八条学園怪異譚
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第十一話 池の怪その十三
「そっちだよ」
「ソフトバンクなのね」
「そう、そのチームになるよ」
「まあ巨人じゃないといいけれどね」
「そうよね」
愛実だけでなく聖花もそれで納得する。
「とにかく。今回は野球じゃないし」
「それならね」
二人もこれで頷く。そうした話をしてだった。
「今日はこれで」
「また、ということで」
「興味がないならいいよ」
河童もそれで話を終わらせる。
「それじゃあね」
「うん、悪いけれど」
「それじゃあ」
「帰るのだな」
日下部も二人に問う。
「そうするか」
「お池のことはわかりましたし」
「それにお池の中に出入り口がないんでしたら」
それならというのだ。
「もう特にいる理由ないですし」
「今日はこれで」
「なら帰って休むといい」
日下部は二人にこう告げた。
「また今度だ」
「はい、それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
二人は日下部の言葉に頷き彼と河童、そして招かれてきたキジムナー達の見送りを受けてそのうえで学園を後にした。また一つ学園の謎がわかったのだった。
その帰り道愛実はこう聖花に言った。今の帰り道は二人だけだ。
その夜道でこう聖花に言ったのである。
「これから帰ったらね」
「寝るの?」
「うん、チロの散歩も行ったし」
それは学校に来る前に済ませていた。
「だからね」
「そう。それじゃあ後は」
「寝るだけ。お風呂も入ったし」
「あっ、もう入ったの」
「それは聖花ちゃんもよね」
愛実は聖花に顔を向けて彼女もだと返した。
「そうよね」
「うん、帰ったらすぐに寝られる様にしてるから」
「パン屋さんって朝が早いからね」
「そう、だからね」
聖花の方もその通りだと答える。
「もうお家に帰ったら休むわ」
「パン屋さんも大変ね」
「食堂だってそうでしょ」
「ううん、そういえばそうかな」
「色々なお料理を一通りできないと駄目だから」
「そうそう、それは絶対なのよ」
食堂だからだった、この点は。
「トンカツにカレーにおうどんに丼に」
「多いわよね」
「ハンバーグとかもね」
洋食系が多いがそれ以外にもだ。
「ラーメンに焼きそばに」
「最近水餃子もはじめたっていうけれど」
「結構中国の北の方から来てるお客さんも多くて」
「東北とか華北の?」
「そうなの。焼き餃子って中国じゃ東北の一部の料理らしくて」
中国では主流ではないのだ。日本で焼き餃子が主流になったのは満州国で日本人が焼き餃子を食べた靖だと言われている。
「実際のところは北は水餃子なのよ」
「あっちになるのね」
「それで南、広州とかは蒸し餃子になるの」
「蒸し餃子は食堂じゃちょっと無理よね」
「水餃子は茹でるだけだけれど」
だから蒸すより作ることが楽だというのだ。
「その辺りが難しいのよ」
「そうなのね」
「そう、美味しいわよ」
「じゃあ今度そっちのお店行っていい?」
聖花は水餃子を食べたいと愛実に言った。
「私あれ結構好きなのよ」
「あっ、そうだったの」
「そうなの。焼き餃子も好きだけれどね」
「じゃあ今度来てね」
「楽しみにしてるから」
帰り道はこうした話をした。二人は学校の外、それぞれの家のことも考えていた。女子高生の考えることは実に多かった。
第十一話 完
2012・10・3
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