SAO─戦士達の物語
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ALO編
七十二話 焦燥の衝動
ALOにログインしたリョウコウは、昨日ログアウトした宿舎の一室に出た。隣の部屋には、二部屋取る余裕もなく早く寝たいからと二人同じ部屋を取ったキリトとリーファがいるはずだ。とりあえず、装備とアイテム残量をざっと確認したのち、懐から煙草の箱を取り出し、口に咥えてトントンと先端を二回叩く。
口の中をさわやかなミントの香りが見たし、薄緑色の煙が細くたなびいて部屋の空気に溶ける。
「んじゃ、行きますか」
一度その煙を軽く吸い込んで吐き出した後、リョウコウは部屋から出て行った。
────
宿舎の下部に行くと、旅仲間二人は既にログインし、ロビーの椅子に座って待っていた。
階段を降りて行くと、此方に気付いたリーファがブンブンと手を振ってくる。
「遅いよー!リョウ!」
「悪い悪い。ちいと向こうで電車が遅れててな……」
言いながら駆け寄ると、キリトの胸からユイが顔を出し、周りに人が居ないのを良い事に元気な声で言った。
「約束の時間はちゃんと守らないと駄目です叔父さん!ママの事もそれで困らせたって聞いたです!」
「聞いたって……誰にだよユイ坊」
「ついさっきまでパパが言ってました!」
「ちょ、ユイ……!?」
まさかの素直すぎる娘の言葉に、キリトが焦ったように声を上げるがしかし、いかにも遅かった。
「言わんで良い事ってのがこの世にあるのは分かるよなぁ?キリトぉ……?」
「あ、あはははは……」
数秒後、キリトの悲鳴が激安の宿舎から響いたが、その様子は敢えて伏せさせていただく。
────
宿舎を出ると、ALO内はだんだんと朝日が高くなっていく時間帯だった。
現実世界ではまだ午後三時過ぎだが、定期メンテナンス直後でモンスターやアイテム等の湧出《ポップ》がリセットされたと言う事もあって、人通りは少なくない。
がっちりした体つきの土妖精《ノーム》や薄紫色の肌にエナメル質な装備を纏った闇妖精《インプ》。リョウの同族である音楽妖精《プーカ》は、竪琴を奏でている。そう言った様々な種族の妖精たちが自由に行き交うその通りの先には、円錐状に屹立する積層都市が広がっている。だんだんと上に向かって重なり合うように広がる都市のあちらこちらには、恐ろしく巨大な樹の根が顔を出す。言うまでもなく、世界樹の根っこだ。そしてそれをたどっていき、アルン市街地の頂点に目を向けた所に、それは有った。
根元部分は、あり得ないほど太く、巨大な金緑色の幹が、天空に向かって伸びている。所々緑色の草が生えている部分も見えるその幹は、飛行制限エリアを示す雲すらも容易く越え、更に上へ上へと伸びている。ようやく幹が枝となって広がるのは、その遥かに上。最早空の青に溶け、幹が見えなくなるほどに遠くの位置でかろうじてそうなっているのが見て取れた。
「あれが……世界樹……」
「っはぁ……大したもんだ」
「うん……凄いね」
全員が、一瞬思考を止めてその圧倒的な姿に見入ってしまった。初めに思考を回復させたキリトが、リーファに確認する。
「確か、あの木の上にも街が有って……それで……」
「そこには妖精王オベイロンと、光の妖精アルフが住んでいる。妖精王に初めに謁見出来た種族はアルフに転生して、永遠の空を手に入れる……って言われてるわ」
「成程……あの上に、ねぇ……」
「…………」
リョウは何かを考え込むように顎に煙を吐きながら黙りこみ、キリトは無言で気を見つめる。
「あの樹には、外側からは登れないのか?」
「幹の周囲は進入禁止エリアになってるから、木登りは無理らしいわ飛ぶにしても、とても上まで行けないうちに、翅に限界が来ちゃうんだって」
「前に聞いた多段式ロケット方も、GMから修正入っちまったとよ。今は雲の上に障壁が有るんだと」
「そうか……とりあえず、木の近くまで行ってみようぜ」
「おうよ」
「そうね」
そうして、三人はアルンの大通りを歩き出した。
────
しばらく行くと、前方に石段と白いゲートが見え始めた。だいぶ近づいたせいで全貌が見えず、世界樹はもはや巨大な壁だ。
そうしてそのままやたらと豪華そうなゲートをくぐろうとした……その時だった。
突然、ユイがキリトの胸ポケットから顔を出し、まっすぐに、上を見つめ出したのだ。それを見たキリトが、戸惑ったような声を上げる。
「お、おい……どうしたんだ?」
それにユイが答えるより早く、今度はリョウが口を開いた。
「……居るんだな?」
「え……」
呟いた小さな言葉は、誰のものだっただろうか?ユイ、キリト、おそらくは事情の呑み込めて居ないであろうリーファも、驚いたようにリョウを見る。
「ユイ坊……母ちゃんだな?この上か……?」
「ユイ!?」
「は、はい!このまっすぐ上空に……ママが居ます!」
「ッ……!!」
聞いた瞬間、キリトは凄まじい形相で上空を仰ぎ見る。顔を蒼白にし、しかし目は炎の如く燃え盛り、強く歯ぎしりをしたかと思った瞬間……
──……ズバァン!!──
一瞬で羽根を広げた彼は、空間そのものを爆発させるかのような凄まじい音と共にさながら漆黒の弾丸の如く、上空へと飛び上がった。……止める間も無かった。
「き、キリト君……!?」
「はぁ……」
驚くリーファの横で、リョウは額に手を当てながら深くため息をつく。分かってはいたが……障壁が有ると言っているのに……
リーファは一瞬リョウと上空を見比べ、迷ったようだったが、リョウが一言「行ってやれ」と言うとすぐに上空へと飛び上がる。直ぐに、リョウもそれなりの速度で上空へと上がってく。上空高くの雲を抜け、十秒もすると、前方に空に向かって必死に突進しようとするキリトと、それを引きとめるリーファの姿が見えた。おそらく、あそこが障壁の寸前なのだろう。会話も聞こえる。
「やめて、キリト君!無理だよ、そこから先には行けないんだよ!」
「行かなきゃ……行かなきゃいけないんだ!」
何かに取りつかれたキリトを、リーファは必死に腕を掴み、キリトを止める。先程よりかは幾らか近くに見えているが、それでもまだ放射状に広がった枝は遥か高くに見えるだけだ。
「やれやれ……ほら!ちょい待て待て!」
キリトと障壁の間に割り込むように止まって両手を突き出すと、キリトはようやく突進しようとする勢いを止めた。が、迫力も焦燥感も変わっていない。
「ちっとは落ち着け、な?」
「落ち着けるわけ……無いだろ!!」
「だったらお前にはんな鼻息荒くして闇雲に突っ込んで、状況が進展する当てがあんのか?」
「ぐ……!」
あくまでも正論を述べるリョウに、キリトの勢いが詰まる。
「どうせやるなら実になる事しようぜ。少なくとも、敗れるかも分からんもんに突っ込むよりは有意義だろ?」
「キリト君……」
「…………ごめん」
落ち込んだようにいきり立っていた肩を落とすと、キリトは俯いた。その頭を、ポンポンッと撫で、リョウは言う。
「気持ちはわかんねぇでもねぇよ。けど、今は冷静になれ。良いな?」
「あぁ……」
「よし。さて……ユイ坊!」
「あ、はい!」
リョウの声に反応し、心配そうにキリトの顔を覗き込んでいたユイが、胸ポケットから飛び出し、障壁のあるのだろう方向へ向かっていく。まずはシステム属性のあるナビゲーションピクシーであるユイに試してみる事にしたのだ。
しかし、突然ユイの前にうっすらと虹色に輝く光の障壁が現れ、その小さな体を拒んだ。
「むぅ……」
リョウは小さくうなった。これでも駄目か。ならば次はどうするか……と、急にユイが声を上げた。
「警告モードの音声なら、届くかも知れません……ママ!私です!ママー!」
必死の面持ちでユイは叫ぶ。それをしばらくの間続けていたが、やがて諦めたのかしゅんとなってキリトの胸ポケットの中へと戻った。
「まぁ、反応返すにもなんか落とすくれぇしか出来ねぇだろうからな……んじゃそれを期待して、落ちて来るまでにもうひと押ししてみますか……」
そう言って、今度はリョウがアクションを起こした。と言っても、冷裂を取りだしただけだが。
「ちっと下がってろよ御二人さん」
「あ、あぁ……」
「え……?」
二人を下がらせ、自分も少々距離を取って冷裂を腰だめに構える。そうして一気にしょうへきに接近すると……
「おっ……羅ァッ!!」
思いっきり、障壁に向かって冷裂をふるった。直ぐに見えない磁石のごとき斥力が働き、刃を押し戻そうとする……が……
「っづ……牙ァァァァッ!!」
それにすら逆らい、そのまま思い切り……刃を振り切った。
「えぇっ!?」
「うおっ!?」
凄まじい衝撃波が周囲に波動となって伝わり、周りを圧する。が……しかしそれでも、虹色の障壁はその表面を一閃大きく波立たせるにとどまった。
「ぬ……さすがに無理か……」
「いや……十分凄いんだけど……」
「あぁ……って、ん?」
驚く二人だったが、不意にキリトが、空を見つめて何かを見つめた。どうやら、反応がかえってきたようだ。
長い時間をかけ、キリトの手に落ちてきた銀色の光は……小さなカードだった。
「カード……?」
ぽつりと、リーファが呟く。装飾などは何にもないが……
「どう見てもこの世界にふさわしいデザインじゃねぇな……」
「うん。こんなアイテム私も見た事無い……」
クリックしても、アイテムならば必ず出るはずのポップアップウィンドウが表示されない。その時、ユイがカードの端っこに触れながら言った。
「これは……システム管理用のアクセスコードです!」
「!?……」
キリトとリーファが驚いたように息を詰める。リョウも、小さく口笛を吹いた。
「そりゃまた随分なもん落としてきやがったな彼奴……これ、GM権限使えるのか?」
「いえ、権限行使には対応するコンソールが必要みたいです私にもシステムメニューは呼び出せませんし……」
「そうか……けど、これではっきりした。此処に、居るんだ……!」
キリトが拳を握りしめ、自分に確認するように言う。リョウはそれを、腕を組みながら見つめやがて……リーファに向き直ったキリトが、口を開いた。
「リーファ、教えてくれ、世界樹の中に通じてるって言うゲートは、どこにあるんだ?」
「え、世界樹の根元にあるドームの中だけど……で、でも無理だよ。あそこはガーディアンに守られてて、今までどんな大部隊も突破できなかったんだよ!?」
「それでも、行かなきゃいけないんだ……」
リーファの必死の説得でも、キリトが止まる事はないであろう事は、リョウにも分かっていた。だからこそ、何も言わない。
「リーファ、今まで本当に、ありがとう。此処からは俺達だけで行くよ」
「キリト君……」
手を取って礼を良い、振り向いたキリトに、リーファは泣きそうな顔で見るがそれを振り切って、キリトはリーファから手を離し、頭を下げる。そうしてそのまま身をひるがえすと、下に向かって一直線に降下して行った。
「リョウも……行くの?」
「あぁ……まぁな。今まで誰も出来なかった事は、俺達が出来ねぇ根拠にはならねぇし、それに……俺も俺なりに、あそこにゃ用事があるからな……」
「私……」
俯き、気落ちした様子のリーファの肩を、リョウはトンッと一度叩いた。
「……なぁ、リーファ……頼みが有るんだが……」
────
「遅いぞ!兄貴!」
「悪い悪い。ってもう選択肢出してんのかよ……」
リョウの言葉に答える事も無く、キリトはその選択肢のYESを押した。
──さすればそなたが背の双翼の、天翔に足る事を示すがよい──
その声と共に、眼前の白い扉が轟音を立てて開く。それはさながら、アインクラッドのボス部屋の大扉のようで当時の緊張感がうっすらと蘇る。
内部に入ると、そこはドーム状の大広間だった。天井の頂点部分に荘厳なデザインの円形大扉が見える。
「ユイ、頭、ちゃんと引っ込めてろよ?」
「パパ……叔父さん、頑張って……」
「おうっ」
ユイの声に景気良くリョウが答え、上を見上げる。
「うっし……やるか……」
「あぁ……行けぇッ!!」
「ちょ!?」
大声と共に、行き成りキリトが上に向かって一気に飛び出した。初めの内は牽制から行くと思っていたリョウは、突然の動きに一瞬思考が停止する。
しかし天井を埋める白いステンドグラスから白い液体がこぼれおち、それがたちまち大剣を持った守護騎士に姿を変えるのを見て、思考回路を復帰させた。
自信も翅を広げ、飛び出す。既にキリトは、守護騎士の真っただ中だ。
「確かにやるかとは言ったけれども!?」
「オオオオオオオオオッ!!」
凄まじい吠え声を上げながら進むキリトの後ろから、リョウも守護騎士と交戦する。とりあえず思い切り冷裂を振り切る……と。
『弱っ!!?』
その一閃だけで、三匹の守護騎士が一気に爆散した。
グランドクエストの守護騎士だと言う割には、余り一匹一匹は強く無いようだった。しかし、その理由は……すぐに知れた。天頂を振り仰いで、驚愕した。
「オイオイ……こりゃ何の冗談だ?」
既にキリトはだいぶ扉に近づいているようだったが、その姿が確認できなかった。彼の周囲を……百匹近い数の守護騎士が取り囲んでいたからだ。そう。多すぎるのである。時折見える爆散するポリゴンだけが、彼の存在を示している。
「くそっ、突破出来ねぇって……肉壁かよ!?」
悪態をつきながら、リョウはキリトの援護をすべく、前方の守護騎士たちに切りかかる。一気に五体が吹き飛んだが、直ぐにその穴を埋めようと騎士たちが集まる。そうして終わりの見えない戦いを続けた結果……ついにキリトが、扉の寸前で爆散した。
『っち……こりゃ突破は単騎じゃ無理だ……とりあえず……』
「リーーーファァァァァ!!」
「ッ……!」
大声を上げた瞬間、リーファが内部に飛び込んできた。先程、読んだらならば援護に来るように頼んでいたのだ。
「キリトの回収頼む!道は作る!」
「う、うんっ!」
此方に向かって来る守護騎士たちから目を離さず、リーファにそう言うと……リョウは突然、アイテムウィンドウを出した。
「リョウ!?何するの!?」
「こうするんだよ!」
そうして、そのうち一つの装備品を急いで装備欄に移動させる。現れたのはリョウがこの世界で初めに購入した武器……斬馬刀であった。瞬間、大声が上がる。
「yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeha!!!!!!」
「っ!?」
ボンっ!という音と共に飛び出したリョウが右手の冷裂を振り下ろした瞬間、正面の守護騎士とその後ろにいた守護騎士が真っ二つになり、爆散した。そこから更に奴らの懐に飛び込み、左右の冷裂と斬馬刀を思い切り振りまわす。
「歩っ!破ァ!っと……勢ッ!!」
一度の回転で、三人五人は当たり前。時には七人ほどの守護騎士をまとめて消し飛ばし、リョウは一気に突き進む。とは言え、左右の武器の動きを完全に制御しなければならない為、はっきり言えばギリギリの戦い方だ。守護騎士を斬り倒し、光の矢を叩き落として、しかし落としきれなかった矢が左右の肩に刺さるのを感じつつ、ようやくキリトのリメントライトの前に辿りつき、リーファに回収させるとそくざに撤退開始、ようやく外に出た時には、すっかりリョウはくたくたになっていた。
────
「りょ、リョウ……大丈夫?」
「二度と……やりたくねぇ……」
扉の前で大の字に倒れこんだリョウに、聞いたリーファは、だよね……と一言言った後、ちょいちょい。と手を振るリョウに従ってキリトのリメントライトに蘇生アイテムだろう透明なしずくをかけた。
たちまち小さな炎は人の形を取り、そこに一人の少年が屹立する。
「キリト君……」
どこか哀愁の漂う表情でキリトの名前を呼んだりーふぁに、キリトは小さく笑うと、立ち上がって言った。
「ありがとう、リーファ……でも、あんな無茶はもうしないでくれ。俺は……大丈夫だから……」
「嘘つくんじゃねぇぞキリト」
「え……」
キリトの声を、リョウは虚空を見つめながら遮った。くるりとキリトの方を向き、真剣な表情で言う。
「あの湧出《ポップ》のペースはお前も見たろうが。ありゃ突破させる気が有るか怪しいぜ……なんか対策してねぇと」
「そんな……そんな暇は……」
動揺した様子のキリトに、リョウは続ける
「単純に突っ込んでも無茶だありゃあ……ちょいと休んで、どう攻めるかしっかり考えねぇとだな……」
「……んで……」
「あン?」
キリトの小さな言葉が、リョウには良く聞こえず、聞き返す。
再び帰って来た言葉は……怒りを含んだ怒鳴り声だった。
「なんで……そんなのんびり出来るんだよ……兄貴、あの向こうに……居るんだぞ……!?」
「んなことは分かってる。けどな、唯正面から……「それでも!!」む……」
リョウの言葉が止まる。彼は今、少なからず驚いていた。珍しくキリトが……自分に怒っていたのだ。
「それでも……早く……すぐにでも行かなきゃいけないんだ……呼んでるんだ……こんな所で、唯考えるだけで止まってなんかいたら、発狂しちまいそうなんだよ!!」
「だからだな、キリト……落ち着「落ち着けるかよ!!」……」
更に割り込むキリト。最早普段の不敵な冷静さは、どこにも見えない。
「兄貴はどうなんだよ!あそこにサチの手がかりが有るかもしれない!なら早く、一刻も早く行きたいって思わないのか!?アスナだけじゃない!サチだって……サチだってあそこに居るかもしれないんだ!助け求めるかもしれない!!そんな状況で、なんでそんな冷静で居られるんだ!?」
その瞬間、辺りの空間が、爆発した。
「居られるわけ……ねぇだろうがぁ!!!」
「っ……!?」
「……あ……」
今度はキリトが絶句する番だった。リョウも、自分が無意識のうちに怒鳴ったらしく驚いたように目を見開いている。しばらく静寂が続き……やがてキリトが口を開いた。
「……ごめん…………」
「あぁ、そのなんだ……すまん、気にすんな」
互いに、頭を掻いてやりずらそうにする……そんな中、その声が妙に通って聞こえた。
「アスナ……?」
「ん……?」
リーファだった。何故か、驚愕したように目を見開いている。
「アスナって……キリト君……?」
「あ、あぁ……アスナ。俺の探してる人の名前だよ」
「え……?だって……嘘……その人は……」
そうしてしばらく、意味のない単語だけを呟き続けたリーファは、唐突に……本当に唐突に、その言葉を口にした。
「お兄ちゃん……なの?」
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