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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第七十二話 クワサン=オリビー

                  第七十二話 クワサン=オリビー
 ドラゴノザウルスを倒したロンド=ベルはそのままハワイに入った。そしてそこで暫し休暇に入ろうとしていた。
「まずは皆ゆっくりと休んでくれ」
ブライトが皆に対して言った。そして多くの者はそれに従い海や街に出たのであった。
「そして残るメンバーはいつも同じだな」
艦橋にはやはりと言うかブライトとアムロが残っていた。
「また宜しくな」
「ああ、こっちこそな」
二人は笑いながら言い合う。
「俺はまた自分の部屋で機械いじりでもするつもりだけれどな」
「私は何をしようかな」
「おいおい、相変わらず時間の潰し方がわかっていないのか」
「いざ時間ができてしまうとな。どうしても時間をもてあましてしまう」
ブライトは苦笑しながらこう述べた。
「いい加減趣味の一つでも持っておきたいんだがな」
「それじゃあ本でも読んでいたらどうだ」
「本か」
「ああ。キリーが自伝を書いているそうだしな。暇があれば色々と読んでみるといい」
「何かそれをやったらさらに老けそうだがな」
「ははは、もうそんなことを言える歳でもないんじゃないか」
「そうかもな。お互い何か古くなったな」
「それはな。一年戦争の頃は若かったが」
「もう年寄りになってしまった。月日の経つのは早いな」
「ああ」
「とりあえず本でも読ませてもらうか。これでも読書は嫌いじゃない」
「漫画でも何でもいいけれどな」
「漫画か。そういえばヒカル君も漫画を描いていたな」
「彼女のは熱血スポ根漫画だがいいのか?」
「それを聞くと御前に合いそうだな」
「俺がか」
「ああ。何か御前の声を聞いているとな、思い出すものがある。何だったかな」
「野球なら勘弁してくれよ」
「それはなしだ。まあ今から何か読ませてもらうとする」
「それがいい。じゃあな」
「ああ」
アムロは艦橋から去った。ブライトも後を当直士官に任せると艦橋を後にした。そして彼も自室に去った。アムロの勧めに従い本を読む為に。
多くの者はハワイのビーチに来ていた。そしてそこで海水浴を楽しんでいた。
「やっぱりうちってプロポーションいい人多いよなあ」
勝平が女性パイロットの面々を見ながら言った。
「シーラ様も。あんな綺麗な顔して」
白いビキニで身を包んだシーラを見て言う。
「胸すっごく大きいんだな。意外だぜ」
「勝平、そのだらしない顔を何とかしろ」
宇宙太がそんな彼を注意する。
「全く。来てみればまた鼻の下伸ばしやがって」
「ちょっとは引き締まった顔したら?本当にドスケベなんだから」
「そう言う恵子だって中々いいじゃねえか」
「えっ」
見れば恵子は普通の水着である。緑のワンピースだ。
「脚は綺麗だしよ」
「そ、そうかしら」
それを聞いて少し驚いた顔になっていた。
「ちょっと胸はねえけれどな」
「胸は放っておいてよ」
それを言われて少しムッとした顔になる。
「身体動かしていると筋肉がついて胸が減っていっちゃうのよ」
「そうなのか」
「そうなのかって胸は脂肪なんだから当然だろ」
宇宙太がそれを聞いて説明した。
「運動すれば脂肪は減るんだよ」
「そういえばそっか」
「全く。御前は本当に何も知らないんだな」
「学校の勉強なんてどうでもいいからな」
「そんなことじゃ後でえらいことになるぞ。まあ言っても無駄だろうけれどな」
「俺には頭なんていらねえんだよ。全部勘でやるからな」
「勝手にしろ」
三人やシーラだけではなかった。見れば実に多くの者がそこにいた。その中にはミサトもいた。彼女は派手な赤いワンピースを着ていた。
「ふうう、何か海も久し振りよね」
「そうね、何年振りかしら」
その隣にはリツコがいた。彼女は黒いビキニの上から白衣を着ていた。
「海なんて。昔はよく泳いだのに」
「色々と忙しかったからね」
ミサトはそれに応える。
「気付いたらお互いこんな歳だし。そろそろ体型も崩れてこないか心配なのよ」
「ミサトはビールを止めなさい」
「やっぱりそれ」
「後レトルト食品もね。そのうちブクブク太るわよ」
「うわ、それは勘弁」
そう言って困った顔になる。
「太ったら加持君やアムロ中佐に嫌われちゃうわ」
「そういえば二人共いないわね。アムロ中佐はまた機械いじりみたいだけれど」
もうアムロの趣味はわかっていた。だからそれには驚いていなかった。
「加持君は。何処に行ったのかしら」
「何でも猿丸君やサコン君達と一緒に何か話してるらしいわよ」
「あの二人と」
「何の話かはわからないけれど。案外あんたにも関係のある話かもね」
「だったら面白いわね」
そう言ってクスリと笑った。
「あの二人は私以上の天才だし。何が出て来るか楽しみだわ」
「案外何も出て来なかったりして」
「まあその時はその時ね。ところで」
「何?」
「泳がないの?」
急に話を変えてきた。
「えっ!?」
「だから泳がないのって。その為に水着に着替えたんでしょ?」
「そのつもりだったんだけれどね」
ここで少し苦笑いを浮かべた。
「何かあの子達見てると。保護者になりそうで」
見ればシンジやアスカが楽しそうに遊んでいる。皆明るい顔をして泳いだり西瓜割りに興じたりしていた。
「そこで保護者に徹することにしたのよ」
「じゃあ私も保護者になろうかしら」
「あら、最初からそうだったんじゃないの?」
「まさか。けれど付き合うわ」
「お互いおばさんだと辛いわね」
「あら、おばさんだって魅力はあるわよ」
「熟女の魅力ってやつかしら」
「そうなのかもね」
二人は笑いながら話をしていた。その目の前では豹柄のビキニを着たアスカがダイゴウジと言い争っていた。
「今度はあたしの番よ!」
「御前さっきやったばかりだろうが!」
二人は西瓜割りの順番で揉めていた。
「あんただってそうでしょ!」
「俺の後に御前がやった!それでは俺の番だ!」
「そんなの知らないわよ!とにかく今度はあたしなんだから!」
アスカも引き下がらない。
「とにかく木刀渡しなさいよ!それともジャンケンで決める!?」
「おう、望むところ!」
「それじゃあ行くわよ!」
「よし!」
二人はジャンケンをはじめた。だが何度やっても勝負はつかない。
西瓜割りはその間にジュドー達がやっていた。二人は完全に油揚げならぬ西瓜をさらわれていた。
「ったくよお、旦那は何処に行っても旦那だな」
青と白の二色のビキニを着たリョーコが胡坐をかきながらそれを見て呟いた。
「子供相手に何ムキになってやがるんだか」
「それがヤマダさんじゃないんですか?」
淡い青のフリルのついたワンピースのヒカルが言う。
「純真で」
「単純なだけだと思うけれどね、あたしや」
「けれどいいじゃないですか。見ていて楽しいですし」
「まあな」
「西瓜甘いかしょっぱいか。やすいか・・・・・・ぷっ」
「イズミも海でも変わらねえな」
黒のワンピースのイズミを横目で見ながら言う。どういうわけかリョーコは少し機嫌が悪かった。
「何ていうかなあ、うちの部隊って本当に皆プロポーションいいよな」
そして勝平と同じことを呟く。
「うちの艦長とかハルカさんは言うまでもなくな」
「リョーコさんだって中々いいですよ」
「よしてくれよ、あたしなんか」
ヒカルの言葉にこう返す。
「胸だってよお。そんなにねえし」
そうは言いながらも谷間ははっきりと出ていた。
「男勝りだしよ。やっぱりこんなんじゃ男は寄りつかねえよな」
「そうともばかり言えませんよ」
「よしてくれよ、慰めは」
「リョーコさんみたいな人。すぐにいい人が来ますよ」
「どうだかね」
「もし」
しかしここで彼女に声をかける者が出て来た。
「!?」
「そこのお嬢さん」
「あたしのことかい?」
リョーコはそれを受けて顔を上げた。見ればそこには紫の長髪の背の高い男がいた。
「そう、貴方です」
その男はにこりと笑って応えた。
「宜しければお茶でもどうですか」
「ほら、いたじゃないですか」
「ううん」
リョーコはその男とヒカルを見て複雑な顔をした。
「これってナンパだよなあ」
「そう考えられてもいいですが」
「波に乗りながらナンパ」
「それはもう一文字しか合ってねえぞ」
イズミに突っ込みを入れてから返す。
「で、どうするんだい、あんたは」
男に対して問う。
「あたしをナンパして。泳ぐかい?一緒に」
「よければ食事などでも」
「いいねえ。それじゃあ行くか」
そう言って立ち上がった。そして男の手と自分の手を絡めさせた。
「ヒカル、イズミ」
そして二人に対して顔を向けて言った。
「ちょっと遊んで来るぜ。じゃあな」
「はい、どうぞ」
「美味しく妬けまぁ~~~す」
二人はそう言って見送った。リョーコは機嫌をなおして男と一緒に食事に向かった。見れば彼女は小柄であったがかなりプロポーションがいいと言えた。自分のことは案外気付かないものなのかも知れない。
リョーコだけでなく他の面々も海を楽しんでいた。アイビスとスレイはイルイと二人で海の中にいた。
「そら、手を離すぞ」
銀のビキニのアイビスがイルイに泳ぎを教えていた。
「いいか、自分で泳ぐんだ」
「うん」
アイビスは言った通りに手を離す。イルイは一人で泳ぎはじめた。
「そうだ、その調子だ」
彼女はイルイに対して声をかける。
「頑張れ、もう少しで泳げるようになるからな」
見ればぎこちないながらもイルイは泳ぎはじめていた。アイビスはそんな彼女を励ましていたのだ。
「よし、まずはここまでだ」
そしてイルイを抱き締めた。
「いいぞ、泳げるようになってきたじゃないか」
「アイビスが教えてくれたから」
イルイは応える。
「段々泳げるようになってきたよ」
「あたしはそんなに教えていないけれどな」
「いや、中々いい教え方だぞ」
隣にいるスレイが言う。彼女は青い胸が大きく露出したワンピースを着ていた。胸はアイビスのそれより遥かに大きかった。
「ううむ」
「どうした」
「いや、ちょっとな」
アイビスもそれが気になりだしていた。
「胸が」
「!?胸がどうした?」
だがスレイはまだそれには気付いてはいない。
「どうもな。あたしにはビキニは似合わないみたいだな」
「そういうわけでもないぞ」
「そうか?」
「よく似合っている。綺麗な身体がよく出ているぞ」
「綺麗か?あたしはそうは思わないが」
「見事なものだぞ。その細い身体がな。羨ましい」
「羨ましい」
「ああ」
どうやらスレイはスレイでアイビスに対して嫉妬を覚えているようである。欲しいものは人によって違うということであろうか。
何はともあれアイビスは少し気持ちが楽になった。その横ではアラドとゼオラがアスカ達とは別に西瓜割りに興じていた。ゼオラは熊の柄のビキニである。
「何かなあ」
「何よ」
ゼオラはその大きな胸を突き出してアラドに問う。
「何か言いたいことがあるの?」
「いや、ゼオラって水着も熊なんだなって思ってな」
アラドは問うてきたゼオラに対して答えた。
「熊?」
「ああ、下着もだろ」
アラドは言った。
「だからなあ」
「ちょっと待ちなさいよ」
それを聞いたゼオラの顔色が変わる。
「何であんたがそんなこと知ってるのよ」
「だってこの前見えたから」
「えっ!?」
それを言われて急に顔が赤くなる。
「見えたって」
「俺に踵落とし入れた時だよ。はっきり見えたんだよ」
「嘘っ、あの時に」
さらに顔が赤くなる。
「何で見えたのよ」
「何でってそんなことしたら見えるのは当たり前だろ」
アラドは答えた。
「ばっちり見えたぜ。可愛いの履いてるんだなって」
「そんなこと言ったらあんたはどうなのよ」
顔を真っ赤にしたまま誤魔化しにかかる。
「そのトランクス。いつも履いてるトランクスと殆ど同じじゃない」
見ればアラドの水着は青いトランクスのものである。
「赤とか青とか。他にはないの!?」
「黒とか緑もあるぜ」
アラドは答えた。
「こればっかりじゃないけれどな」
「そんなこと言ってるんじゃないわよ」
ゼオラはさらに言う。
「全く。水着位他の柄にしなさいよ」
「それはゼオラもそうだろ」
「うっさいわね」
「大体何でトランクスのことまで知ってるんだよ」
「そ、それは」
まさか着替え中を見たことがあるとは言えなかった。
「それは・・・・・・」
顔はさらに赤くなる。もう林檎の様であった。
「それはあんたが」
「俺が?何?」
「な、何でもないわよ。とにかく」
ゼオラは無理矢理誤魔化しにかかった。
「私は熊が好きなのよ、放っておいてよ!」
無理矢理そう締め括った。彼等は彼等で遊んでいた。まだまだ子供ではあるが。
「何て言うか久し振りにのどかね」
「そうだな」
レッシィがアムに答えた。
「今まで何かと立て込んでいたからな。たまにはこうした時間もあっていい」
「そうね」
二人はワンピースであった。アムは白の、レッシィは黒と白のチェックの。レッシィの方が派手な水着であった。
「泳ぐのもプールばかりだったしね」
「あれはあれでいいが。やはり海で泳ぐのが一番だな」
「開放感があるしね」
「そうだな。それにこの日差しだ」
上を見上げて言う。
「たまには太陽の光を浴びるのも気持ちがいいな」
「そうね」
「あんた達よくそんなことが言えるわね」
「本当」
そんな二人にエクセレンとアクアが言った。
見れば二人は水着ではなかった。サングラスをかけ帽子を被り肌を白い大きなバスタオルで覆い日傘まで差していた。かなりの重装備であった。
「こんなに強い日差しなのに」
「お肌の敵よ」
「って何でそんなに警戒しているんだ?」
レッシィはそんな二人を見て言う。
「戦場にいるより重装備じゃないか」
「そんな格好で暑くないの?」
「そりゃ暑いわよ」
アクアが答えた。見れば顔は汗だらけである。
「けれどね。お肌を痛めることに比べたら」
「こんなのは平気なのよ」
「そうかな」
「とてもそうは思えないけれど」
二人は首を傾げさせていた。
「若いからよ、そんなことが言えるのは」
「私達の歳になると。もうこの日差しが」
「そうかな」
「ミサトさん達なんか元気に水着でいるわよ」
「人は人、自分は自分よ」
エクセレンが答えた。
「どうせミサトさんも日焼け止めクリーム塗ってるんだから」
「けれど私達はそれだけじゃ駄目なのよ。だからこれだけ武装しているの」
「ううむ」
「警戒し過ぎだと思うけれど」
「どうせあたし達はおばさんよ」
「そのうちわかるわ。私達のことが」
「気にし過ぎだと思うが」
レッシィはまた首を傾げさせた。そしてこう言った。
「まだ二十三だったな、二人共」
「ええ」
二人はそれに頷いた。
「だったら。そんなに気にすることは」
「まだ若いじゃない。ミサトさんやリツコさんに比べたら」
「そこ、歳の話はしない」
だがここで遠くからミサトの突込みが入って来た。見れば指をこちらに向けている。
「いいわね」
「了解」
四人はそれに答えた。ミサトはそれを聞くととりあえずはよしとした。
「宜しい」
「何で聞こえたんだ?」
「ミサトさんって太るとか歳とかの話には敏感なのよ」
四人はヒソヒソと囁き合った。
「だからどれだけ離れていても耳に入るのよ」
「それはまた厄介だな」
「まあ複雑なお年頃だしね」
「あたし達だってそうなのよ」
エクセレンがまたそれを口にした。
「とにかくね。女ってのは二十を過ぎるともう駄目なのよ」
「そうそう、もうね、すぐにお肌や髪が駄目になるんだから」
「その割にエクセレンさんもアクアさんもいいプロポーションしてるわよね」
だがアムはそうは思わなかった。
「髪も綺麗だし」
「手入れしてるからよ」
だがアクアはそんな言葉に対してこう返した。
「手入れしないと。本当にとんでもないことになるんだから」
「そうなの」
「とにかくね。今が花なのよ」
「女の子は。このプロポーションだって維持するのが大変なんだから」
次第に話は切実なものとなっていく。
「女は大変なの」
これが二人の結論であった。
「二十三にもなれば。嫌でもわかるわ」
「ううん、何か歳とりたくなくなってきちゃった」
「私もだ。何かな」
「まあ嫌でもとるから」
「その時に備えておくことね」
こう言ったところでアクアは横を擦れ違った黄色の髪の少女に気付いた。
「あら」
「どうしたんですか?」
「いえ、さっきの娘可愛いなって思って」
「?どんな娘だったの?」
エクセレンも気になって尋ねる。
「さっちここを通った小さい娘・・・・・・ってもういないわ」
「そうなの」
「さっきまでいたのに。おかしいわね」
「まあどっか行っちゃったんでしょ。ところでこれからどうするの?」
「艦に戻りませんか?日差しが強いし」
「わあ、何か消極的」
「それじゃあ飲むとか。いい店知ってますよ」
「いい店?」
「はい、士官学校の訓練で立ち寄った時に見つけたんですよ。よかったら案内しますよ」
「それじゃあお願いするわ」
「はい」
「何か二人の肌や髪の毛がそうなる原因がわかったな」
「お酒よね、どうも」
アムとレッシィは楽しそうに砂浜から去って行く二人の後ろ姿を見ながら言った。二人は毎日かなりの量の酒を飲んでいる。とりわけエクセレンの酒癖の悪さはロンド=ベルでは有名になっていた。
この日も飲んだ。そしてその店でどんちゃん騒ぎだった。結局肌も髪も荒れる原因は歳ではなく彼等自身の生活にあったのであった。
何はともあれ一日のバカンスは終わった。艦に戻って来た面々は実によく日焼けしていた。
「ああ、痛い痛い」
リョーコが日焼けして茶色になった肌を見ながら呟く。
「ちと焼き過ぎたかな」
「二人で何処に行ってたんですか?」
「あの後トロピカルジュースを飲んでな」
「はい」
彼女はヒカルに何があったのかを話した。
「二人で色々と話してたんだよ。ビーチでな」
「それでそんなに焼けたんですね」
「ああ。けれど結局それだけだった」
だがそれ以上は何もなかったらしい。
「どうもあの紫の髪の兄ちゃんも色々と連れがいたらしくてな。キリのいいところで別れたんだ」
「お連れさんですか」
「ああ。何でもパイロットとか言っていたな。何のパイロットかまではわからねえが」
「連邦軍の人でしょうか」
「かもな。その割には変わった感じだったけれどな」
「変わった感じ」
「ひょうきんなところもあったけれど気品もあったな。面白い奴だったよ」
「へえ」
「あの外見じゃそこそももてるだろうけれどな。けれど結構ふられてそうだな、ありゃ」
「どうしてですか?」
「抜けてたんだよ。財布やら落として慌ててたし」
「あら」
「別れる時にも道が何処かわかってなかったしな。結構おっちょこちょいだったな」
「何か私も会いたくなってきました」
「そうだな。また会えたらいいな」
リョーコは笑いながらこう述べた。
「しっかし、やっぱビキニは止めといた方がよかったかもな。腹まで痛いぜ」
「露出が多いですからね」
「折角アキトに・・・・・・おっとと、何でもねえぜ」
「はいはい」
ヒカルもわかってはいるがそれ以上聞こうとはしない。
「まあビキニはちょっと懲りたな」
「後でお肌を無理なく剥がせるクリームお渡ししますね」
「あ、悪いな」
「クリームを使ってクリーンに」
「だからよお、何時でも駄洒落をやりゃあいいってもんじゃねえんだよ」
お決まりのイズミの駄洒落に突っ込む。こうして彼等の休みの夜は過ぎていった。
次の日はオフではなかった。彼等は朝になるとハワイのレーダーサイトから報告を受けていた。
「マウナロア山にか」
「はい」
レーダーサイトの責任者がブライトに答えた。マウナロア山とはハワイ島にあるカザンである。盾状火山として有名な山である。
「ヘビーメタルが展開しています」
「というとギャブレーか」
「まああいつはいるだろうな」
キャオがダバに応える。
「まあ毎度毎度懲りない奴だな」
「その数五百」
「五百」
「そして援軍も来ているようです。こちらは四百程です」
「そちらはまたバルマーのものか」
「多分そうだな」
アムロがブライトの言葉に返した。
「どうする?当然行くんだろう?」
「ああ」
ブライトは頷いた。
「勿論だ。では行くか」
「わかった。では全艦出撃」
グローバルが全艦に指示を下す。
「マウナロア火山に向かう。そしてそこにいる敵を掃討する。よいな」
「はっ」
こうしてロンド=ベルはマウナロアに向かった。既にそこにはヘビーメタル達が展開していた。
「久し振りだな、ダバ=マイロード!」
聞き慣れた声が戦場に響き渡る。
「今度こそ決着をつけてやるぞ!」
「ギャブレー、やはりいたか!」
ダバがそれに返す。
「また地球に!そんなに他の星の戦いに介入したいのか!」
「黙れ!これは生きる為だ!」
ギャブレーは反論する。
「私の様な貧乏貴族が身を立てるにはこうして軍人になるのが一番なのだ!そんなこともわからないのか!」
「そう言いながらあんた食い逃げまでしてたじゃない」
「全く。何処が貴族なんだか」
「ええい、五月蝿い!」
アムとレッシィに言い返す。
「あれは仕方のないことだ!何時までも過ぎたことを言うな!」
「けど頭、そう言いながら盗賊の首領もやってましたよね」
「だから黙っておれ!そんなことは言わずともよい!」
ハッシャにも返す。
「私は生きる為に戦っている!そして身を立てるのだ!」
「志が低いぞギャブレー君!」
「それを言うな!」
「毎回見てるけど面白い兄ちゃんだよな」
リョーコがそれを聞きながら呟く。
「顔は見たことねえけど三枚目なんだろうな」
「案外二枚目かも知れませんよ」
ヒカルが突っ込みを入れる。
「声は格好いいからな。しかしどっかで聞いた声だな」46
「あの黒騎士さんに似ていますよね」
「ああ、あの人か」
言うまでもなくバーン=バニングスのことである。
「あとマックスさんにも」
「僕にも?」
「はい、似ていませんか?凄く」
「言われてみれば」
マックスの方でもそれを認めた。
「似てるね、本当に」
「でしょう?何故なんでしょうね」
「他人の空似だろ。あたしだってノインさんと声が似てるしな」
「まあそうですね」
「そんなこと言ってたらキリがねえぜ。なあイズミ」
「私の声はマヤさんとスレイさんと同じ・・・・・・」
「なのよねえ、本当に似てるのよ」
「思えば不思議なことだ」
それを受けてマヤとスレイがモニターに出て来た。
「おかしなこともあるわ」
「私の方がイズミに似ているが。この部隊は声が似ている者が多い」
「だからなんだよ。いい加減そういった話は止めようぜ」
「了解」
「こういった話何度目かわからねえしな」
彼等がそんな話をしている間にもダバとギャブレーの舌戦は続いていた。
「今度こそは遅れは取らん!」
「つまり退くつもりはないということか!」
「当然のことだ!ここで貴様を倒す!」
「なら!」
まずはダバのエルガイムマークⅡが戦場に降り立った。
「容赦はしない!行くぞ!」
「望むところだ!来い!」
「期待していますよ、ギャブレー殿」
ここで一人の少女の声がした。
「はい」
見れば黄色い髪の少女がカルバリー=テンプルにいた。
「クワサン殿」
ギャブレーはその言葉に反応した。
「わかっております。このギャブレット=ギャブレー、必ずや」
「はい」
「頭ぁ」
そんな彼にハッシャが声をかけてきた。
「また一目惚れですかい?」
「馬鹿っ、これは運命なのだ」
だがギャブレーはそれに反論する。
「運命って」
「可憐な方だ。このギャブレー、必ずや」
「何をブツブツと言ってる、ギャブレー」
だがそんな彼にネイが声をかけてきた。
「もうすぐ戦いがはじまる。無駄話は止めろ」
「はっ」
「そうだぞ、敵は手強い」
リョクレイ=ロンも言う。
「油断してはならないぞ。わかっているな」
「無論です」
「わかっているならいい。では先陣を務めよ」
「はい」
それに従いアシュラテンプルを前に出す。
「行くぞ、ダバ=マイロード!」
「来い!」
見れば彼だけではなかった。ロンド=ベルの面々は既に戦闘態勢に入っていた。最早衝突は避けられなかった。そして双方共それを避けるつもりもなかった。
こうして戦いの火蓋が切って落とされた。まずはダバとギャブレーのパワーランチャーの撃ち合いからはじまる。
「これでっ!」
「何のっ!」
二人はほぼ同時に攻撃を仕掛けた。だがそれは互いに左右に動きかわしてしまった。
「また勘がよくなっている!」
「腕をあげたか。それでこそ私のライバルに相応しい」
二人はそれを見て互いに呟いた。
「だが私とてやられるわけにはいかん」
「それは俺もだ」
そして睨み合う。
「この星の人達の平和の為にも」
「家の復興の為にも」
それぞれ守るものは違っていたがそれに向けられるものは同じであった。
「俺は負けられない!」
「私は逃げぬ!」
そしてまた射撃に入った。二人は左右に激しく動きながら攻撃を続ける。だがそれは全て互いにかわしてしまう。戦いは双方五分と五分であった。
その中一機のカルバリーテンプルが戦場にいた。ダバはそれにふと気付いた。
「あれは」
「どうしたの?ダバ」
「いや、何か気になるんだ」
「戦場で余所見をするとは!」
「おっと!」
そこに来たギャブレーの攻撃をすんでのところでかわす。
「ダバ!貴様らしくもないぞ!」
「くっ!」
「どうしたの、一体」
リリスがそんな彼に声をかける。
「危ないよ、他を見ていると」
「わかっている、けど」
「けど?」
「あそこにいるカルバリーテンプルは」
「カルバリーテンプル?」
「何か気になるんだ。あれは一体」
「この感触」
そのカルバリーテンプルの中にいた黄色の髪の少女もそれに気付いた。
「ヤーマンか」
「ヤーマンだって!?」
ダバはその言葉にハッとした。
「その声・・・・・・まさか」
ダバは咄嗟にモニターを入れた。そしてそのカルバリーテンプルに問う。
「その声は・・・・・・オリビーか!?」
「何だとっ!」
ギャブレーはそれを聞いて思わず声をあげた。
「ダバ!何故貴様クワサン殿の名を知っている!」
「やはり!オリビー、俺だ!」
彼はギャブレーの言葉で全てを確信した。そしてクワサンに問う。
「御前は・・・・・・」
クワサンはそれを聞いて思わず我を忘れた。
「どうして私の名を知っている」
「忘れたのか、オリビー!」
ダバはそんな彼女に対してさらに言う。
「お兄ちゃんだ!わからないのか!」
「何っ!?」
ギャブレーだけではなかった。それを聞いたアムもレッシィもその顔に驚愕の色を露にさせた。
「兄だと!?」
「嘘、そんなの聞いてないわよ!」
「どういうことなんだ、これは!」
「私には兄なぞ・・・・・・」
クワサンのその整った顔が歪む。
「いはしない!それを御前は」
「わからないのか!どうしたんだ!」
それでもダバは問い続ける。
「俺のことが!どうしたんだ!」
「クワサン殿!」
ギャブレーが二人の間に咄嗟に入った。
「この男の言葉は聞かれぬよう!貴女は苦しんでおられる!」
「ギャブレー殿」
「ダバ!」
ギャブレーは何時になく熱くなっていた。
「クワサン殿を苦しめることは私が許さん!」
「ギャブレー!」
「クワサン殿は私が守る!ここは通しはせぬぞ!」
「俺が言っているのはそんなことじゃない!」
ダバも感情的になっていた。思わず叫ぶ。
「俺はオリビーを救わなくてはならないんだ!この戦いだって」
「この戦い!?」
「最初はオリビーを探す為だったんだ!それが今やっと会えたんだ!」
「そうだったのかよ」
ナデシコでそれを聞いていたキャオが呟く。
「あいつ、そんなことは一言も」
「言えなかったんだろうな」
京四郎がそれに応える。
「色々と考えがあってな。何となくわかるぜ」
「京四郎」
「俺も一人そういう奴を知っているからな」
「そうかい」
「ああ。だからそれは許してやれ」
「許すも何も俺はあいつの親友だぜ」
だがキャオの声は明るいものであった。
「許すも何もねえじゃねえか。そりゃ言えないことだってあるぜ、人間なんだからな」
「そうか。いい奴だな御前さんは」
「へっ、褒め言葉はいらねえぜ」
それに対してキャオはいつもの調子であった。
「このキャオ様は器が大きいのさ。隠し事の一つや二つじゃビクともしねえぜ」
「そうか」
口にこそ出さなかったが京四郎はキャオを見直した。今までは単に軽いだけだと思っていたがその中にあるものを見たからであった。
「ではこれからも支えてやるんだな」
「ああ、言うまでもねえぜ」
その声は明るいままであった。
「何時でもダバの側にいてやるぜ」
「よし」
京四郎は頷いた。彼の心が完全にわかった。そしてそこに自分のあるべき姿も見出していたのであった。
ダバはクワサンに問い続けていた。だがそれに対してクワサンは心を乱していた。
「オリビー!聞くんだ!」
「私には兄なぞ!」
クワサンはそれを必死に否定する。
「いる筈が・・・・・・!?」
「クワサン殿!」
「どうしたんだ、オリビー!」
「頭が・・・・・・」
「ダバ、貴様のせいだ!」
ギャブレーは苦しむクワサンを見て叫ぶ。
「貴様がクワサン殿を!」
「ギャブレー、御前はこのことは何も知らないんだ!」
「何っ!?」
「オリビーは俺の・・・・・・」
「何だというのだ」
普段とは全く違うダバの様子にギャブレーも戸惑っていた。
「一体これは」
「リョクレイ」
クワサンはリョクレイの名を口にした。
「リョクレイ、何処にいる!?」
「どうした、クワサン」
リョクレイのガルーンがそこにやって来た。
「気分が悪い・・・・・・」
「気分が」
「そうだ。撤退していいか」
「・・・・・・・・・」
リョクレイはそう言うクワサンを見た。見れば戦える状況ではないのがすぐにわかった。
「わかった」
彼は頷いた。
「では下がるのだ。ここは私が受け持とう」
「済まない」
「ギャブレー、側にいてやってくれ。いいな」
「了解した。ダバ」
ギャブレーはダバに顔を戻してきた。
「今回の勝負は預けておく。ではな」
そしてこう言い残して戦場を後にした。後にはダバだけが残った。
「オリビー・・・・・・」
「ダバ」
そんな彼にリリスが声をかけてきた。
「わかってると思うけど」
「ああ」
ダバは力ない声で頷いた。
「わかってるさ。じゃあ戦いに戻るか」
「うん」
「ダバ=マイロード」
ここでリョクレイが彼に声をかけてきた。
「行くぞ」
「ああ。ではこちらも」
「うむ」
二人は戦いに入った。ダバはとりあえずはクワサンのことは頭の片隅に置いた。そして戦いに心を戻したのであった。クワサンとギャブレーが撤退してからも戦いは続いていた。そして敵の援軍が到着した。
「レーダーに反応!」
「敵の援軍ね」
ユリカはハーリーにこう応えた。
「はい、そうです」
「数は?」
「四百程です。何か新しい敵みたいですよ」
「バルマーじゃないの?」
「ちょっと違いますね。これは」
「これは!?」
「何だろう。バルマーに近いですけれど」
「宇宙から来たみたいな感じ?」
「はい。何か見たことないですね、この反応は」
「フフフ、ロンド=ベルの諸君」
その中央にいる緑の戦艦から声がした。
「その声は!?」
沙羅がそれに反応した。
「久し振りだな。元気そうで何よりだ」
「シャピロ、生きてやがったのか!」
「如何にも」
その声は忍の問いに応えた。
モニターに赤い髪と鋭い目を持つ男が現われた。シャピロ=キーツであった。かっては連邦軍に所属し、それを裏切ってバルマーに入った男である。先の戦いで戦死したものと思われていたのである。
「御前はあの時俺達が倒した筈だが」
亮が言う。
「それがどうして生きているんだよ」
「式部、バルマーを侮ってもらっては困るな」
「バルマーを」
「そうだ結城、あの時死んだのは私のクローンだ」
「ヘッ、バルマーお得意のやつだな」
「オリジナルの私は生きていた。これは事実だ」
「つまりあれは影武者だったということか」
「司馬、それは違うな」
「何!?」
「あのシャピロもまた私だった。そして今ここにいる私も私なのだ」
「何かよくわかんないや」
「わかる必要はない。どのみち御前達の運命は決まっている」
「どうせ俺達をぶっ潰すとか言うんだろ」
「察しがいいな、藤原」
「おめえの考えはもうわかってるんだよ」
忍は激しい表情でこう返す。
「またやってやるぜ。覚悟しな」
「結城」
ここでアランが沙羅に声をかけてきた。
「わかっているな」
「勿論だよ」
沙羅ははっきりとした声で返す。
「心配しないでいいよ」
「わかった。それでは信頼させてもらう」
「ああ」
「後ろは任せておけ」
「それじゃあ任せたよ」
「うむ」
アランはそれを受けていつも通りダンクーガのフォローに回った。シャピロはその間に戦艦の回りに展開するマシン達を見回して言った。
「これはムゲ=ゾルバドス帝国のものだ」
「ムゲ=ゾルバドス帝国!?」
「それは一体」
「ムゲ宇宙にある別の世界の国家だ」
イングラムがそれに答える。
「別の世界の」
「そうだ。その支配者であるムゲ=ゾルバドスもまた地球を狙っているのだ」
「つまり同じ目的でバルマーと同盟を結んでいるわけかよ」
「簡単に言うとそうなる」
豹馬にこう答える。
「だからこそシャピロはここにいるのだ。違うか」
「ふふふ、流石はイングラム=プリスケンだ」
シャピロはその話を聞いて笑みを受けベた。それは肯定の笑みであった。
「その通りだ。ムゲ=ゾルバドスはバルマーの協力者だ」
「やはりな」
「そして私は今その軍を率いて地球に戻って来た。宇宙を支配する為にだ」
「手前まだ諦めてなかったのかよ」
忍はそれを聞いてその目に嫌悪の光を宿らせる。
「そんな馬鹿げた夢見続けているのか」
「馬鹿げた夢ではない」
しかしシャピロはそう思ってはいなかった。
「私ならばできる。私は選ばれた者だからだ」
「愚かな」
だがイングラムはその言葉を一笑に伏した。
「何だと」
「愚かだと言ったのだ」
イングラムはまた言った。
「宇宙を支配するなど。その様なことは誰にもできはしない」
「私ならばできる」
「ではもっとはっきり言おうか。貴様では無理だ」
「何!?」
「貴様程度の器では無理だ。貴様は自分が思っている程優れてはいない」
「私を侮辱するのか」
「事実を言うことが侮辱ならばそうだ」
イングラムは言い返した。
「貴様は所詮駒に過ぎない。バルマーから見ればな」
「ふざけたことを言うな、私はその駒を使う者だ」
シャピロのその鋭い目に怒気が宿る。
「だからこそ私は今ここにいる。そしてこれを踏み台にして」
「神になるとでも言うのか?」
「そうだ」
彼は言い切った。
「私は宇宙の支配者、そして唯一の神となるのだ。その邪魔はさせん」
「邪魔をするつもりはない」
イングラムは冷たい声で言い放った。
「自らの器を知らぬ者は破滅する」
そして言う。
「貴様は俺が何もしなくとも自滅する。どうして邪魔をする必要があろうか」
「フン」
シャピロはもうこれ以上取り合おうとはしなかった。
「ではそこで見ておけ。私が神となるのをな」
「何も変わってねえな、あの馬鹿は」
リュウセイがそれを見て呟く。
「馬鹿もあそこまでいくと立派だぜ」
「おいリュウセイ」
ライが彼に声をかける。
「何だよ」
「あまりそう言うことは言うな」
「悪口はよくないってか?何か今日はやけに道徳的だな、おい」
「残念だが違う」
ライはこう返してすっと笑った。
「馬鹿に馬鹿と言っては悪いだろう」
「おっと、そっちか」
「そうだ。馬鹿だと言ってもわからないからな」
「そうだな。プライドだけは異常に高いからな」
「ああ」
「言ってくれるものだな」
ライの言葉通りであった。シャピロは態度を変えない。
「神をそこまで侮辱してくれるとは」
「フン、リュウセイ達の言ってることが正しいね」
今度は沙羅が言った。
「あんたは自分がわかっていないよ。他人を見下してばかりでね」
「戯れ言を」
「戯れ言かどうかはすぐにわかるさ。忍」
「おお、わかってるぜ」
忍がそれに頷く。
「今日はとりわけ派手に行くぜ!シャピロ、覚悟しな!」
「よし、俺達も行くぞ!」
「久し振りに何かこう熱くなってきたからね」
獣戦機隊が燃えた。ダンクーガのその身体が赤く燃えた。
「獣化したか」
アランはそれを見て呟いた。
「よし、これでこの戦いは勝った」
「勝ったのかよ」
「あの状態になったダンクーガを止められる者は存在しない」
アランはサブロウタに答えた。
「まあ見ておいてくれ。ダンクーガの本当の力をな」
「それじゃあお手並み拝見といこうか」
万丈が前に出て来た。
「僕達はサポートに回ってね」
「何言ってるんだよ、万丈さん」
そんな彼に勝平が声をかける。
「ダイターンは前面に出てもらわないと。貴重な戦力なんだから」
「おっと、そうか」
「俺達も前に出るからさ。派手にやろうぜ」
「それじゃあこっちも久し振りにあれをやるか」
「待ってました!」
勝平が声をあげる。
「やっぱいあれを聞くと違うんだよな」
「じゃあ行くよ」
「ああ、やってくれよ」
「それじゃあ」
万丈は構えに入った。
「世の為人の為、バルマーの野望を打ち砕くダイターン3!この日輪の輝きを怖れぬのならばかかって来い!」
「よし!」
それを聞いてむしろ勝平の方が気合が入った。
「じゃあ行こうぜ万丈さん!」
「何で御前が元気になるんだよ」
宇宙太が活気付く彼に問う。
「まあまあ堅いことは言いっこなし」
「確かに格好いいけれど。あたし達もあんな決め言葉があったらなあ」
「それじゃあ俺達も考えっか」
「もうザンボット=フォーメーションがあるだろ」
「おっと、そうか」
「ワン」
「ほらほら、君達も来るんだろ?」
万丈が彼等を茶化すようにして声をかける。
「早くしないと置いていくよ」
「あっ、いけね」
「早く動かせ勝平」
「やっぱり万丈さんみたいにはいかないのね」
そんなこんなでシャピロの軍とも戦闘に入った。その中心にいるのはやはりダンクーガであった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
忍が叫ぶ。断空砲でまずは小型の戦闘機達を薙ぎ払う。
「雑魚はどきやがれ!」
「ちょっと忍!こんなの相手に断空砲はないでしょ!」
「うっせえ!誰だろうが俺の前にいる奴は潰すだけだ!」
だが彼は沙羅の言葉にも耳を貸さない。完全に熱くなり我を忘れていた。
「どけ!シャピロの前に行ってやる!」
「相変わらず熱いね、どうも」
万丈がそれを見て呟く。
「僕もここはホットにいかなくちゃいけないかな」
「万丈さんがホットにいくなら俺達だって」
ザンボットも出て来た。
「派手にやらなきゃな」
「けれどムーンアタックは多用するなよ」
「あれって凄くエネルギー使うから」
「わかってらあ。とりあえずはザンボットクラップとかで雑魚の相手をしてりゃいいんだろ」
「わかってるじゃないか」
「勝平も忍さんと同じで熱くなり易いから。心配なのよ」
「俺はそれがウリなのさ」
「ウリじゃねえだろ、それは」
「無鉄砲っていうのよ」
宇宙太と恵子は突っ込みを入れる。
「ちょっとは後先考えてよね」
「毎度毎度エネルギー切れになってるからな」
「わかってらあ。じゃあここは静かに」
「断空砲フォーメーションだ!」
また忍が叫ぶ。そしてまた敵を薙ぎ払っていた。
「・・・・・・やっていいよな」
「そうだな。もう派手にやってる人はいるしな」
「ここはソフトに行きましょう」
「戦いにソフトなんてあんのか?」
「まあ細かいことは言いっこなしで。それじゃあやるか」
「おう」
万丈に応える。そして彼等も戦場に向かう。
「ダイターンキャノン!」
足から砲弾を放つ。それで敵のロボットを撃墜した。
「まずはこれで一機」
「一撃か」
「やっぱりダイターンって凄いわね」
「おい、俺達だってやるんだろ」
「おっと、そうか」
「おっとじゃねえよ宇宙太」
勝平はそれを聞いて拍子抜けした声を出した。
「いつもは俺の台詞だろ、それは」
「何かな、ダンクーガの派手な活躍に押されてな」
「何はともあれあたし達も行かなくちゃ」
「そうなんだよ。それじゃあ」
ザンボットは構えに入った。
「バスターミサイル!」
両膝の脇から円盤状のミサイルを放った。それで敵の小型戦闘機を撃墜した。
「まあざっとこんなもんだな」
「何だよ、接近戦はやらないのか」
「一気に近付けばいいのに」
「別にいいじゃねえか。敵を倒せりゃな」
「まあな」
「それじゃあ次行きましょう」
「おうよ」
「いけええええええええーーーーーーーーーーーーっ!」
目の前の敵に向かおうとしたところで後ろからカミーユの声がした。
「あらっ」
そして目の前にいる敵の戦闘機達が光の帯の中に消えてしまった。ゼータⅡのメガランチャーであった。
「うわ、一掃されたよ」
「勝平君、あまり余所見しない方がいいわよ」
ファがモニターに出て来て言う。
「ファさん」
「今カミーユも気合が入っているからね」
「ニュータイプに気合がか。こりゃ凄えな」
「何言ってやがる、御前だってザンボットのパイロットだろ」
「そうよ。そんなこと言ってる暇があったらまた敵に向かえばいいじゃない」
「何か今回俺言われっぱなしだな」
ブツブツ言いながらも恵子の言葉に従う。
「じゃあやるか」
そして目の前の敵をザンボットグラップで斬り裂く。その腕は決してニュータイプにも負けないものであった。
「ふむ」
シャピロは戦場を冷静に見ていた。そして自軍の戦闘機達が次々に撃墜されていくのも確認していた。
「やはり尋常な相手ではないな」
「やけに冷静だね」
戦艦のモニターにネイが出て来た。
「ネイ=モー=ハンか」
「こっちもかなりやられてるけれどね。何か策はあるのかい?」
「策か」
「あんたは策士だって話じゃないか。今それを見せてもらいたいもんだね」
「策はここぞという時に使ってこそ価値がある」
シャピロはネイに対してこう答えた。
「今はその時ではない」
「ヘン、出し惜しみかい」
「生憎私は挑発に乗るつもりはない」
だがシャピロはそれには取り合わなかった。
「今は只の様子見だ。頃合いを見て退こう」
「余裕だね、それだけ派手にやられてるのに」
「所詮地球の戦力なぞ知れている」
彼は落ち着いた言葉で続ける。
「何時でも潰せる。我々は言うならば猫だ」
「で、地球が鼠だってわけかい」
「そうだ。鼠を始末するのを楽しんでいるだけだ」
「それじゃあ精々猫のふりを続けるんだね」
ネイはシャピロに対してやや冷たい言葉を送った。
「それで足下を救われない様に祈るよ。前の時みたいにね」
そう言ってモニターから消えた。シャピロは彼女が姿を消すと急にその顔を歪めさせた。
「言える時に言っておくがいい。後になって後悔しないようにな」
彼のプライドが見えていた。だがそれに気付いたのは彼以外にはいなかった。
戦いは続く。しかしその中でもダンクーガはシャピロの乗る戦艦に次第に近付いていた。
「そこを動くな、シャピロ!」
忍は左右に剣を振る。それで敵を払っていく。
「ここが貴様の墓場だ!覚悟しやがれ!」
「ここまで来たか藤原」
シャピロはダンクーガを見据えて言った。
「よく来た。それは褒めてやろう」
「ヘッ、手前になんか褒められても嬉しかねえぜ」
「そうか。では何が望みだ」
「わかってる筈だ、手前の首だ」
彼は言う。
「覚悟しやがれ!この断空光牙剣で決めてやるぜ!」
「生憎私は貴様にやられるわけにはいかない」
だがシャピロはそれに対してクールな言葉で応じた。
「私はこれから銀河の神になるのだからな」
「また言ってやがるな」
リュウセイがそれを聞いて侮蔑した様に呟いた。
「神だ神だってそんなに偉くなりたいのかよ」
「分不相応な野心だな」
レビも言った。
「あの男は。昔からそうだった」
「らしいな」
ライが応える。
「それは聞いていた」
「そう、自分以外の存在を認めない」
「人間としては最低な奴だな」
「バルマーにおいてもそうだった。そこはシロッコと似ていた」
「シロッコと」
カミーユがそれに反応する。
「そうだ。互いに敵視し合っていたがな。そこは同じだった」
「つまりあいつはシロッコと同じか」
「いや、人間としてはシロッコより酷いな」
アランが言う。
「自分以外の存在は利用するだけだからな」
「その通りだ」
レビはアランの言葉に応えた。
「だからこそバルマーに入ったのだろうがな。地球を裏切って」
「全ては権力の為だ」
イングラムも言う。
「あの男にはそれしかない」
「なあ忍さん」
そこまで聞いてリュウセイは忍に対して問う。
「そんな奴等に負けていいのかよ」
「何馬鹿なこと言ってやがる」
だが忍はそれに対して怒気で返した。
「俺達がこんな奴に負ける筈ねえだろうが」
「忍の言う通りだ」
亮も言った。
「少なくとも俺達は自分のことがわかっている」
「そうだね」
雅人がそれに頷く。
「俺達は結局戦うだけしかできないからね」
「あれっ、バンドもやってたんじゃ?」
「それはそれ、これはこれだよ」
雅人は明るい調子でリュウセイに返す。
「違うかい?」
「まあそれはそうだけれど」
「だからだよ。自分が神になろうなんて思わないのさ」
最後に沙羅が言った。
「シャピロ、あんたはそうやって上ばっかり見ていればいいさ」
「ふん」
「けれど上ってのは何処までもあるんだよ。見続けていても果てはないんだ」
「それでは最後まで上がってやろう」
やはりシャピロはシャピロであった。他の者の言葉なぞ受けはしない。
「そして神になろう。この宇宙に君臨する至高の存在にな」
「そんなのはあの世で言いやがれ!」
忍がまた叫んだ。
「これを受けてな!くたばれ!」
そしてダンクーガは断空砲を放った。それでムゲ戦艦を撃つ。
その腹にまともに直撃した。それで戦艦の動きが止まった。
「むっ」
「もう一撃だ!これで決めてやる!」
忍はまた攻撃に移ろうとする。だがそれは別の者によって阻まれてしまった。
「シャピロ長官」
新たな戦艦が戦場に姿を現わした。その砲撃で断空砲を打ち消してしまった。
「そのダメージでは満足に戦えまい。ここは退くのだ」
穏やかな声であった。およそ戦場にあるものではない。
「!?」
その声を聞いてタケルの顔が変わった。
「タケル、どうしたの!?」
「様子がおかしいよ」
それに気付いたミカとナミダが声をかける。
「この声は」
「この声!?」
「声が一体どうしたの?」
「後は私が引き受ける。ポセイダル軍も下がれ」
「間違いない」
タケルは今度は確信した声を漏らした。
「この声は・・・・・・」
「マーグ司令」
「何っ、マーグだと」
今度はケンジが声を出した。シャピロの言葉を聞いてであった。
「マーグが、馬鹿な」
「あの時に姿を消した筈だ。それが何故」
「マーグ様はバルマー軍地球鎮圧部隊の司令官であられる」
ロンド=ベルのモニターに緑の髪の少女が姿を現わした。
「御前は」
「ロゼ」
少女は名乗った。
「バルマー帝国辺境方面軍第一艦隊副司令官にしてマーグ様の副官だ」
「ではマーグは」
「そうだ。バルマーの司令官であられる。爵位は騎爵であられる」
「兄さんが、そんな」
タケルはその言葉を信じることができなかった。
「バルマーの司令官だなんて」
「いや、だがこれは事実だ」
ケンジは狼狽する彼にそう言うことしかできなかった。
「隊長」
「あれはマーグの声なんだな」
「はい」
タケルはその問いに頷いた。
「そうか、では間違いないな」
「けれど何故」
タケルは暗い顔で呟いた。
「兄さんが。またバルマーに」
「おそらく洗脳されたのだろうな」
「洗脳!?」
イングラムの言葉に顔を向けた。
「そうだ。バルマーは洗脳技術にも長けている」
「じゃあそれで」
「おそらくな。君の兄さんはバルマーに洗脳されたのだ。そして指揮官になっている」
「そんな・・・・・・」
「だがそれは解くことができる」
「本当ですか!?」
「ああ、だから安心して欲しい。きっと君の兄さんは元に戻る」
「兄さん・・・・・・」
「シャピロ司令」
マーグはその間にもシャピロ達に対して声をかけていた。
「ここは下がるのだ。いいな」
「わかりました。それでは」
「ポセイダル軍も下がってくれ。御苦労だった」
「えっ」
ネイ達はその御苦労という言葉に反応した。
「司令、今何と」
「御苦労言ったのだが。それが何か」
「い、いえ」
まさか驚いたとは言えなかった。バルマーの司令官達はラオデキアを筆頭として不遜な態度を取る者が多い。その為彼等はマーグの優しい言葉に戸惑いを覚えたのである。
「下がってくれ。おして傷を癒すように」
「は、はい」
「わかりました、司令」
それを受けてネイもリョウレイも兵を退いた。そして戦場にはロンド=ベルとマーグの軍だけが残る形となった。
「さて」
マーグはその整った中性的な顔をロンド=ベルに向けた。
「はじめて、ロンド=ベルの諸君」
次に彼は挨拶をかけてきた。
「先にロゼの説明があった通り私はバルマー帝国辺境方面軍第一艦隊司令マーグ」
彼は名乗った。
「マーグ!」
「君達に話したいことがあってこちらにやって来た。いいかな」
「ヘン、聞くまでもねえだろうがな」
甲児が減らず口混じりに言った。
「話してみやがれ。聞いてやるぜ」
「司令に対して」
「待て」
マーグは前に出ようとするロゼを窘めた。
「わかった。では言おう」
マーグは話しはじめた。そしてロンド=ベルは動きを止めそれを聞きはじめるのであった。

第七十二話完

2006・2・6  
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