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髑髏天使

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第四十八話 妖神その二十一


「敗れた者はそのまま消える」
「潔くか」
「潔くではない」
 それは否定するのだった。
「命が消えようとしているからだ」
「それでだ」
「それでだというのか」
「如何にも。ではだ」
 炎が既に身体の半分を覆ってきていた。
「私はこれで去ろう」
「ではだ」
 また言う髑髏天使だった。
「これでな」
「これでだ」
 こうして神は消えた。緑の炎が青と赤の炎の中に消えていくのだった。
 これで戦いは終わった。それでだった。
 髑髏天使も死神も元の姿に戻った。二人はそのうえで顔を見合わせた。
「この戦いも終わったな」
「今な」
 死神が牧村の言葉に応える。
「確かに終わった」
「その通りだ。ではだ」
「私はこれで帰るとしよう」
「何処かに行くつもりか」
「そうだな。さしあたってだが」
「何処に行く」
「港に行く」
 そこにだというのだ。
「南港という場所があるな」
「そこに行くのか」
「そしてそこで海を見る」
 そうするというのだった。
「いい場所らしいからな」
「いい場所とは思わないがな」
「その南港はか」
「大阪ではよく言う。南港に浮かべるぞとな」
「脅し文句だな」
「そうだ。その手の者が気に入らない者を始末する場所だ」
 俗にそう言われている。真偽は今一つ不明だが。
「そう言われている」
「では尚更いい」
「貴様にとってはだな」
「私は死神だ」
 このことが大きいのであった。彼自身のそのことがだ。
「だからだ。それでだ」
「まつろわぬ魂を送るのだな」
「それもまた死神の仕事だ。いや」
「むしろだな」
「そちらの方が主な仕事だ」
 完全に死神としての言葉だった。そこから語るのだった。
「だからだ。そうする」
「では今から行くな」
「そうするとしよう。だが」
「そうだな」
 ここで、だった。二人の言葉が変わったのだった。
「何か用か」
「俺達に」
 彼等は身体ごと後ろを振り向いた。そのうえでだった。そこにいる彼等に問うた。
 見ればそこにはだ。魔神達がいた。しかもである。
「全員で来たか」
「ここに」
「はい」
 彼等の真ん中には老人がいた。彼が応えてきたのだ。
「そうさせてもらいました」
「それではだ」
「何の用だ」
 二人はその老人に対してまた問うた。
「戦いか」
「妖魔達との戦いの前に」
「いえ」
 しかしだった。ここで老人は言うのであった。
「そうではありません」
「では何だ」
「何の用で来た」
「そのことですが」
 老人は語りはじめた。そしてそれは。魔神としての存在にも関わるような、二人にとっても驚くべき話なのだった。それが今語られるのだった。


第四十八話   完


                 2010・11・24 
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