八条学園怪異譚
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第八話 屋上の騒ぎその一
第八話 屋上の騒ぎ
愛実は自分の席で聖花と共に携帯で学園の裏サイト、かつて彼女が日下部のことを見つけたあの掲示板を見ていた。そこにこんなことが書かれていた。
「今度は工業科だけれどね」
「工業科にも出るのね」
「うん、何か夜の十二時になるとね」
まさにそうしたものが出る時間だ。
「屋上で謎の光が輝いて」
「それでなのね」
「そう、得体の知れない騒ぎ声が聴こえてくるらしいのよ」
「何かそれもよくあるお話ね」
聖花は愛実の話を聞いて少し考えてからこう言った。
「怪談に」
「確かにね。日下部さんもキジムナーの人達もだけれど」
「夜の十二時っていうのが特に」
聖花はその時間についても言う。
「ありきたりよね」
「そうよね。夜の十二時っていうのが特に」
愛実は携帯を右手に持って見ながら聖花に話していく。
「よくあることね。ただね」
「ただって?」
「今回だけれど」
愛実はここで聖花を見た。彼女のその整った顔を見て言ったのである。
「十二時よ」
「あっ、その時間は」
「聖花ちゃんにとっては辛くない?私もだけれど」
「確かに。ちょっとね」
聖花も言う。このことは。
「十二時に学校に来てってなると」
「お家に帰っても寝る時間ないわよね」
「殆どね。うち本当に朝早いから」
パン屋故にだ。聖花自身が言う様にパン屋と豆腐屋は朝が早いので。愛実もそのことをよく知っているが故に言う。
「それが問題ね」
「そう。行くとしたらどうするの?」
愛実は行くという仮定から聖花に問うた。
「その時は」
「じゃあ。その時は部活のない日にしてね」
聖花も聖花で行くということを前提として話す。
「早いうちに一回寝てそれで起きて」
「行くのね」
「そうしようかしら」
考える顔で愛実に言う。
「それでどうかしら」
「いいんじゃないかしら。人間やっぱり寝ないとね」
「駄目だからね」
「それに愛実ちゃんしっかり寝る方だったよね」
「時間は多少短くてもいいけれど」
だがそれでもだというのだ。
「それでもね」
「しっかり寝ないと身体もたないタイプよね」
「愛実ちゃんもよね、その辺り」
「ええ、実は私もなのよね」
それは愛実自身もだった。それでこう言うのだった。
「しっかりと寝ないと」
「でしょ?これまでは夜っていってもそんなに遅くなかったから」
日下部やキジムナーの時は大体七時か八時だった。確かに夜としては早い。
「苦労しなかったけれど」
「今度はね」
「十二時ね」
聖花はまたこの時間を言った。
「私もう寝てるから、普段は」
「そうよね。けれど行く前に仮眠したら」
それでかなり違うというのだ。だから愛実は聖花に注文するのだ。
「それで仮眠を撮った後で」
「そのうえで、よね」
「そう。そうしましょう」
「わかったわ。それじゃあね」
聖花は親友の言葉に頷いた。そうして笑顔になってだった。
聖花はまずは仮眠を取ってから十二時に工業科の屋上に向かうことにした。聖花はこのことを決めてから愛実にこの作品を話に出した。
「ねえ、屋上で騒ぎがあるって」
「怪談だとよくあるわよね」
「ええ。こうしたことって平安時代からあるのよ」
「えっ、そうなの」
「多分その前からあるけれど」
「奈良時代から?」
「けれどまあ。平安時代のお話でね」
それでどうかというのだ。平安時代の話がどうしたものかというのだ。
「ほら、芥川龍之介の作品で羅生門ってあるじゃない」
「ああ、あれね」
芥川の作品については愛実も知っていた。その中でも羅生門といえば代表作の一つだ。愛実は教科書でこの作品を読んでいる。
それで少し考えてだ。愛実はまた言った。
「門のあれよね。上の中に入ったら」
「死体が一杯あってその髪の毛を取るお婆さんがいたわよね」
「あれって気持ち悪くてよく覚えてるけれど」
愛実は眉を曇らせて言う。彼女の感性ではそうしたものはイメージがよくなかった。それでこう言ったのである。
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