スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第六十九話 ビムラーの動き
第六十九話 ビムラーの動き
「御主人様、御主人様」
一匹の小鳥が紫の髪の青年に声をかけていた。
「何ですか、チカ」
シュウはその小鳥の名を呼んで顔を向けてきた。
「今度はドクーガが動き出しましたよ」
「そうですか」
シュウはそれを聞いて小さく頷いた。
「どうやらこちらも予想通りですね」
「予想通りですか」
「はい、問題はここからです」
シュウは静かな声で述べた。
「ロンド=ベルもね。おそらく過酷な戦いになるでしょうね」
「そうなんですか」
「そう、特にマーズさんが」
「マーズさん?ああ、彼ですね」
チカはそれが誰か気付いた。
「彼なら大丈夫じゃないんですかね」
「いえ、わかりませんよ」
何となく答えたチカに対してこう返す。
「彼は戦士としてはまりにも優しいです。そして」
「そして?」
「いえ、これから先は言わないでおきましょう」
シュウはここで言葉を止めた。
「後のお楽しみということで」
「チェッ、またですか」
チカはそれを聞いて口を尖らせた。
「御主人様っていつもそうなんですから」
「フフフフフ」
シュウは思わせぶりに笑うだけであった。そして部屋を後にする。そして何処かへと姿を消すのであった。
「早瀬君」
グローバルがマクロスの艦橋で未沙に声をかけていた。
「はい」
「パナマ運河まであとどれ位かな」
「一時間程です」
未沙は落ち着いた声でこう返した。
「一時間か」
「そろそもマシンの発進をかけておいた方がいいと思いますが」
「そうだな」
グローバルはその言葉に頷いた。
「では全機に発進用意を命じておいてくれ」
「わかりました」
「そしてドクーガの動きに関しての調査はどうなっているか」
「今彼らはカリブ海におります」
今度はクローディアが答えた。
「カリブ海か」
「そこから進撃しております」
「思ったよりも普通だな」
「普通ですか」
「うむ、ドクーガだからな」
グローバルは腕を組みながら静かにこう述べた。
「いきなり派手にくると思っていたのだが」
「彼等もそういつも派手なことはしてはこないでしょう」
「そうかな」
「このままいけばパナマ運河には順調に到着しますし。そこでドクーガを迎え撃ちましょう」
「そうするとするか。しかし最近は基地や街を守る戦いが多いな」
「これも何かの縁ですね」
「そういうものかな」
こうしてロンド=ベルはパナマ運河に無事到着し陣を敷いた。そしてそこでドクーガを待ち受けるのであった。
「そういやドクーガって何なんだ?」
「ってバサラ」
ミレーヌがバサラの言葉にキョトンとした。
「あんたもしかして今まで知らなかったの?」
「悪い奴等だってことは知ってるけれどよ」
「そういう問題じゃないでしょ。何で今まで知らなかったのよ!」
「俺は戦うのははじめてだぜ」
「そうじゃなくて!敵の組織のこと位頭に入れておきなさいよ!」
「ヘッ、敵のことなんて知ってもなあ、そんなのは戦いを終わらせる為には何もなりゃしねえんだよ!」
ここまでの暴言は流石に今までなかった。忍や勝平ですら遥かに凌駕する言葉であった。
「必要なのはな、歌だ!」
彼は言う。
「どいつもこいつも俺の歌を聴きやがれ!そうしたら戦いなんて一発で終わるぜ!」
「あんたの頭の中はどうなってるのよ!」
ミレーヌがまた叫ぶ。
「敵のことさえ知らないで戦っても負けるだけでしょうが!」
「安心しな、俺は負けたりはしねえぜ!」
「あんただけよ、そんなこと思ってるのは!」
こうしていつもの口喧嘩に入った。真吾達はそれを見てにこやかに笑っていた。
「微笑ましいねえ、どうも」
キリーがバサラとミレーヌを見て楽しげに言う。
「仲良きことは美しきかな」
「あら、そうきたの」
レミーがそれを聞いて言葉をかけてきた。
「何か、マドモアゼル」
「私はてっきり若いっていいとか言うと思ったわ」
「おやおや、それはレディーらしくない御言葉」
「生憎歳はくってるからね」
レミーは自嘲を交えて言う。
「ああした若さを見たらやられちゃうのよ」
「おやおや」
「私も。たまには燃えるような恋がしたいわ」
「最近そうした言葉が多いな」
真吾がそこで突っ込みを入れる。
「どうしたんだ、また」
「ティーンエイジの若さにやられたのよ」
レミーはこう返す。
「ロンド=ベルってヤングが多いから」
「そのヤングって言葉からして古いな」
「仕方ないでしょ。私達はアダルトなんだから」
「アダルトねえ」
「大人は大人らしくヤングを見守っていればいいのよ。けれど妬けるわね」
「その心配はないと思うぜ」
「どういうこと、キリー」
「もうすぐあのブンドルが来るからさ。また色々と言うんじゃないかな」
「ブンドルもねえ」
レミーはここでわざと困った顔を作った。
「個性が強いから」
「あの三人の個性はまた凄いからな」
「アクが強いっていうかねえ。まさかドクーガの三人があんなのだとは思わなかったわ」
「あんなのとは心外だな、マドモアゼル」
「おや」
「言った側から」
ドクーガの三隻の戦艦がパナマ運河の東に姿を現わした。
「私達は赤い糸で結ばれているというのに」
「何かいつも言われるけれどね、それ」
レミーはブンドルにこう返す。
「実際そんなものはないんじゃないかしら」
「夢のないことを」
「だって私とあんたは敵同士だし。どう見たって脈はないわよ」
「それは杞憂だな」
「杞憂ってここで使う言葉だったかな」
「さて」
真吾とキリーは互いに囁き合う。
「敵同士だからよいのだ」
「あら、新解釈」
「ロミオとジュリエットがそうだったように」
「ロミオとジュリエットか」
「また面白い話を出してきたな」
京四郎がそれを聞いて呟く。
「どうやらここにもロミオとジュリエットがいるらしい」
一矢をチラリと見ながら言う。
「許されぬ愛。だがそれへの成就に向けて燃える二人。それこそが」
そしてここで薔薇を掲げた。
「美しい・・・・・・」
「よし、これで前口上は終わったな」
カットナルが前に出て来た。
「ロンド=ベル、久し振りだな」
「おや、カットナル上院議員。どうしてここに?」
「何故それを」
万丈の言葉に反応する。
「いえ、何故ここにおられるのか気になりまして」
万丈はさらに言う。
「どうしたんですか?会社の宣伝ですか?」
「ええい黙っておれ!わしはカットナル上院議員などではない!」
「・・・・・・どう見てもカットナル上院議員よね」
「あんな目立つ人そうそういないし」
エルとルーがそれを聞いてヒソヒソと囁く。
「我が名はスーグ=ニ=カットナル!カットナル上院議員では決してないぞ!ましてや製薬会社とも一切関係はない!わかったか!」
「自己紹介しちゃってますよ、あの人」
メグミが呆れた声で言う。
「ううん、狙っているのかしら」
ハルカも首を傾げている。
「大体お主も財閥を放っておいて何をしているか!」
「何で僕が財閥を持っているって知っているのかな」
「勘だ!」
「うわ、凄い強引」
「ここまで強引だと流石に黙るしかないわね」
アクアとエクセレンも困った顔をしていた。
「わしの勘を舐めるな!それにわし等はただ何もなしでここに来たわけではない!」
「そうよ!かみさんから貰ったお小遣いを奮発してやって来たのだからな!」
ケルナグールも出て来た。
「覚悟せよロンド=ベル!今度こそビムラーを手に入れてやるわ!」
「今かみさんって言わなかったか?」
ケーンがそれに気付いた。
「あれ、あの人結婚してるんだぜ。知らなかったのか?」
タップがそこで突っ込みを入れる。
「そうなのか」
「ああ。それもかなりの美人だぜ」
「マジかよ。世の中何があるかわからねえな」
「蓼食う虫も好き好きってね」
「こら、そこ!」
ケルナグールはドラグナーチームの三人に反応してきた。
「今何と言った!」
「ゲッ、聞こえてたのかよ」
「わしの耳は地獄耳だ!ボクサーを舐めるな!」
彼は叫ぶ。
「わしのかみさんは心からわしを愛してくれておる!そしてわしもだ!」
「ううむ」
「世の中は本当に不思議だな」
「これがその写真よ!」
「何と!」
それを見ていつもはクールなライトも思わず叫んだ。
「ちょっと待てライト」
だがそこでケーンがクレームをつけた。
「御前が何と!はねえだろ」
「おっとそうか」
「そうそう、御前の言う何と!は」
タップも言う。
「わかってるさ。それじゃあ」
ライトもわかっていた。そして構えを取り直して言う。
「何とおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!これでいいな」
「上出来上出来」
「やっぱその声だとそれだよ」
だがそれだけ叫ぶ価値はあった。ケルナグールが出してきた写真には恐るべき光景が映っていたのだ。
似合わないタキシードに身を包んだケルナグール。そしてその横には純白のドレスに身を包んだブロンドの美女がいたのである。それは美女と野獣そのものであった。
「コラですね」
「違います」
ルリがユリカに突っ込みを入れた。
「ううむ」
これにはさしものブライトも考え込んでいた。
「話には聞いていたが」
「実際に見るとな。現実だったなんてな」
アムロも言う。この二人でさえこの反応であった。
「ハッハッハ、どうだ驚いたか!」
ケルナグールは呆然とする彼等に対して自信満々で胸を張っていた。
「わしのかみさんだ!美人でとても優しいのだぞ!」
「全く。世の中には不思議なこともある」
味方である筈のブンドルまでこう言う。
「どうしてこの様な男に」
「ん!?羨ましいのか」
ケルナグールは彼に対しても得意気に言う。
「わしのかみさんは世界一よ。そしてわしは世界一の幸せ者よ!ワッハッハ!」
「どうもあの声の手合いってのは家庭的に恵まれるみたいだな」
「博士が言うと説得力がありますね」
「そうかな」
ピートが大文字に対して言っていた。
「ではそろそろ行くとするか!覚悟はよいか!」
「とっくにできてるぜ」
ジュドーが返す。
「何かドクーガとやる時は前口上がやたら長いんだよな」
「というか戦ってる方が短いな」
シリアスなカミーユですら同意見であった。
「フン、前口上は戦いの前の当然の儀礼よ」
「それがわかわぬとは無粋な」
「美しさを解さぬことだ」
ケルナグール、カットナル、ブンドルはそれぞれ言った。
「何かこんな時だけタイミング会うね、この三人」
モンドがそれを見て言う。
「それだけは見事だね」
「俺達だってああはいかねえけどな」
ビーチャも頷いていた。
「あたし達でも無理だよね」
「少なくともあたしは変態にはなりたくないぞ」
「コラ、そこの小娘!」
カットナルはプルとプルツーの言葉にすぐに反応してきた。
「変態とは何だ、変態だと!」
「わし等を捕まえて変態とは!訂正するがいい!」
「何ということだ。美しき少女が」
「変態じゃなかったら変な人かしら」
「アム、そのままだぞ」
レッシィが突っ込みを入れる。
「うぬうう、もう許してはおけぬ」
「最早これまで。全軍攻撃に移れ!」
「では今日の曲を選ぶとしよう」
ブンドルは落ち着いた声で述べる。
「曲は」
「そうだな」
ブンドルは優雅な動作で部下に応える。
「グリーグがいいな」
「ではベールギュントより朝の気分は如何でしょうか」
「うむ、それを頼む」
「わかりました」
こうして曲がはじまった。ブンドルは静かに目を閉じ曲に聞き入りはじめた。
「素晴らしい。これこそ戦いを清らかにするものだ」
「ふむ、確かにいいのう」
ケルナグールもこの曲に聞き入っていた。
「わしも気に入ったぞ。お主の選ぶ曲にしてはいいではないか」
「そう。私の選ぶものは全て完璧なのだ」
相変わらず優雅な動作で言う。
「そしてこの曲を前に行われる戦いはさらに」
紅のワインが入ったグラスを掲げる。
「美しい」
「さてと、前口上はやっと終わりか」
「何か段々長くなってる気もするが」
ナンガとラッセが述べる。
「やるぜ!覚悟はいいな!」
「言われずとも!」
「やらせはせん!やらせはせんぞ!」
「戦いは・・・・・・いいものだ」
それぞれ名乗りをあげてロンド=ベルに向かう。早速三隻の戦艦からインパクター達が出て来る。
「何だ、御主等それしかないのか」
ケルナグールがまずそれに気付いた。
「そういう御主はどうなのじゃ」
カットナルがそれにすぐ返す。
「インパクターだけでやるつもりだったのか」
「フン、わしは今お小遣いが足りないのじゃ」
「何だと!?」
カットナルはそれを聞いて眉を顰めさせた。
「さっき奮発してもらったと言っておったではないか」
「あれは言葉のあやよ!わしのかみさんからのお小遣いは一週間に九千九百九十九万九千九百九十九ドルと決められておるのじゃ!わしもそれ以上もらう気はないわ!」
「そんなことは早く言え!」
「いつも言っておろうが!」
「それってお小遣いの額か?」
「ギャグ・・・・・・じゃねえよなあ」
甲児と宙がそれを聞いて呟く。
「あのおっさん以外と大金持ちなんだ」
「しかも美人の奥さんもいてか。何かすっげえ恵まれてねえか、おい」
「フン、わしは宇宙一の幸せ者だと言っておろうが!」
ケルナグールはそんな二人に叫ぶ。
「わしのお小遣いはかみさんからわしへの愛のほんのささやかな一つに過ぎん!どうじゃ、羨ましいじゃろう!」
「とにかくだ」
カットナルは言った。
「お主は今何も持ち合わせはないのじゃな」
「うむ」
「全く。ではやはりわしがメインになるか」
「カットナル、私もいるが」
「御主も御主で今苦しいのではないのか」
「何のことだ?」
「この前の作戦の費用は一括払いだった筈だが」
「な、何故それを・・・・・・」
グラスをゴトリ、と落とした。だが下に高価な絨毯を敷いているので割れはしない。
「フン、どうやら図星だったようだな」
カットナルはそれを聞いてニヤリと笑った。
「では今回のメインは無理だな」
「クッ」
「ではわしがメインを張らせてもらおう。久し振りのロンド=ベルとの戦いのな」
「フン、勝手にやるがいい」
「ではお手並み拝見といこう」
「それでは見ているがいい。いでよ、三十五身合体ロボ!」
「三十五身!?」
「またえらく派手にでたなあ」
甲児と宙がまた言う。
「フン、五つや六つなどと甘いものではないぞ!」
「ゴッドマーズに喧嘩売ってるつもりかな」
「さて」
コウとキースも呆れていた。だがカットナルはそれでも続けた。
「ゴッドネロス!さあロンド=ベルを始末するのだ!」
「また御大層なものを出してきたのう」
「美しくない」
「ええい、外野は黙っておれ!」
カットナルはこう叫んで二人を黙らせる。
「ドクーガ広報部が総力をあげて作り上げたこのマシン!これで今回こそロンド=ベルを始末してくれるわ!」
「広報部!?」
マサキがそれを聞いて眉を動かした。
「今あの変なおっさん広報部って言ったよな」
「確かに言ったニャ」
クロがそれに答える。
「何で広報部なんだ?」
「さて、ドクーガのことはわけわからないニャ」
「わかんねえか」
「きっとおいら達じゃわからない変な事情があるんだよ」
「ええい、猫までドクーガにあれこれ言うか!」
カットナルはそれを聞いてまた激昂した。
「トランキライザー、トランキライザー・・・・・・」
トランキライザーを出してきれそれを掴む。そして口の中に投げ入れて飲み込んだ後で言う。
「ふう、それでだ」
「うむ」
ケルナグールがそれに合わせる。
「行けゴッドネロス!あのやかましい連中を粉砕せよ!」
「チッ、やっと来やがったかよ!」
マサキが前に出ようとする。
「図体がでかいだけじゃ何にもならねえんだよ!今それを教えてやるぜ!」
「待った、マサキ」
しかしここでゴーショーグンが前に出て来た。
「真吾さん」
「やっぱりドクーガといえば俺達だしな」
「出番は自分で調達しないとね」
「そういうこと。坊やは今回はサポートに回ってくれ」
「坊やってよお」
「まあマサキここはゴーショーグンに任せるニャ」
クロがかかさず言った。
「あたし達はその他の敵を倒して」
「そうそう。やっぱりいつもメインってやけにはいかないよ」
「チェッ、わかったよ」
マサキは二匹のファミリアの言葉に仕方なく頷いた。
「それじゃあ行くか。頼んだぜ」
「あたし達に任せるニャ」
「大船に乗ったつもりでいてくれよ」
サイバスターはゴッドネロスをゴーショーグンに任せて戦場を変えた。そして他の敵に向かうのであった。
「さてと」
真吾はゴッドネロスを前にしてまずは一言出した。
「これはまたかなり大きいな」
「大きさは問題じゃないわよ」
レミーがここで言う。
「大事なのは固さ」
「何か誤解を招く言い方だね、そりゃ」
「いや、その通りだな」
「おいおい、そうなのかよ」
「問題はこのゴッドネロスの装甲だ。果たしてどれ位か」
「あとは耐久力」
「その表現もなあ」
「けれどそれも問題だ。レミーの言葉は結構的を得ている」
「ほら見なさい」
「けれどもうちょっと言い方を工夫しような」
「思わせぶりな表現はレディーの魅力を高めるのよ」
「さてさて」
「フン、ゴッドネロスの装甲と耐久力とな」
「あんたには聞いてねえんだけれどな」
「まあここはちょっと聞いてみよう」
「いい心掛けだ、北条真吾」
「久し振りにフルネームで呼ばれたけれど聞きたくて聞いているわけじゃないからな」
「フン、まあよい」
「結局話したいだけなのね」
「難儀なおっさんだな」
「このゴッドネロスの装甲はまさに鋼の装甲よ」
彼は誇らしげに説明をはじめた。
「これを打ち破るのは無理よ!例えゴーショーグンといえどな」
「あんなこと言ってるぜ、真吾」
キリーが言う。
「聞こえてるよ。またお決まりの台詞だな」
「ワンパターンなのかしら」
「ワンパターンなぞドクーガにはどうでもよいことよ!」
カットナルは居直ってきた。
「それよりも如何にビムラーを手に入れるかだ!わかっておろう!」
「そのビムラーもずっと忘れてたっぽいけどな」
「ウッ」
真吾の言葉にギクッとなる。
「まあそれはいい。では自信があるんだな」
「そうでなければ投入なぞはせん!」
「わかった。それじゃあレミー、キリー、行くぞ」
「了解」
「久し振りに戦いではメインだね」
ゴーショーグンは前に出た。その手にゴースティックが現われる。
「ゴースティック!」
それでゴッドネロスに攻撃を仕掛ける。だが大したダメージは与えられない。
「ムッ」
「フン、その程度では無駄なことよ」
カットナルはそれを見て勝ち誇る。
「ゴッドネロスの装甲はゴースティック如きでは破られはせぬ」
「そか。それじゃあやり方を変えるか」
「どうするつもり、真吾」
「まあ見ていてくれ」
レミーに軽く返す。そしてゴッドネロスと間合いを離す。またその腕に何かを出してきた。
「ゴーバズーカ!」
今度はバズーカを出してきた。そしてその照準を定める。
目標は胸であった。一撃で決めるつもりであった。
攻撃がゴッドネロスの胸を撃つ。直撃であった。
「やったか!?」
だがそれは効果がなかった。やはりゴッドネロスは健在であり平気な顔をして戦場に立っていた。
「あらら、効果なし」
「これはまた」
レミーとキリーがそれを見て声をあげる。真吾もだ。
「どうやらカットナルの言ったことは本当らしいな」
「当然だ!」
カットナルはさらに勝ち誇る。
「このゴッドネロスは対ゴーショーグン用に開発建造されたものだ!ゴーショーグンに対しては無敵よ!」
「あんなこと言ってるぜ、真吾」
「ううむ、弱ったな」
だがあまり弱ったようには聞こえない。
「例えビムラーでも倒すことはできぬ!」
「おっと、それがあったか」
真吾はそれを聞いて気付いた。
「もう、しっかりしてよ」
「俺達がビムラーを忘れちゃ流石にまずいからな」
「すまないすまない」
真吾は謝りながら構えに入った。
「それじゃ派手にいくか」
そしてゴーフラッシャーの発射準備に入った。その時だった。
「んっ!?」
「何かいつもと違うわね」
「ああ。こんなに強かったけな」
まずは三人が気付いた。
「ビムラーの力が強まっているどういうことだ?」
「何か妙だぞ」
今度はドクーガの三人が気付いた。
「どうやらゴーフラッシャーを撃つつもりのようだが」
「前見た時よりもエネルギーがあがっておらぬか?」
「ビムラーがパワーアップしているのか。いや、違うな」
「違う!?」
「どういうことだブンドル」
カットナルとケルナグールは彼に問う。
「成長している」
「成長!?」
「ビムラーがか」
「そうだ。そう考えて問題ないだろう」
彼は言った。
「成長するエネルギー、それがビムラーだったのか」
「わし等が追っていたエネルギーは」
「その様なものであったか」
「それじゃあその力を見せてくれよ」
真吾は言った。
「成長した力をな。じゃあ行くぞ!」
「了解」
「派手に一発いこうぜ」
「ゴーフラッシャーーーーーーーーーッ!」
真吾はそれに応えて今緑の数条の光を放った。そしてそれで敵をゴッドネロスを撃った。
「ムッ!?」
「さて、その成長したビムラーの力」
「どれ程のものか見せてもらおう!」
カットナル、ブンドル、ケルナグールはそれぞれそのビムラーを見据えた。見ればゴッドネロスは光を受けそのまま動きを止めていた。
「やれるか」
「やられるか」
六人は互いに言い合う。だがそれは一瞬のことであった。
ゴッドネロスの身体が大きく揺れた。そして緑の光に包まれる。そしてその中へと消え去ってしまったのであった。
「よし、どうやら成長してるのは本当のようだな」
真吾はそれを見て言った。
「ビムラー、素晴らしい力だ」
「何ていうか神懸かり的よね」
「全く。あんなでかいのを一発で消したんだからな」
「あれが成長したビムラーの力か」
ブンドルは消えていくゴッドネロスと緑の光を見ながら呟いた。
「成長している神秘的なエネルギー、そして緑の光」
彼はグラスを手にしながら言う。
「その謎も全てが」
そして決める。
「美しい・・・・・・」
「作戦は失敗したのにか?」
そんな彼にケルナグールが突っ込みを入れた。
「いいところで無粋な突込みは止めてもらおうか」
「いや、じゃが本当のことだぞ」
「ゴッドネロスは消えたしわし等の軍もあらかたやられてしまった。残っておるのはわし等だけだぞ」
「何時の間に」
カットナルの言葉に気付き周りを見る。見れば確かにその通りであった。
「撤退するぞ、こうなっては仕方がない」
「名誉ある撤退か」
「そういうことじゃ。それでは闇に沈む者らしく」
「美しく退くとしよう。それではマドモアゼル=レミー」
「シーユーアゲイン」
最後にレミーが言った。こうしてドクーガは戦場から去って行ったのであった。
「終わったな」
「何ていうかとにかく騒がしい連中だな」
「まあ何となく憎めないところはあるがね」
鉄也と甲児、そして大介が口々に言う。
「何はともあれ戦闘は終わりだ。パナマ運河は守られた」
「それはいいけどよ」
だが甲児はまだ大介に対して言う。
「わかってるよ、甲児君」
大介も彼が何を言いたいのかわかっていた。
「彼等のことだろう」
「ああ。ビムラーが前より強くなってるよな」
「そうだな。これは一体どういうことなのか」
彼等の目はゴーショーグンに集中していた。そしてラー=カイラムに集まり話をはじめるのであった。
「正直に言うと俺達にもさっぱりわからないんだよな」
まずは真吾が言った。
「ビムラーのことは。俺達は気付いたらグッドサンダーチームになっていたわけだし」
「そういうえばそうだったな」
竜馬がそれを聞いて頷く。
「君達はそれぞれ複雑な事情があったとは聞いているけれど」
「まあね。大人には色々と過去があるのよ」
レミーがそれに応えて言う。
「まあそれは知っていると思うけれど」
「ああ」
万丈がそれに頷いた。その言葉通りグッドサンダーの三人は過去があった。
真吾は国際平和守備隊にいた。そしてレミーは娼婦の娘だった。キリーはサウスブロンクス出身でマフィアであった。
そして様々ないきさつでサバラスにスカウトされたのだ。あまり明るいとは言えない過去であった。
「俺達はただゴーショーグンに乗っているだけというところがあるんだ」
「詳しいことは私達にもわからないのよ」
「何とも妙な話だけれどな。どっちかっていうとサバラスの話だな」
「サバラスさんの」
ファがそれを聞いて呟く。
「それじゃあちょっと今すぐに確かめるというわけにはいきませんね」
「いえ、そうとは限りませんよ」
だがここでOVAが出て来た。
「OVA」
「サバラス隊長とは私が連絡をとることができます」
「そうだったのか」
「何でしたら今すぐにでもとりますが。どうしましょうか」
「言うまでもないことだな」
隼人が言った。
「こっちとしても聞きたいことだ。OVA、悪いがすぐに連絡をとってくれ」
「わかりました、それでは」
「ああ」
こうしてOVAはその目から映像を出した。そしてホノグラフィーにサバラスが姿を現わしたのであった。
「私に用があるようだね」
まず彼はこう言った。
「ビムラーのことかな」
「はい、そうです」
万丈が応えた。
「実は先程のドクーガとの戦いでどうやら成長しているように見受けられましたので。それでお話を窺いたいと思いまして」
「そうか、気付いたか」
サバラスはそれを聞いてこ呟いた。
「気付く」
「そう。ビムラーは成長する。そして意志を持っているんだ」
「意志を!?」
「馬鹿な、エネルギーが意志だなんて」
真吾達も驚きを隠せなかった。
「だがこれは本当のことだ」
サバラスは驚く彼等に対してまた言った。
「今はこれ以上は話すことはできないが。成長し、意志を持つエネルギーだということはわかってくれ」
「何かあまりわからないわね」
「大事なところは後のお楽しみってわけか」
「そう考えてくれればいい。いずれ全てがわかる時が来る」
「全てが」
「そうだ。その時こそケン太も君達も本当の目的を知るだろう。その時まで戦ってくれ」
最後にこう言った。
「それでは」
そして彼は姿を消した。サバラスの言葉はこれで終わりであった。
「何か正直あまりよくわからなかったな」
真吾がまず言った。
「意志を持ち成長するエネルギー」
「何か夢みたいな話だけれどね」
「ところが夢ではないときた。また狐につままれたみたいな話だな」
「そうですね。私もちょっと理解できません」
OVAも同じであった。真吾達三人に対して言う。
「どうなるんでしょう、これから」
「少なくともゴーショーグンの力はパワーアップした」
「それだけじゃないけれどね」
「けれどわからないうちはそれでよしとしとくか。あまり深刻に考えるのは俺達の柄じゃないしな」
「そうね。とりあえずはこのままってことね」
「ああ」
謎は残ったままであったがこれでとりあえずビムラーの話は終わった。彼等は釈然としないながらもそのままラー=カイラムのブリーフィングルームに残っていた。
「日本に向かうか、とりあえず」
アムロが言った。
「今は考えても仕方がない。それよりも日本に来ようとしている敵を迎え撃とう」
「そうだな」
ブライトがそれに応えた。
「まずは他の敵を倒すことを考えよう。ビムラーは後回しだ」
「それじゃあ早速行くか」
「よし」
甲児も言う。皆それに頷き立ち上がろうとする。その時だった。
「ちょっと待って下さい」
ここでトーレスが部屋に入って来た。
「何かあったのか」
「はい、アラスカでリクレイマーが確認されたそうです」
「リクレイマーが」
ロンド=ベルの面々はそれを聞いて眉を動かした。
「そしてジョナサン=グレーンの姿も確認されています」
「ジョナサンも」
勇がそれを聞いて声をあげた。
「一体何を」
「勇、行った方がいいよ」
そこでヒメが声をあげた。
「ヒメ」
「何かある。絶対何かあるよ」
「しかし日本に行くから」
「いや、まだいい」
だがここでブライトはこう言った。
「日本に行くまでにはまだ時間がある。それにリクレイマーがいるとなるとそちらにも軍を向けなければならない」
「リクレイマーもまた私達にとって敵なのだから」
ミサトも言った。参謀である彼女の言葉はかなりの重みがあった。
「そうですね、ブライト艦長」
「ああ」
「それではすぐにアラスカに向かいましょう」
「アラスカかあ」
それを聞いてアスカが嫌そうな声を出す。
「どうかしたのかよ」
「ちょっとね」
甲児に言葉を返す。
「あそこすっごく寒いから」
「何言ってるんだよ、戦ってりゃそんなこと言ってられっかよ」
甲児はそんな彼女を笑い飛ばした。
「大体エヴァの中なら平気だろ。俺なんてマジンガーの頭にガラス一枚でいるんだぜ。それでも寒いなんて思ったことなんて一度もねえぜ」
「そりゃ馬鹿は風邪ひかないから」
「そうそう、何せ馬鹿は・・・・・・って何言わせやがる」
「けれどどのみち行かなくちゃいけないよ」
シンジはいつもの静かな態度で言った。
「リクレイマーも何とかしなくちゃいけないから」
「わかってるわよ」
アスカは嫌そうな顔のまま応える。
「それじゃあ行きましょ。仕方ないから」
「何か引っ掛かるけどまあいいさ」
勇は言った。
「まずは俺が偵察に出る。そして随時連絡するよ」
「いいの、一人で」
ヒメが心配そうに声をかけた。
「偵察だしな。何かあれば戻ってくるから」
「そう、だったらいいけれど」
「ヒメは心配し過ぎなんだよ。大丈夫だって」
「それなら」
「それじゃあな。行って来る」
「うん」
こうして勇は一人で偵察に出た。だがここで異変が起こった。
「勇が行方不明!?」
「ああ」
ブライトがヒメに答えた。
「今さっき無線が急に切れた。何かあったらしい」
「ジョナサンか?」
「いや、まだそう決めるのは早い」
ナンガがラッセに対して言った。
「それで無事なの?」
「それもまだわからない。どうなったのか」
「大変だよ、それ。すぐ探しに行こう」
「そうだな。すぐに捜索隊を出すとしよう」
「うん」
「それじゃあ俺達が行きます」
タダナオとオザワが出て来た。
「君達がか」
「はい、アラスカにも来たことがありますし」
「訓練でもよく飛びましたし。地理には詳しいです」
「そうか、では頼むぞ」
「はい」
「そしてヒメか」
「勿論私も行くよ」
ヒメは頷いた。
「私が行かないと。勇が寂しがるから」
「それでは頼む。すぐにな」
「了解」
「すぐに出ます」
三機のマシンが捜索に出た。そして吹雪のアラスカに入る。そして彼等はそこで新たな出会いと別れを見ることになるのであった。
第六十九話完
2006・1・23
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