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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第1話 カルチャーショック!!母上何か隠していませんか?

 あの光に包まれて、どれ位の時間が経っただろう? 意識というものが、ほとんど表に出る事は無く、暖かいぬくもりに包まれていた。僕と俺が一つになって、やがて私になる。

 まるで幸せな夢を見ているようだ。何一つ変化のない日常。

 だが、そこに自由は無かった。自らの足で歩くこともできなし、立ち上がることすらできない。意識すら縛られ、自由に思考することすらできない。そして、そこから抜け出す力さえ今の自分にはなかった。

 僕にとって此処は力ない自分を、守ってくれる場所だった。

 俺にとって此処は自由を縛りつけ、閉じ込めらる場所だった。

 では、私にとって此処は如何いう場所なのだろう?



 また、意識が浮上する。目の前には、優しく笑いかけてくれる黒髪の女性。この人が、僕の母親なのはすぐに判った。抱きしめられた時に感じた鼓動が、ずっと僕を守ってくれた鼓動だったからだ。

 僕にとって、この人は最愛の母親。

 俺にとって、この人は赤の他人。

 私にとって、この人はもう一人の母親。



 また意識が沈んでいく。目覚める度に、僕と俺が無くなり私になってゆく。それでも、僕と俺に絶望は無い。ただ、私になるだけなのだから。

 僕にとって、此処は守っていきたい場所だから。

 俺にとって、此処は……まあ、もう一つの家だからな。

 私にとって、此処は失ってはならない大切な場所だから。



 願わくば、次の目覚めですべて私になってますように。






 ふと気がつくと、僕と俺は完全に私になっていました。先ず今の状況を整理します。先にリタが言っていたように、あの子……いや僕が冥の途に来てしまったのは、生まれてすぐの産声を上げる前だったのは間違いない様です。そして、あれから1年と2カ月(1歳の誕生日から月カレンダーを2回捲られた)経っていました。魂がなじむのに、これ程多くの時間が掛かってしまうのでしょうか?

 この1年と2カ月の記憶は、断片的ではあるが私の頭の中にあります。その情報を整理してみましょう。

 初めは家族構成からです。確認しているのが、父と母と自分の3人のみ。兄弟や姉妹は、確認できなかったので居ないのでしょう。祖父母も同様に居ないみたいです。別居か既に死別しているか? この辺りは不明ですね。

 次に周りの環境について考えてみましょう。この家は使用人が居る事や、家具・調度品・屋敷の大きさから見て、かなり裕福な家のようです。(祖父母は別居の線が濃厚か?)ですが、文明レベルが良く分かりません。使用人達が、蝋燭やランタンを使用しているのを見た記憶があるのです。ですが、母上が棒のようなものを軽く振っただけで、照明が点灯した記憶があるのです。

 ……なんでさ?

 まあ、分からない事は放っておいて次に移動方法です。今の1歳と2月の私では、ハイハイと伝い歩きがやっとと言った所です。えっと、俺だった頃も含め計算すると……34歳と3カ月です。……結構な年ですね。

 ……マ テ ヨ。トイレは如何する?

 そうか俺の精神が、やたらと疲弊していたのはそう言う事ですか。私は初めて、俺の苦悩が分かったような気がしました。精神年齢が、30歳過ぎの赤ん坊(大人)にオムツ交換か……精神的には地獄だったのでしょうね。そう言った趣味は無かったでしょうし、私は心の中で俺に同情しました。

 しかし、今からは他人事?では無いのです。如何にかしなければ、大いなる意思が言っていた『この滅びゆく世界に、運命を変える一つの因子たれ』を実行する前に、私が精神的に死にます!!

 とにかく、……とにかく今すぐ対策です!!

 まず一番の解決方法は、一人でトイレに行けるようになる事です。が、これは問題点がいくつかあります。

 先ず一つ目の問題が、トイレの場所が分からない事です。これはハイハイと伝い歩きを駆使すれば、自分で探索し発見することが可能でしょう。とりあえず解決可能な範囲です。

 二つ目の問題が、トイレの使い方が分からないことです。これは、実際トイレを見てみないと何とも言えません。場合によっては使用可能かもしれないが、一番危惧しているのはお尻を拭く紙が無い可能性が有る事です。母上の謎の照明点灯を無視すれば、今いる世界は俺の世界で言う中世・ヨーロッパの時代に対応している可能性が一番高いのです。この時代では紙は貴重品です。トイレットペーパーが有るとは思えません。

 そして最後にして最大の問題が、トイレの作りが私の体格に対応していない可能性がある事です。たとえばトイレの形状が壺で、排泄物を溜め後で捨てに行く場合は、私の体格では使用不可能でしょう。更に最悪なのは、ぽっとん式のトイレの場合です。下手したら落ちます。その場合、最悪死ぬ可能性すらあるのです。そうでなくとも汚物まみれになります。間違いなく次から監視がつでしょう。それ以前に、だれかが責任取らされるかもしれません。

 他には、外でしてしまうという手もあるにはありますが、この手は使えて1度か2度が限界ですね。まず間違いなく見つかって、連れ戻され監視がつきます。なんかお先真っ暗ですね。もう鬱になってきました。こうなったら、構わず部屋の中で……っ!?そうですよ、おまるですよ。おまるなら、中世・ヨーロッパ時代なら有るはずです。よし早速作戦を練らねば……。

----一人脳内会議(ブリーフィング)開始----
 まずは今回のミッション内容の確認です。ターゲットはおまる。これは発見さえできれば、後はどうにかなります。最悪ターゲット(おまる)の淵を握りしめ、泣けばなんとかなります。問題はターゲット(おまる)までたどり着けるかどうかです。ターゲット(おまる)が、格納場所として最も有力なのは一階の物置部屋です。現在位置は二階の寝室なので、どうやっても階段を通らなければなりません。また、使用人(エネミー)に発見された場合、現状では逃亡はまず不可能です。また、一度でも失敗すると監視がついてしまいます。失敗が許されんミッションです。私の体格を考えれば、今回のスニーキングミッションは困難を極めるでしょう。ですが私の人としての尊厳の為に、絶対成功させてみせます!!
----一人脳内会議(ブリーフィング)終了----

(よし、ミッションスタートだ)

 まずは、手早くベットから降ります。その際、転がって頭を打ちましたが気にしません。

(……すみません。本当は無茶苦茶痛いです。しかし私の人間としての尊厳に比べれば、この程度耐えて見せます!!)

 すぐにハイハイでドアに向かいます。壁立ちでノブに触ると、アッサリとドアは開いてくれました。(よし、ラッキー)そのまま壁歩きで、記憶の断片にあった物置部屋へと向かいます。が、目の前に最初の難所が待ち構えていました。

 そう……階段です。まず周りをよく観察します。階段には運の良い事に、手すりには手が届かないが階段一段毎に、手すりを支える支柱が立っていました。また、|使用人《エネミー》の姿もありません。

 よし、今なら行けます。支柱に確りつかまり、一段一段慎重に下りて行きます。途中で二階の階段付近を、メイド(エネミー)が通過した時は、肝を冷やしましたが下りきる事が出来ました。

 後はこの廊下を渡り切れば、目的地に到着です。ここで気を引き締めなおし、伝い歩きで一路物置部屋へ向かいます。運の良い事に危惧していた使用人(エネミー)との遭遇はありませんでした。そしてようやく、物置部屋の扉を目の前でとらえました。しかしそこで、重大な見落としに気付いてしまいた。物置部屋に鍵がかかっている可能性です。くっ……なんて間抜けな。ですが、ここで諦めるわけには行きません。一縷の望みをかけて、扉を引っ張ってみます。するとなんと、大した抵抗もなく、開いてしまったではありませんか。しかも、入口のすぐ近くにターゲット(おまる)を発見したのです。すぐに床に座り、ハイハイ体勢移行し物置部屋に入ろうとした瞬間……。

(なんじゃこりゃぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!)
「ああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 突然体がふよふよと宙に浮かび上がり、ターゲット(おまる)から遠ざかって行ったのです。全く信じられない、いったい何が起こったのでしょうか? 突然の事に理解が追いつきません。

 そして終点には、母上がいらっしゃいました。ふよふよと飛んできた私を、両手で抱き締めるようにキャッチします。とってもイイ笑顔です。ですがあまりの事態に私は、完全に固まってしまいます。

「もう~。ダメじゃないの、こんな所に一人で来ちゃ~」

 母上のハイテンション特上機嫌ぶりに、思わずドン引きした私を誰も責められないと思いたいです。

(母上が壊れた? 何故(なにゆえ)?)

「もう、レビテーション位でこんなに驚いて。こんな、初級魔法でダメよ~」

(なんだってぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!)
「えええあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」
(マホウって、魔法ですか?……いや、魔神や幽霊に会った事あるなら今更ですか?)

「もうすぐ、お兄さんになるんだから。もっと確りしてよね~」

(なんですとぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!!!!)
「おおおううぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーー!!!!」
(兄って弟か妹が生まれるのですか? あー、だから上機嫌なのでしょうか?)

 その時、母上の私を抱く力がキュッと少しだけ強まりました。

「大丈夫。ギルバートちゃんは、ちゃんと泣いてくれたんだもの。今度の子も大丈夫。あの子のようには、絶対にならない。そう……絶対」

(え?)
「う」
(母上? 今震えてた? あの子って……)

「さぁ、部屋へ戻るわよ~」

 そう言った母上は、先ほどの気味の悪いくらい上機嫌な母上に戻っていました。

(とっ、そうだ。おまるーーーーーーーーーーーー!!!!)
「あっううううぅぅぅぅーーーーーーーーーーーー!!!!」

「おっ、元気いいわね~。っと、そうだおしめは大丈夫かな~」

(ちーーがーーうーーーーーー!!!!)
「あああうううぅぅぅーーーー!!!!」

 私の抵抗むなしく、寝室へ連行されてしまいました。

(この時私の頭の中では、どっかの大佐が「スネーク」と連呼していました。そのうち、「スネーク」から「らりるれろ」変わるのでしょうか? いや、もう考えないようにしましょう)

 それから、しばらく恥辱の日々を過ごすことになってしまったのです。

(何でだろう……。目から汗がたくさん出て来ましたよ)



 あれから数日が経過しましたが、未だに恥辱の日々が続いています。その後もおまるをゲットする為に、何度もミッションを発動しました。が、すべて失敗に終わっています。原因は監視がついた事もありますが、何故か使用人(エネミー)の士気がやたらと高い事です。残念ながら以降のミッションは、全て階段前で捕獲されています。

 ……なんでさ。(怒) いや、とりあえず冷静になりましょう。

 とにかく、屋敷内に違和感があるのです。使用人達は母上と私を、なるべく一緒に居させようとするのです。原因は恐らく、あの時の母上の態度が関係していると思われます。あの子とは、誰の事なのでしょう? まだ言葉を完全に理解できていないのが痛いです。他にも分かった事があります。

 とりあえず、母上は妊娠中である事が分かっています。そして母上は、過去に妊娠に関する何かがあった様です。屋敷の中に存在しない“あの子”と言う存在と、使用人達が一丸となるような事だと分かっています。

 そして使用人達の口振りだと、妊娠が発覚したのは最近である事と、母上のお腹が最近発覚したにしては大きすぎるのです。……つまり、母上は妊娠を隠していた事になります。

 流石にここまで情報がでそろえば、誰でも分かるような気がします。まず間違いなく、私には兄か姉が居ます。そして、その兄か姉は生きていない。死因が事故か病気なら、母上の態度が変なのも説明がつきませんし、妊娠を隠す理由にはなりません。となると、死因は流産か出産の失敗の可能性が高いです。

(……重い)

 現状では、私は母上に何にもしてあげられません。何か言葉をかける事さえも……。いや母上の側にいて、成功例である私自身をアピールすれば、多少は気がまぎれるかもしれませんが……。

(早く喋れるようになりたい)

 そう思いながら、言葉を早く覚えようと誓ったのでした。

(……無力だ)

 でも、トイレも忘れてませんよ。



 母上はあれから出かけなくなりました。動くのが辛いのか? もしくは流産が怖いのか? ……恐らくその両方なのでしょう。母上が家にいるので、話相手(もっとも、聞く一辺倒ですが)は主に私がしています。おかげ様で、言葉は完璧に理解する事が出来ました。時間が有れば絵本も読んでくれるので、文字も少しずつですが覚え始めました。

 それよりも今気になるのは、母上から聞いた話の内容です。私が一々反応するので、母上も調子に乗ったのかも知れませんが、本当の所は不安で饒舌になったと言うのが本音でしょう。しかし、多くの事を話してくれたのは助かります。おかげ様で、この世界の事をたくさん知る事が出来ました。

 まず私のフルネームは、ギルバート・アストレア・ド・ドリュアスと言うらしいです。そして父上のフルネームはアズロック・ユーシス・ド・ドリュアスで、母上のフルネームはシルフィア・ローズ・ド・ドリュアスと言うそうです。私の祖父母は大貴族の妾の子で、父上と母上は苦労したそうです。そう言った経緯があるので、ドリュアス領では平民を差別していないので領民には好かれている。

 ここまでは問題ありません。と言うか、良い親に当たったと少し嬉しくなりました。

 この世界の名前が、ハルケギニアと言うらしいです。そしてこの国の名前ですが、トリステイン王国と言うらしいです。他にも、アルビオン王国、ガリア王国、帝政ゲルマニア、ロマリア連合皇国という国があるそうです。

 ……気のせいでしょうか? どこかで聞いた事があります。

 この世界は、始祖ブリミルを神様として崇めているそうです。そして父上と母上は、表向き始祖ブリミルを信仰していますが、実際は全く信じていないそうです。と言うか、神官には色々と酷い目に遭わされて来たので、むしろ関わりたくないそうです。

 ……気のせいですよね? お願いだから気の所為であってください。

 ここは王都トリスタニアの南南西に位置するドリュアス領で、母上はドリュアス領内にあるタルブ村産のワインがお気に入りなのですが、妊娠中なので今は飲めないらしいです。ドリュアス領の東にはモンモランシ領があり、モンモランシ伯爵夫人も妊娠中である。父上と母上は軍属で、上司はヴァリエール公爵と言うらしい。そしてヴァリエール公爵夫人も妊娠しているらしい。そしてヴァリエール公爵には、既に2人の娘がいるそうです。

 もう否定のしようが無さそうです。……いや、まだ可能性はあるかもしれません。

 この世界には魔法が存在し、コモン・マジックと4系統魔法。そして、伝説の虚無魔法が存在する。

 ……ちなみに父上は、土のスクウェアメイジ。母上は風のスクウェアメイジです。更に父上と母上は自身の得意属性だけでなく、水の属性もラインスペルまで使える優秀なメイジです。って、現実逃避している場合ではありません。


 もはや確定です。言い訳の仕様もありません。

 そして追加で分かった事ですが、ドリュアス領のすぐ南西に魔の森という広大な森が広がっているそうです。ゼロの使い魔では聞いた事が無いのですが、いったい何なんなのでしょうか? そして最後に、私の名前を命名したのは父上である。(怒)

 ……ちょって待ってください。って言うか、危険な発言オオスギです母上。「異端審問で、殺されかけちゃった♪」などと可愛く言われても、反応に困りますから。不安なのは分かりましたから、兎に角落ち着いてください。と言うか、私が落ち着きましょう。

(……とりあえず。冷静に……冷静に……)

 しかし此処まで来たら、否定のしようがありません。聞いた事が無い単語(魔の森 等)がありましたが、ゼロの使い魔の世界で間違い無さそうです。 

 そう言えは、昔俺が面白い話を聞いていましたね。確か「物語と因子の流転」だったでしょうか。

 創られた物語は、因子となり世界より漏れ出る。因子は新たな世界を創りだす。創られた世界は因子を還す。世界が因子を取り込み人は新たな物語を紡ぎだす。

 だったかな?

 思えば、リタ・セミフもナベリウスも俺がプレイした事がある、ゲームのキャラクターに特長が一致します。タイトルは戦女神だったかな? 小説だろうとゲームだろうと、物語には変わらないと言う事でしょうか。

 因子に創られた世界だろうとその逆だろうと、たとえ全くの見当違いでも此処は私達にとっての現実である事は変わりません。大いなる意思が言っていた「この滅びゆく世界に、運命を変える一つの因子たれ」これは、この世界で生き滅び運命を否定しろって事なのでしょうか?

(上等だ。その運命を否定してやる!!

 もし、滅びが正しいなどと言う奴がいれば、

 その幻想、ぶち壊す!!!!)

 なんて、頭の中で格好つけても意味は無いんですけどね。






 それと父上。後で殴ります。アストレアって女名じゃないですか。(怒) 
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