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髑髏天使

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第三十八話 老婆その十三


「まずいらしいわ」
「イギリスはか」
「お母さん実際に旅行に行ったことがあって」
「それで知っているのか」
「まずかったらしいわ」
「そうか」
「もう。お菓子位しかないって」
 こうまで言われる。
「朝食を三食食べてたって言ってるわ」
「朝食をか」
「イングリッシュ=ブレイクファストね。それだけ食べてたって」
「朝食だけはいけるのか」
「それ以外は食べない方がいいってね」
 実に酷い評価であった。
「こう言ってたから」
「わかった。ではイギリスに行った時はそうする」
「紅茶はいけるみたいだけれど」
 店の話にもなった。
「それはね」
「紅茶はか」
「あとお茶菓子」 
 そのお菓子である。
「それもいけるらしいわ」
「そうか、ではイギリスに行った時はな」
「それだけね」
「食べるとするか」
「とにかく。酷いらしいから」
 若奈の言葉は今度は苦いものになっていた。まさに一転であった。
「これがね」
「そこまでか」
「そう、酷いのよ」
 苦い言葉は続く。
「物凄くね」
「アメリカはいいのにか」
「よく考えたら。アメリカって」
 アメリカの話になると言葉の色が変わる。明らかにだ。
「あれじゃない。色々な人がいるじゃない」
「移民の国だからな」
「だからね。食べ物も色々あって」
「しかも調味料や香辛料も多くあるな」
「レシピの本とか設備もしっかりしているし。それなら」
 もう答えは出ていた。それならばだ。
「普通に美味しくなるわよ」
「しかも資本主義か」
「そういうこと。だからね」
「美味い料理になるか」
「そうなのよね。だからベースの料理もね」
 そのベースの話に戻ってまた話が為される。
「美味しくなるのよ」
「イギリスも資本主義だが」
 牧村はこのことも話した。
「それも発祥の地だが」
「それがわからないのよね」
 若奈もここで首を捻る始末だった。
「普通美味しくなるわよね」
「普通はか」
「けれどイギリスは違うのよ」
「まずいままか」
「どうしてかわからない位にね」
 そこまでだという。
「本当にまずいのよ」
「噂以上か」
「残念だけれどね。それでね」
「それで?」
「これから夫婦善哉行くじゃない」 
 話がそこに戻ってきていた。
「そこは美味しいのよね」
「そうだな。あの店はな」
「イギリスの食べ物とは大違いよ、本当に」
「そこまでか」
「何もかもが違うわ。それじゃあね」
「行くか」
「ええ、行きましょう」
 こう話してだった。そのうえでその夫婦善哉に二人で向かう。そしてその二つ並んで置かれたその善哉を二人で食べる。そうしてまた話をした。 
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