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八条学園怪異譚

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第八話 屋上の騒ぎその九


「可愛いって」
「そんなの初耳だけれど」
「愛実ちゃんが知らないだけで私いつも男の子に愛実ちゃんを紹介して欲しいって言われてるのよ」
 愛実の知らない事実だった。小柄で可愛らしい顔立ちでしかも胸も大きい。確かに男子生徒には人気の出る感じだ。
「面倒見もよくねお姉さんみたいだって女の子達からもね」
「そうだったの」
「私なんかよりもずっと人気あるから」
 聖花も嫉妬していたというのだ。愛実に対して。
 聖花はこのことをそうしたことを思っていた自分と向かい合いながら話していく。そうしながらのことだった。
「それでなのよ」
「そうだったの」
「そうよ。愛実ちゃんが私に対して思っている以上に」
「私に対して」
「羨ましいって思ってたから」
 聖花は唇を噛み締める様にして言う。
「だから」
「私のこと羨ましいって思ってたなんて」
「思わなかった?」
「そんなの思う筈ないじゃない」
 愛実は驚きを隠せない顔で聖花に言う。
「だって。私何もできないのに」
「できるじゃない。お料理もお裁縫もお掃除も」
 聖花は愛実の清潔さも指摘する。
「お洗濯だって忘れないでしょ」
「それは当然のことだから」
「それを当然って言えるのがよ」
 それ自体がだというのだ。
「もう凄いのよ」
「そうなの」
「そうよ。それに愛実ちゃん算盤凄いじゃない」
 商業科では必須である。科目としてそあるのだ。
「もう簡単に弾いて計算してくじゃない」
「算盤って?」
「そうよ。私算盤は苦手だから」
 聖花は普通に教科書を使った勉強は得意だ。しかしそういった、教科書以外のものを使った科目は愛実に劣るのだ。そちらは愛実の方が得意だ。
 そのことを今苦い顔で言ったのだ。
「だからね」
「けど。私なんて」
 劣等感の言い合いになっていた。互いが隠していた。
「本当に何もないわよ。背だって低いし」
「そんなこと言ったら私胸ないし」
 聖花はさらに言う。
「変わらないわよ」
「そうかしら」
「そうよ。私だって凄く愛実ちゃん羨ましいから」
 こう言うのだった。
「若し。今こうして愛実ちゃんに言わないと」
「言わないと?」
「何時か愛実ちゃんに酷いことしてた」
「そうなの」
「そうなってたと思う」
「私も」
 愛実も今言った。
「聖花ちゃんのことが羨ましくて妬ましかったから」
「それでだったのね」
「このままいったら酷いことしてたと思う」
「指なくなってたよね」
「そうなってたわよね」
 二人で言う。若し二人が妖怪だったならというのだ。
「悪い娘達になってたね」
「絶対にね」
「そうだ。人の指は減らない」
 それまで二人の話を聞いていた日下部が話してきた。
「しかし心にある指はだ」
「減るんですね」
「そうなるんですね」
「そうだ。それは決して心には見えないがな」
 だがそれでもだった。
「減るのだ。逆もあるがな」
「悪い人がいい人になればですか」
「指は増えるんですか」
「心の問題だからな」
 心の指は減ったり増えたりするというのだ。その心の持ち様でだ。 
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