| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十七話 光明その六


「私はそんな。アイドルなんか」
「けれど本当だよ」
 冗談とは言わないのだった。
「あんただったらなれるよ」
「それもトップアイドルな」
「山口百恵超えるよな」
「ああ、超える超える」
「間違いなくな」
 今度は伝説的アイドルであった。アイドルといえば何といってもまずは山口百恵である。彼女からはじまったと言っても過言ではない。
「北乃きいもいいけれどな」
「あの娘も平均点高いけれどな」
「演技も上手だしな」
「あんた達よく知ってるね」
 叔母は彼等の話に思わず突っ込みを入れた。
「本当に」
「アイドルに興味がなくて何が男なんだよ」
「アイドルとバイクはやっぱりな」
「男のロマンだよ」
 三人共どう見ても三十を超えている。しかしそれでも言うのだった。
「例えかみさんがいてもアイドルは見るんだよ」
「だからこその男のロマンだよ」
「絶対にな」
「何か男ってややこしいね」
 しかしこう言う叔母もだった。
「まあタッキーにはうちの旦那も適わないでしょうけれどね」
「そういうあんただってそうじゃないか」
「タッキーってきたか」
「前はキンキキッズって言ってたのにな」
「キンキも今も好きよ」
 叔母は悪びれずに言ったのだった。
「マッチもニッキもね。サワ君も慎吾ちゃんも皆ね」
 それぞれ近藤真彦、錦織一清、大沢樹生、香取慎吾である。誰も歴代ジャニーズのトップアイドル達である。どうやら相当な年季があるらしい。
「今でも大好きだよ」
「おかみはマッチ派だったのか」
「成程な」
「マッチはいいよ」
 それを自分でも言うのだった。にこやかな顔でだ。
「DA PAMPも好きだけれどね」
「アイドル好きだよな」
「そうだな」
「ええ、好きよ」
 完全に居直りの言葉だった。
「女はずっと少女なのよ」
「だからアイドルは好き」
「そういうことか」
「まああんた達と同じね」
 笑っての言葉だった。
「そういうところはね」
「成程、そうなるのか」
「そういうことか」
「男も女も同じか」
 男達はここで納得して頷くのだった。
 そしてだ。そんな話をしながら喫茶店での時間を過ごすのだった。そしてその後でだ。
 サイドカーで屋敷に戻る。その時だ。
 若奈は一緒だった。その横の座席にいる。そこに座って話をしている。
「ねえ」
「何だ?」
「叔母さんのお店気に入ってくれたかしら」
 こう彼に問うのである。
「どうなの?それは」
「いい感じだ」
 これが牧村の返答だった。
「明るくてな」
「そうでしょ。叔母さん明るいしね。気さくだし」
「気さくだな」
「あの人柄もお店にお客さんを引き寄せてるのよ」
「人柄か」
「まあ牧村君は」
 彼に顔を向けての言葉だった。
「人柄はいいけれどわかりにくいわね」
「俺は人柄はいいか」
「いいと思うわ」
 そうだというのである。
「意地悪でもないし尊大でもないしね」
「それは普通ではないのか」
「普通じゃない人も一杯いるじゃない」
 こう返すのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧