八条学園怪異譚
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第十一話 池の怪その十二
「しかし干上がらないといいからだ」
「水のないところに住んでるんですね」
「寝起きとかは」
「そうなっている。芥川の作品の様な町もあるかも知れない」
「あれそのまま人間の世界ですけれど」
聖花はすぐに芥川のその作品のことを話した。
「病んでますけれどそれでも」
「自殺する直前だから病んでいたのは当然だがな」
「それでもそうした河童の町はですか」
「あるのかも知れない」
「あるよ」
河童の方から答えてきた。
「河童の首都だね」
「そういうのもあるのね」
「うん、僕達はこの学園に一族で住んでるけれどね」
河童の一人が愛実に答えている。
「首都もあるんだよ」
「というか河童の国があるのね」
愛実は首都という言葉からこのことを察した。
「そうだったのね」
「狐君や狸君も国を持ってるよ」
「えっ、そうなの」
「あっ、中国の話だけれど」
河童の言葉に首を傾げさせた愛実に聖花が横から言ってきた。
「狐の社会って人間の世界に似てて試験とかもあるのよ」
「テストあるの?狐の世界にも」
「あるの。科挙みたいなのがね」
「科挙ってお役人になる試験よね」
愛実もこのことは知っていた。中国では古来官吏を登用する為にこの科挙おという試験を置きそれの合格者を官吏にしていたのだ。
それの様なものがあると聞いてこう言う愛実だった。
「人間の世界みたいね」
「そうなの。中国の狐の世界はね」
「何か凄いわね」
「ただここは日本だからね」
また河童が二人に言ってくる。
「そうした科挙とかはないから」
「そうなの」
「平安時代みたいな社会だよ、狸君のところもそんな感じかな」
「狸もなの」
愛実はまた首を捻るがここでまた聖花が教えてくれた。
「さっき話に出た四国の団三郎狸のことだと思うわ」
「団三郎狸?」
「狸のボスみたいな感じで四国にいたらしいのよ」
聖花は狸のことも知っている様だ。
「狸の大親分でね」
「仕切ってたのね」
「そういう感じだったのよ」
「ううん、妖怪にも国があるのね」
愛実は腕を組んでこのことについて述べた、
「面白いわね」
「面白いわよね、確かに」
「人間みたいでね」
「そうよね」
二人でも話をした。その二人にまた河童が言ってくる。
「それで相撲見る?もうすぐキジムナー君達が来るけれど」
「その相撲を?」
「それを見ようかっていうのね」
「そう。どうかな」
「とはいってもね」
「私達あまり相撲に興味がないから」
これが二人の返答だった。
「見たいかどうかって言われても」
「特に」
「そうなんだ」
「野球ならいいけれどね」
「それかバスケなら」
二人が言うのはそちらだった。
「ただ巨人は嫌だから」
「そのユニフォームは着ないでね」
「ああ、妖怪の世界でも巨人は評判が悪いから」
妖怪の世界にも良識があるということである。巨人は人類社会においてマスコミの業病の象徴の一つなのだから。
「僕達は阪神になるよ」
「キジムナーさん達はどうなるの?」
「沖縄で南方だからソフトバンクだよ」
その球団になるというのだ。こう愛実に話す。
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