八条学園怪異譚
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第二話 嫉妬その三
「それもかなりね」
「そうね。確かに広い大学よね」
「町位はあるわよね」
「ええ、それ位は絶対にあるわ」
「それ位大きいわよね」
「八条高校もよ」
愛子は頷く愛実に彼女がこれから行く大学のことも話した。
「凄く広いわよ」
「そういえば何か」
「色々な学科もあってね」
愛実達がこれから通う商業科だけではなくだ。
「他にもあるわらね」
「だからよね。グラウンドだって」
「一つじゃないからね」
「体育館も。幾つもあって」
「プールだってそうよ」
「とにかく大きい学校よね」
「野球部なんか専用のホームグラウンドまであるから」
そうしたものまであるというのだ。
「だからね。広いし設備もいいし」
「何でもあるのね」
「いい高校だからね。三年間楽しんでね」
「うん、そうするね」
「ましてや愛実ちゃん一人じゃないから、最初から」
微笑んでだ。愛子は妹にこのことも言った。
「聖花ちゃんもいるからね」
「聖花ちゃんが」
「そう。だから安心していいわ」
こう妹に言ったのである。
「寂しくもないから」
「うん、聖花ちゃんね」
「いい娘だし」
「そうね。本当にね」
素直な返答ではなかった。何処か陰のある感じの返答だった。その返答の後で愛実はこうも言ったのである。
「聖花ちゃん。真面目だし」
「何ていうか暗いものがないわよね」
「ええ、そうね」102
そうだとだ。愛実は少し陰のある感じのまま姉の言葉に応える。
「あれだけ頭がよくて可愛いのに」
「嫌味なところもなくて」
「自慢とかしないのよね」
「そういう娘っていないわよ。人ってどうしてもね」
長所を自覚すればだ。どうなるかというのだ。
「自惚れたりしてね」
「嫌なこと言ったりするわよね」
「そう。自信がね」
それがだというのだ。
「裏返しになるのよ。他にはね」
「他にはって?」
「劣等感。前に言ったけれど」
この劣等感のことをだ。愛子はまた愛実に対して言った。
「これも自信の裏返しなのよ」
「劣等感も?」
「そうよ。自分に自信があるから」
だからだというのだ。
「自分が他人より劣っていることがね」
「そのことが?」
「受け入れられないでね。それでね」
「劣等感になるの」
「そうなのよ」
愛子はこう話した。
「だから余計に厄介なのよ」
「ううん、そうなの?」
「愛実ちゃんは自信あるものある?」
「私に?」
「そう。お料理とかお裁縫とかは自信があるでしょ」
「ええ、まあ」
そうしたことは得意だ。子供の頃からできていて失敗をしたことがない。それに掃除や食器洗いにも自信がある。
そうしたことは言えた。そして愛実も実際に言った。
「ちゃんとね」
「自信があるわね」
「そうしたことはね」
「人は誰だって得意なことがあって」
そうしてだというのだ。
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