八条学園怪異譚
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プレリュードその四
「それで量も考えてるんです」
「そういうことですね。実はうちも」
「あっ、そちらのお店もですが」
「商店街は違いますが」
商店街も所属形式となっている。それ故の言葉だった。
「やっぱり八条学園が近いので」
「それで、ですか」
「はい、そうです」
こう答えるのだった。
「それでなんです」
「成程。パンも大きいんですね」
「味が第一ですがとにかく大きさですね」
「そうですね。学生さんは量があってこそですからね」
「そうそう。しかも素材は安く手に入られますし」
八条町は実質的に八条グループ、八条学園を経営している世界的グループの城下町である。その八条グループから素材は安く買えるのだ。
それでどの店も値段を安くすることができる。このことも大きかった。
「後は味だけですからね」
「そう思うといいですね」
「はい、本当に」
こうした話を店の責任者同士で笑顔で話す。そしてだった。
実際にそのトンカツにソースをかけてから食べてみる。その味は。
「美味しい」
「ええ、本当にね」
末娘の言葉にだ。母が笑顔で応えた。
「これ、美味しいわね」
「うん、こんな美味しいトンカツはじめて」
「お肉の味もいいし」
それにだった。
「衣だってね」
「トンカツなのにあまり油っこくない感じがするよ」
聖花は食べながら言う。そのトンカツを。
「どんどん食べられるよ」
「ええ。こんなトンカツはじめてよね」
「どう?美味しい?」
愛実は楽しげな顔でトンカツを食べている聖花に尋ねた。
「そのトンかツ」
「だからこんな美味しいトンカツないよ」
聖花は満面の笑みで返す。
「凄く美味しいよ」
「そうでしょ。うちのお店って何でも美味しいけれど」
「特になの」
「このトンカツが一番美味しいの」
まさにだ。店の看板だというのだ。
「だからどんどん食べてね」
「うん。お腹一杯食べるよ」
「それとね。聖花ちゃん」
愛実は自分の店のトンカツを食べていく聖花にだ。笑顔で言うのだった。
「これからも来てね」
「あっ、前言ってたよね」
ここで話題を変えてきたのである。聖花にもわかった。
「これからもずっとよね」
「うん。お友達でいてくれる?」
「勿論だよ」
屈託のない笑顔でだ。聖花も返した。
「うちのパンも食べてね」
「そうさせてね。それでトンカツやパンがなくても」
「そうしたこと関係なくだよね」
「お友達でいよう」
愛実は聖花を見て言う。
「ずっとね」
「うん、私も」
聖花もだ。笑顔で言った。
「これから宜しくね」
「私達何があってもお友達だよ」
愛実はまた言う。
「私聖花ちゃんのこと何があっても大切にするから」
「私もよ。愛実ちゃんのこと何があっても信じるから」
お互いに言い合う。それは誓いだった。
「だから私のお家にも来てパン食べて」
「うん、そうするね」
こうした話をしてだ。二人はより親しくなった。そして実際にだった。
愛実は家族、今度は彼女の家族が聖花の家がやっているパン屋に来た。そうして店のパンを買って食べる。聖花と愛実は聖花の店がある商店街の近くにある川辺の土手に来てそこの川を前にして座ってだ。そのうえでパンを食べながら話すのだった。
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