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髑髏天使

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第四十二話 共闘その九


「人並以上にできる。しかし君は天才ではない」
「俺は天才と思ったことはない」
 牧村の今の言葉にだ。博士の目が光った。
「一度もな」
「だから努力したな」
「今もそうだというのだな」
「そうじゃ。だから努力してきた」
 また言う博士だった。
「人並以上にできるようになって他人に迷惑をかけない為にじゃ」
「それでか」
「左様、君は他人に迷惑をかけたくないのじゃ」
「それで一線も引いていたか」
「それが君のはじまりじゃ。だが」
「だが、か」
「君も成長した」
 牧村の目を見ての言葉だ。
「そこに至ったのじゃよ」
「成長してか」
「人と触れ合えるようになれるのも成長なのじゃよ」
「一線を取り払ってか」
「左様、そういうことじゃ」
 博士の目は今は細いものになっていた。
「それだけわだかまりを消せたということじゃからな」
「そうなるのか」
「心の鎧は案外役には立たんのじゃ」
「心のは、か」
「戦う鎧は別じゃ」
 髑髏天使である彼のことをわかっての言葉だった。
「それはともかくとしてじゃ」
「心の鎧は、か」
「役には立たん。むしろ邪魔じゃ」
 こうまで言うのであった。
「じゃから。それを脱ぐということはじゃ」
「成長か」
「左様、まさにそれじゃ」
 博士の言葉は続く。
「君はまた一つ大きくなったのじゃよ」
「二人でいられる」
「二人でいられるようになればさらに増える」
「それで終わらないか」
「二人が三人になり三人が四人になりじゃ」
「さらに増えるか」
「何処までも増えるぞ」
 牧村に話すとだった。ここでまた妖怪達が言ってきた。彼等は今の牧村と博士の話をしっかりと聞いていた。そのうえで言うのであった。
「だから僕達ともね」
「今までよりずっと仲良くなれるよ」
「友達としてね」
「もっともっとね」
「友か」
 牧村は彼等の言葉も聞いて呟いた。
「そうか。友だったな」
「まあ今までは人間とね」
「それだったから」
「それがあったから」
 店の中なので流石に自分達が妖怪であるとは言えなかった。店のおばちゃん達はしっかりと働いている。彼等の間を動き回っているのだ。
「ちょっと離れていたけれどね」
「けれどこれからは違うよ」
「友達だよ」
「親友だよ」
「既にわしは親友だったぞ」
 ここでまた言う博士だった。
「もう既にな」
「この連中とか」
「そうじゃ。そしてこれからはじゃ」
「これからは、か」
「君ともじゃ」
 再度牧村に話す。ここでカレーを食べ終えた。するとすぐにだった。
「お姉さん、よいかのう」
「はい」
 おばちゃんの一人がお姉さんと言われてすぐに応えてきた。表情も声も明るい。
「何でしょうか」
「名物カレーもう一杯じゃ」
「わかりました。インディアン一丁」
 おばちゃんは博士の言葉を受けて店の奥のキッチンに声をかけた。 
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