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八条学園怪異譚

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第二話 嫉妬その十五


「それで終わるわよね」
「うん、死ねば」
「人と人の関係はそうなの」
「すぐに変わるのね」
「あっという間にね。色々と変わるわ」
「じゃあいじめられっ子がいじめっ子になるのも」
「そう。きっかけがあればあっという間よ」
 そうなるというのだ。
「簡単にね」
「そうなの。けれど」
「愛実ちゃんがいじめっ子になるのはっていうのね」
「そんなこと有り得ないわ」
 口を弱々しい波型にさせてだ。愛実は答えた。
「人をいじめるなんて」
「まあ愛実ちゃんはそんな娘じゃないわね」 
 愛子は愛実の性格を完全には知らなかった。そして人は誰でも心に光と闇を併せ持っていることを。それ故に言うのだった。
「いじめとかしないわよね」
「できる筈ないから。私身体は小さいし」
 まずはその小柄さからの言葉だった。
「力も弱いし運動神経だってないし」
「だからっていうのね」
「気も弱いし。それで喧嘩なんて」
「できないっていうのね」
「絶対に。できる筈ないわ」
 こう言うのだった。
「そんなことはとても」
「愛実ちゃんは優しい娘だから」
 愛子は愛実の劣等感も闇も見てはいなかった。見えなかった。
 それでだ。こう言うのだった。
「絶対にね。そんなことはね」
「出来ないから」
「安心してるわ。そのことは」
「何で私がいじめとか」
「けれどね。このことは覚えておいて」
 優しいが確かな声でだ。姉として妹に告げた。
「人と人の関係はね」
「すぐに変わるのね」
「ええ、そうよ」
 このことは言うのだった。
「あっという間にね」
「きっかけさえあれば」
「それで変わるから」
「だから。気をつけないといけないのね」
「友達と友達の関係もね」
 それもだというのだ。
「すぐに壊れるのよ」
「じゃあ私と聖花ちゃんも?」
「そう。ちょっとしたことでね」
 本当にだ。それでだというのだ。
「あっという間に壊れるのよ」
「そうなの」
「だから気をつけて」 
 愛子は真剣だった。妹に心から忠告していた。
「どんな関係もすぐだから」
「まさかと思うけれど」
「まさかって?」
「お姉ちゃんと私もそうなのかしら」
「家族の関係ね」
「それも変わるの?すぐに」
「ええ、そうよ」
 それもだと言うのだ。愛実が友情と共に絶対のものだと思っているそれもだ。
「本当にすぐにね」
「そうなの」
「そう。だから気をつけてね」
 姉は妹にここでも真剣な面持ちで話す。
「壊れて困るのはね」
「私だから」
「そう。愛実ちゃんもそうしたこと大切にしたいでしょ」
「うん」
 愛実は姉の言葉に頷きながら脳裏に聖花、そして家族の笑顔を思い浮かべた。皆彼女にとってはかけがえのない存在である。 
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