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八条学園怪異譚

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第一話 湧き出てきたものその十一


「本当にね。そうしてね」
「ええ。そして何かあった時は」
「助けてあげてね。私がいなくても」
「若し私がそうしなかったら」
「あの娘壊れてしまいかねないから」
 友達が壊れるのは見たくない、美紀は人として当然の感情から話した。
「だから本当にお願いね」
「何があってもよね」
「うん。その時はそうしてあげてね」
「わかってるわ。愛実ちゃんは私にとって一番大切な友達だから」
 強い確かな声でだ。聖花も答える。
「そうするわ」
「そうしてね。本当に」
「友達ってそういうものよね」
 微笑んでだ。聖花はこんなことも言った。
「友達の為には何があっても」
「助けるものだからね」
「そうするわ。約束するから」
「指切りげんまんする?」
「指切りげんまん?」
「そう。それする?」
 こうだ。美紀は聖花に言ってきたのだ。
「これからね」
「そうね。それじゃあ」
 聖花もだ。美紀のその言葉に頷いた。
 そのうえで自分の右手を出す。美紀もその手をゆっくりと出した。お互いにその子指を出している。そしてその小指を絡め合い。
 約束をしたのだった。その言葉は。
「絶対にね」
「うん、何があってもね」
「愛実ちゃんをお願いね」
「絶対に何とかしてあげるから」
 聖花はにこりと笑って美紀に答えた。
「あの娘が困っている時は」
「愛実ちゃんもきっとね」
「私が困ってる時はよね」
「そう。何かしてくれる筈だから」
 だからだというのだ。
「助けてあげてね」
「そうするね。私達本当に」
 聖花は未来に明るく楽しいものを見て話した。
「高校でも一緒になれたらいいって思ってるからね」
「本当に愛実ちゃんのことが好きなのね」
「お友達だからね」
 それも第一のだ。そう思わない筈がなかった。
「私頑張るからね」
「学校のお勉強も?」
「うん、それもね」
「そっちは大丈夫じゃないの?」
 聖花は成績優秀だ。本当にクラスで一番だ。それでは八条高校の商業科に入れるのではないかというのだ。美紀はこのことは絶対に大丈夫だと見ていたのだ。
「まだ受験はかなり先だけれどね」
「確かにそうだけれどね。それでもね」
「それでもって?」
「受験は何があるかわからないし」
 それにだというのだ。
「難しい問題がいきなりとか」
「そういうこともあるっていうのね」
「そう。あるからね」
「それじゃあ赤本を勉強してみたら?」
「赤本って?」
「そう。その学校の過去の試験問題を何年分か集めてる問題集なのよ」
「そんな問題集もあったの」
 聖花ははじめて知ったといった顔で美紀に言葉を返した。だが美紀は聖花のその言葉を聞いて首を捻ってからこう応えたのだった。
「本当に知らなかったの?」
「ええ、そうだけれど」
「そんな筈ないじゃない」
 こう聖花に言ったのだ。呆れている顔で。
「塾には絶対にあるし」
「塾にある問題集もチェックしてるけれど」
「あるわよ。塾の本棚とかよくチェックしてみて」
「そうしたらあるの?」
「絶対にあるわよ」
 こう言うのである。
「ない筈がないじゃない」
「そうなの」
「全く。聖花ちゃんって頭はいいけれど」
 だがそれでもだとだ。聖花に言うのである。 
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