすぐ来られるって言ってるけれどね」
「それでもね」
「そうなの。もうすぐなの」
「うん、だから私達は今はね」
「こうして私達だけで話しているのよ」
 女の子達が言うとだ。ここで。
「それで飲んで食べて」
「そうしてるの。歌ってね」 
 つまり楽しんでいるというのだ。 
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