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髑髏天使

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第三十八話 老婆その十二


「東京や千葉より寒くないし」
「それもか」
「そう、だからいいのよ」
「横須賀で美味い食べ物は」
「一杯お店もあるし。横浜も厚木、まあ大和の辺りもね」
「わかった。しかし」
 ここまで話を聞いたうえでだ。若奈の顔を横目で見ながら言うのだった。
「神奈川に詳しいな。それにどうして関東に」
「ああ、それはね」
「それは?」
「親戚がいてね」
 こう話すのだった。
「それで行ったことがあるから」
「親戚か」
「丁度横須賀にいるのよ」
「そうか。それでか」
「そう。それで何度か行ったことがあるの」
 そうだと牧村に説明していた。
「そこにね。よかったら牧村君もね」
「俺もか」
「そう。どうかしら」
 こう話すのだった。
「二人でね。行かない?」
「それはまさか」
「その時が来たらね」
 今はあえてこう言うだけだった。
「その時にね」
「その時か」
「そういうこと。あとだけれど」
「あとは?」
「横浜の中華街はね」
 まだその話をする若奈だった。言葉も明るいものになっている。
「美味しい場所が一杯よ」
「中華料理が四種類全てだな」
「そう、全部あるから」
 そしてであった。その種類も話すのだった。
「四川に広東に。上海に北京ね」
「どれが一番いいかだな」
「どれもよ」
 四つ共というのだった。
「どれもいいから」
「四つ全てか」
「そうよ、どれもいいから」
 若奈の機嫌のいい言葉は続く。
「その時は楽しみにしていてね」
「そうさせてもらう」
「あと。横須賀は」
「横須賀もか」
「カレーもあるし」
 まずはカレーの話だった。
「海軍の街らしくてカレーを宣伝してるの」
「カレーか」
「そう、それね」
 そしてであった。その他も話すのだった。
「パスタのお店もあって。飲み屋は牧村君興味ないし私も飲めないから知らないけれど」
 牧村のことを最初に話してであった。
「他にはベースにもね」
「ベース?」
「アメリカ軍の基地のことよ」
 それだというのである。
「基地の英語読みでね。ベースよ」
「そういうことか」
「そう、ベースでもね」
「食べられるのか」
「休日の午前中にいけば凄いバイキングがあるわ」
「そんなものもあるのか」
「もう。凄いから」
 若奈の話す言葉はさらににこにことしたものになっていた。
「何でもあってしかも安くて」
「それだけいいのか」
「最高よ。アメリカ人が太るのもわかる位ね」
「アメリカの料理は味はよくないと聞いていたが」
「実はそうじゃないみたいね」
 意外と知られていないことである。その色が異様なまでにカラフルなケーキでもその味は意外なまでによかったりするのである。
「これがね」
「そうなのか」
「イギリスは実際にあれらしいけれど」
 しかしイギリスはそうなのだという。 
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