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八条学園怪異譚

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第十話 大学の博士その五


「噂は聞いていると思うがな」
「何でも百歳超えてるんですよね」
「そう聞いてますけれど」
「百二十歳だったか」
 青年は首を少し捻って述べた。
「とにかくその年齢についてはだ」
「よくわからないんですか」
「実際のところは」
「少なくとも百歳を超えている」
「実際にそうなんですか」
「百歳は超えてるんですか」
「正確な年齢は俺もわからないがな」
 だがそれは間違いないというのだ。
「そうした人だ。確かに風変わりだが」
「それでもですよね」
「相当な学識があるんですよね」
「かなりのことを知っている」
 このことも間違いないという。とにかく博士はかなりの人物、あらゆる意味でそうであることは間違いないというのだ。
 こうした話をしてから青年が扉を開けた。そしてだった。
「邪魔をする」
「おお、君か」
 すぐに甲高い感じの老人の声が返ってきた。二人はその声を開けられた扉の前で聞いた。
「何の用じゃ?」
「博士に会いたい娘達がいる」
「わしにか」
「いいだろうか」
「可愛いのかのう」
 如何にもという返事が返って来た。
「その娘達は」
「浮気か」
「いやいや、わしにとっておなごは婆さんだけじゃが」
「それならどうして可愛いと聞く」
「おなごとアイドルはまた違うではないか」
 二人は研究所の中からこうしたやり取りを聞いてる。聞いてはいるがそれでも声のもう一方の主の姿は見ていない。
「だからじゃ」
「奥さんは一人か」
「おなごは一人じゃ」
 妻だけがそういう相手だが他の女の子はというのだ。
「見て楽しみたいからのう」
「それでか」
「そうじゃ。それでどういう娘達じゃ」
「結構だな」
 これが青年の返答だった。
「そのことは保障する」
「そうか。まあどちらにしてもわしに用があるのじゃな」
「そうだ」
「なら会おう」
 どちらにしてもそうするというのだ。
「案内してくれ」
「わかった。ではな」
 青年は声に頷いた。そして。
 二人の方にあらためて顔を向けてこう言って来た。
「入ってくれ」
「はい、じゃあ」
「お邪魔します」
 二人は青年の言葉に頷きそのうえで研究室に入った。研究室の中は思った以上に広い。
 奥は何処までもある感じで本棚が何処までも並んでいる。まるで図書館だ。
 そして入り口の近くに席がありそこに白い髪と髭だらけの顔、マルチーズの様な顔の小柄な、青年の四分の一位にしか見えない小柄な老人が座っていた。
 その老人がマルチーズの様な顔にある黒い目で二人を見ながらこう言ってきた。
「ふむ」
「あの、悪魔博士ですよね」
「八条大学教授の」
「うむ、そうじゃ」
 老人はその通りだと答える。 
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